2019年03月04日

平成における消費者の変容(1)-変わる家族の形と消費~コンパクト化する家族と消費、家族のモデル「標準世帯」の今

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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1――はじめに~大きく変わったのは「家族」「女性」「若者」「インターネット」

平成も残すところ2ヶ月足らずとなり、カウントダウンに入っている。この30年余りで消費者の暮らしや価値観は大きく変わり、消費行動の土台が変化している。そこで、本稿を皮切りに何回かに分けて「平成における消費者の変容」を捉えていきたい。平成時代の大きな変化には、「家族」「女性」「若者」「インターネット」の4つのキーワードがあると考える。核家族化や未婚化、少子化の進行で家族はコンパクト化している。また、若い世代ほど共働きがスタンダードになっている。働く父親と専業主婦の母親、子ども2人の「標準世帯」は今や5%未満の少数派だ。家族のサイズや形が変われば、自ずと消費市場で売れる商品や必要とされるサービスも変わる。

また、平成は働く女性が増え、女性の経済力が増した時代だ。女性の大学進学率は1996年に短大進学率を上回るようになり、男性と同じように進学し、男性と同じように働く女性が増えている。女性の消費は一層活発になり、未婚化の進行でおひとりさま市場が広がりを見せるとともに、結婚後や出産後も家族のための消費だけでなく自分の趣味やファッションを楽しむ女性が増えている。

若者も変わった。団塊の世代やバブル世代が若かりし頃は、若者は消費意欲が旺盛で流行を牽引する存在だったのかもしれない。しかし、今の若者にお金を使う印象はあまりないだろう。若い世代ほど貯蓄志向が強く、地に足のついた堅実な消費者となっている。

さらに、インターネットやスマートフォン、SNSが生活へ浸透したことで、消費者がお金を使う対象や買い物をする場所、情報の流れなどの消費構造が大きく変わっている。さらに、足元で急速に広がるシェアリング・エコノミーは、「モノからサービス(コト)へ」「モノの所有から利用へ」という変化を加速させている。

第一弾の本稿では、まず、4つの切り口のうち「家族」に注目し、暮らしや消費の変化を捉える。
 

2――コンパクト化する家族と消費

2――コンパクト化する家族と消費

1|コンパクト化する家族~今や「標準世帯」は5%未満の少数派、最多は単身世帯で35%
これまで国の統計や税金の試算などでは、「標準世帯」として、働く父親と専業主婦の母親、子ども2人の4人家族が家族のモデルとされてきた1。しかし、現在では「標準世帯」は決して標準ではなくなっている。
図表1 夫婦と子どもから成る世帯と単身世帯の割合 「国勢調査」によれば、平成のはじめは世帯の種類で最も多いのは、夫婦と子どもから成る世帯だが、現在では単身世帯が最も多く、34.5%にもなる(図表1)。また、夫婦のみの世帯が全体に占める割合も増えている。

なお、「標準世帯」は、2015年で全体の26.8%を占める夫婦と子どもから成る世帯のうち、有業人員が1人かつ子どもが2人の世帯となる。よって、共働き世帯が増え、夫婦の子ども数が減る中で、その割合はさらに低くなる。厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」より、核家族で18歳未満の子どもが2人いる世帯、かつ父のみ有業あるいは母のみ有業の世帯を推計すると、全体の3%程度となる2。ただし、「標準世帯」は「子供」という表現にとどまり、18歳未満の児童には限定していないため、2017年で4.6%という推計もある3
 
1 例えば、総務省「家計調査」の用語の説明には、標準世帯として「夫婦と子供2人の4人で構成される世帯のうち、有業者が世帯主1人だけの世帯に限定したもの」とある。
2 同調査によれば総世帯数は50425、うち18歳未満の児童のいる世帯数は11734(全体の23.3%)、うち核家族で18歳未満の児童が2人で父のみ有業あるいは母のみ有業の世帯は1484(全体の2.9%)。
3 是枝俊悟「総世帯の5%にも満たない『標準世帯』」、大和総研(2018/7/10)
2|コンパクト化する消費~箱入りカレールーより1人用レトルトカレー、カット野菜、3枚入り食パン...
家族のサイズがコンパクト化することで、売れる商品もコンパクト化している。

例えば、1人用のレトルトカレーが箱入りのカレールーの販売額を若干超えたというデータがある(図表2)。また、コーヒーについては、オフィスに向けたレンタルサービスの強化などメーカー側の販売戦略もあるのだろうが、一度に4人分などを淹れる従来型のコーヒーメーカーよりも、1杯ずつ淹れるポーション式のものの市場台数が伸びているというデータがある(図表3)。さらに、農林水産省「加工・業務野菜をめぐる状況(平成30年3月)」によれば、生鮮野菜の購入額が減る一方で、カット野菜は増えている(図表4・5)。

利便性を重視する共働き世帯が増えた影響もあるのだろうが、確かに最近、スーパーやコンビニを見渡すと、食パンは6枚入りだけでなく3枚入りのものが、鍋の素は一人用のキューブ型のものが並ぶなど、様々な商品でコンパクト化が進んでいる様子も見られる。
図表2 カレーのタイプ別販売金額/図表3 コーヒーメーカー市場台数
図表4 家計における生鮮野菜およびサラダの購入金額/図表5 カット野菜の千人あたり販売金額
3単身世帯の高齢化~3分の1が65歳以上に
世帯数の増加で消費市場における存在感を増す単身世帯だが、平成の30年余りの間に、その年齢分布は変化している。1990年では35歳未満の割合が単身世帯の約半数を占めているが、2015年では3割弱へと低下している(図表6)。一方で、65歳以上は1990年では17%だが、2015年では34%へと倍増し、2040年には45%となる。平成のはじめは、単身世帯は若者の一人暮らしという印象が強かったかもしれないが、高齢者の一人暮らしが増えている。
図表6 単身世帯の年齢分布
4増え行く高齢単身世帯がターゲット~コンビニは若者からシニアのものへ
高齢単身世帯が増える中で、一足早くターゲット転換をした業界もあるようだ。過去にも述べたが4、マーケットシェア4割5を占めて業界首位のセブン-イレブンの来店客は、日本の人口における高齢化を上回る速度で高齢化が進んでいる(図表7・8)。同社では、今後とも高齢単身世帯が増えることを見越して、少子化で人口が減る上、経済状況の悪化などにより一人暮らしが減る若者から、もともとコンビニと親和性の高い暮らし方をしている高齢単身世帯へ向けて、早期にターゲット変換をしたのだろう。近年、コンビニではモノを売るだけでなく、各種サービス6にも対応できるようになり、消費者にとって暮らしの拠点の1つとなりつつある。特に高齢単身者にとって、身近に暮らしの拠点があることは安心につながる。
図表7 セブン-イレブンの来店客の年齢分布/図表8 人口の年齢分布
 
4 久我尚子「コンビニは若者からシニアのものへ」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/9/13)
5 株式会社セブン&アイHLDGS.「統合レポート2018」
6 公共料金や税金の支払い、住民票発行など行政関連サービスの代行、銀行ATMサービス、宅配便やクリーニングの受け取りや預かり、無料Wi-Fiサービスなど
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

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