2018年10月12日

中期経済見通し(2018~2028年度)

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5. 代替シナリオ

(楽観シナリオ)
楽観シナリオでは、米中貿易摩擦の緩和を受けてメインシナリオに比べ世界経済が順調に回復する。米中貿易協議の進展によって双方は追加関税を打ち切り、米国は鉄鋼・アルミニウム製品に課した追加関税も撤廃を表明する。時限措置となっている個人所得税減税の恒久化等を含む税制改革の成立により、米国経済は高成長を維持する。加えて、インフラ投資の拡大に伴う生産性向上から潜在成長率が上昇する。2020年大統領選挙ではトランプ大統領が再選を果たし、拡張的な財政政策が続くことで今後10年間の平均成長率は2.3%とメインシナリオ(1.9%)を上回る。

中国は「中国製造2025」や「インターネット+」に関連する投資の活発化、中間所得層の増加に伴うサービス消費の拡大など内需主導の経済成長へと転換していき、景気減速を回避する。今後10年間の経済成長率は7.0%前後を維持する。日本は潜在成長率を上回る経済成長が続き、米国の順調な利上げを受けて円安が進むことも追い風となるため、消費者物価は日本銀行の見通しを上回るペースで上昇する。2020年度に2%に到達し、その後も安定的に2%程度の伸びを維持する。なお、消費税率引き上げの前提はメインシナリオと同じとしている。
 
(悲観シナリオ)
悲観シナリオは、米中貿易摩擦の激化、世界的な保護主義政策の広がりなどから世界経済が低迷を続ける。米中双方の追加関税対象は貿易額全体に及び、米国は輸入車への高関税措置を発動する。これを受けて、世界的に保護主義政策が広がる。貿易摩擦が激化していくことで米国経済の成長率は低下し、2020年大統領選挙ではトランプ大統領は落選する。民主党大統領が関税策の一部を解除するものの、財政政策では増税や個人所得減税の見直しなど緊縮的な政策を実施するため、その後も低成長が続き、今後10年間の平均成長率は1.1%とメインシナリオ(1.9%)を下回る。

中国は米中貿易摩擦の激化や工場の海外流出の加速による輸出の鈍化、国際競争力低下による都市化ペースの減速などにより、経済成長率は今後3.1%と過去10年平均(7.9%)の半分以下にまで低下する。米国の自動車関税賦課や世界経済の低迷を受けて、ユーロ圏、日本は外需が落ち込み、今後10年間の平均成長率はメインシナリオの半分程度に低下する。米国が2019年には利下げに転換することで為替レートは2019年度に1ドル100円を割り込み、2020年度に90円台まで円高ドル安が進む。日本の消費者物価上昇率は2019年度にマイナスに転じるなど低インフレが続き、今後10年間の平均で0.5%にとどまる。2019年度の消費税率引き上げは実施されるが、景気低迷、デフレ基調が継続することからその後は消費税率が据え置かれることを想定した。
シナリオ別基礎的財政収支(対名目GDP比)の比較 (シナリオ別の財政収支見通し)
メインシナリオの財政収支見通しでは、予測期間末の2028年度までに基礎的財政収支の黒字化は達成されないとしている。楽観シナリオでは、名目GDP成長率が今後10年間の平均で2.7%とメインシナリオよりも0.7%高いため、消費税率が12%に引き上げられる2025年度には基礎的財政収支の黒字化が実現する。ただし、利払い費(ネット)を含む財政収支は予測期間末でも赤字で、メインシナリオに比べて金利の上昇スピードが速いため、基礎的財政収支と財政収支の差はメインシナリオよりも大きくなる。国・地方の債務残高のGDP比を低下させるためには、基礎的財政収支の黒字幅をさらに拡大させることが必要となる。

悲観シナリオでは名目成長率の低迷に伴う税収の伸び悩みが続くことに加え、消費税率が10%で据え置かれることから基礎的財政収支の赤字は拡大傾向が続く。この場合には財政破綻のリスクが高くなるだろう。

