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2018年12月25日
ベーシック 米国生保業界の概要(2)米国生保の収入構造2017-米国生命保険協会のファクトブック掲載データから-
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はじめに
米国生保協会の『ファクトブック』を主な情報源として見ることができる「米国生保協会が消費者に伝えたいと描く自画像」を、さまざまな角度から見ていくシリーズの第2回。
今回はファクトブック第4章「INCOME」を使って、「米国生保会社の収入構造」を見る。
今回はファクトブック第4章「INCOME」を使って、「米国生保会社の収入構造」を見る。
1―― 米国生保会社の収入
2―― 保険料収入の状況
なお、米国生保協会はファクトブックにおいて、生命保険からの保険料(23%、1,418億ドル)を上回る28%、1,705億ドルの保険料を計上している医療保険については、生命保険の保険料や年金の保険料との比較を行っていないことが奇異に感じられるかもしれない。
これは公的医療保険制度が限定的にしかなく、民間医療保険がその代替的な役割を果たしている米国においては、全国レベルで医療保障を提供できる生保会社は少なく、医療保険市場が10社程度の医療保険を主たる業務とする医療保険会社による寡占状態にあることと無関係ではないと思われる。
一般的な生保会社にとって、公的医療保険を代替するような本格的な医療保険の提供は事業対象から外れている。一般的な米国の生保会社にとっては、生命保険と年金が事業構成の主軸であり、医療関係の保険は歯科診療保険や眼科診療保険等の、周辺的な医療保険費目に限られている。
米国の保険協会としても、米国生保協会ACLI(American Council of Life Insurers)の他に、医療保険を中心とする保険会社とヘルスケアプランの団体であるAHIP(America's Health Insurance Plans)があり、米国生保協会の側に遠慮というか、自分たちの管轄外であるという意識があるようだ。こうしたことを背景に、米国生保協会のファクトブックにおいては、生命保険と医療保険の狭間に陥りがちな介護保険や所得保障保険についての記載があまりなされていない。
これは公的医療保険制度が限定的にしかなく、民間医療保険がその代替的な役割を果たしている米国においては、全国レベルで医療保障を提供できる生保会社は少なく、医療保険市場が10社程度の医療保険を主たる業務とする医療保険会社による寡占状態にあることと無関係ではないと思われる。
一般的な生保会社にとって、公的医療保険を代替するような本格的な医療保険の提供は事業対象から外れている。一般的な米国の生保会社にとっては、生命保険と年金が事業構成の主軸であり、医療関係の保険は歯科診療保険や眼科診療保険等の、周辺的な医療保険費目に限られている。
米国の保険協会としても、米国生保協会ACLI(American Council of Life Insurers)の他に、医療保険を中心とする保険会社とヘルスケアプランの団体であるAHIP(America's Health Insurance Plans)があり、米国生保協会の側に遠慮というか、自分たちの管轄外であるという意識があるようだ。こうしたことを背景に、米国生保協会のファクトブックにおいては、生命保険と医療保険の狭間に陥りがちな介護保険や所得保障保険についての記載があまりなされていない。
2|生命保険からの保険料
2017年、米国における生命保険からの保険料合計は1,418億ドルであった。
内訳を見ると、個人生命保険の保険料が79%、1,121億ドル、団体生命保険からの保険料が21%、290億ドル、ローン借り入れにともなって加入する信用生命保険からの保険料は0.4%、5.97億ドルであった。個人生命保険料の67%(760億ドル)、団体生命保険料の82%(290億ドル)が、保険加入後2年目以降の更新保険料であった。契約加入時に一括で払い込む一時払い保険料の割合は個人生命保険で17.5%、団体生命保険で9.4%とそれほど高くはない。ただし更新保険料の中には、わが国で考えるようなきちんきとんと毎月払い込むというよりは、余裕があるときにどんと払い込むといった形のものがあり、それも一時払いの一種と言えなくもない。
2017年、米国における生命保険からの保険料合計は1,418億ドルであった。
内訳を見ると、個人生命保険の保険料が79%、1,121億ドル、団体生命保険からの保険料が21%、290億ドル、ローン借り入れにともなって加入する信用生命保険からの保険料は0.4%、5.97億ドルであった。個人生命保険料の67%(760億ドル)、団体生命保険料の82%(290億ドル)が、保険加入後2年目以降の更新保険料であった。契約加入時に一括で払い込む一時払い保険料の割合は個人生命保険で17.5%、団体生命保険で9.4%とそれほど高くはない。ただし更新保険料の中には、わが国で考えるようなきちんきとんと毎月払い込むというよりは、余裕があるときにどんと払い込むといった形のものがあり、それも一時払いの一種と言えなくもない。
なお米国の人たちは2017年中、全個人可処分所得(税引き後)の1.03%を個人生命保険に費やした。ちなみに、わが国生保業界の2017年度の個人生命保険からの保険料収入23.7兆円が総務省の平成29年度国民経済計算年次推計中の家計可処分所得302.8兆円に占める割合を類似のデータとして計算してみると7.8%となる。
3|年金からの保険料
2017年の米国生保業界の年金からの保険料収入は2,950億ドルであった。うち、個人年金の保険料収入が1,648億ドルで、年金保険料の56%を占めた。団体年金の保険料は年金保険料の44%、1,301億ドルであった。
払い方別の構成比を見ると、個人年金では契約1年目の初年度保険料が48.2%で最も大きく、次が一時払いの40.8%となっている。契約2年目以降の更新保険料は11.1%と少なく、生命保険における状況と様相を異にしている。初年度保険料が大きければ2年目以降の更新保険料も大きいとなりそうであるが、そうなっていないのは、個人年金でも、契約上は一時払いではないが、初回に大きく払い込んでおき、次年度以降はあるときに払い込もうと思えば払い込んでもいいという契約形態のものがあるからだと思われる。その意味では、米国の個人年金に加入する人は、一時払いで加入しているという気持ちの人がほとんどなのではないかと考えられる。
個人年金と異なり、団体年金では、更新保険料が67.9%と大きな比率を占めている。勤務先を通じて加入する形態であることから、保険料を継続的に支払う形態が主流となっているのであろう。
2017年の米国生保業界の年金からの保険料収入は2,950億ドルであった。うち、個人年金の保険料収入が1,648億ドルで、年金保険料の56%を占めた。団体年金の保険料は年金保険料の44%、1,301億ドルであった。
払い方別の構成比を見ると、個人年金では契約1年目の初年度保険料が48.2%で最も大きく、次が一時払いの40.8%となっている。契約2年目以降の更新保険料は11.1%と少なく、生命保険における状況と様相を異にしている。初年度保険料が大きければ2年目以降の更新保険料も大きいとなりそうであるが、そうなっていないのは、個人年金でも、契約上は一時払いではないが、初回に大きく払い込んでおき、次年度以降はあるときに払い込もうと思えば払い込んでもいいという契約形態のものがあるからだと思われる。その意味では、米国の個人年金に加入する人は、一時払いで加入しているという気持ちの人がほとんどなのではないかと考えられる。
個人年金と異なり、団体年金では、更新保険料が67.9%と大きな比率を占めている。勤務先を通じて加入する形態であることから、保険料を継続的に支払う形態が主流となっているのであろう。
なお2017年、米国の人々は、個人年金の保険料として可処分所得の1.32%を支出した。ここでも、わが国生保業界の2017年度個人年金保険料収入3.6兆円が総務省の平成29年度国民経済計算年次推計中の家計可処分所得302.8兆円に占める割合を類似のデータとして計算してみると1.2%となる。
(2018年12月25日「保険・年金フォーカス」)
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