(シナリオ別の金融市場見通し)
楽観シナリオでは、米国をはじめとする各国景気が順調に回復するため、メインシナリオと比べて、米国の利上げペースは加速し、利上げ停止の時期も遅れる。ユーロ圏の政策金利引き上げ開始も2019年に前倒しとなる。日本も物価上昇率が順調に高まり、2020年度には物価上昇率が2%に達するため、量的緩和の終了、マイナス金利政策の終了、無担保コールレート誘導目標の復活は同年度に前倒しされ、長期金利誘導目標もその時点で廃止となる。その後、2021年度からは段階的な利上げが実施されることになる。

日本の長期金利は、日銀の誘導目標下にある2019年度までは低位で推移するが、2020年度以降は出口戦略の進展や利上げの段階的な実施、投資家のリスク選好、海外金利の大幅な上昇を受けて、メインシナリオよりも早期かつ大幅に上昇していくことになる。

ドル円レートについては、米国経済の回復加速と急ピッチの利上げに伴う日米金利差拡大が大幅なドル高に繋がり、2020年度には1ドル122円まで円安ドル高が進む。その後は米国の利上げ打ち止めと日銀の利上げ継続を受けて円高ドル安基調に転じるが、期間を通じたリスク選好地合いや日本の期待インフレ率が高水準に保たれることなどから、予測期間終盤にかけてメインシナリオよりも円安ドル高水準での推移となる。

ユーロドルについては、ユーロの金融政策正常化が急ピッチで進むうえ、ユーロの信認が高まることから、メインシナリオよりも若干ユーロ高となり、予測期間末には1ユーロ1.35ドルまで水準を切り上げる。既述の通り、ドル円ではメインシナリオよりも円安ドル高となるため、ユーロ円でも大幅な円安ユーロ高となる。
悲観シナリオでは、予測期間序盤に世界的に景気が失速するため、利下げ余地のある米国の政策金利は大きく引き下げられる。ユーロ圏も出口戦略の開始を取りやめ、政策金利は長期にわたって現状の0%に据え置かれる。日本では物価の低迷が続くため、予測期間を通じて現行の金融緩和が継続される(正常化の動きは生じない)。

日本の長期金利は、日銀が円高進行と中立金利低下への対応として、予測期間序盤に長期金利誘導目標をやや引き下げることで低下し、中盤にかけて過去最低レベルとなる▲0.3%で推移する。予測期間終盤には、長期金利を大幅なマイナス圏に据え置くことによる副作用への配慮から、金利水準がやや引き上げられるが、小幅なマイナス圏での推移となる。

ドル円レートについては、米景気の失速によって大幅な利下げが実施されること、世界的に市場がリスク回避的になることから、予測期間序盤に急速な円高ドル安が進行、2020年度にかけて1ドル90円まで円高が進む。以降は米金利がやや持ち直すことでドルが底入れするが、予測期間末にかけて1ドル90円をやや上回る程度の円高水準が続く。

ユーロドルレートに関しては、景気失速に伴う出口戦略の開始取りやめや政治リスクの上昇からユーロ安圧力が強まり、予測期間序盤に1ユーロ1.06ドルまで低下する。その後、独長期金利の底入れに伴ってユーロがやや持ち直すが、1.10ドル弱での低迷が続く。既述の通り、ドル円ではメインシナリオよりも円高ドル安が進むため、ユーロ円では序盤に1ユーロ95円、その後も100円程度の大幅な円高ユーロ安水準に留まり、主要先進国通貨では円が独歩高の構図になる。
シナリオ別コールレート誘導目標の見通し/シナリオ別日本長期金利の見通し/シナリオ別ドル円レートの見通し/シナリオ別ユーロドルレートの見通し
中期経済見通し(メインシナリオ)メインシナリオと楽観・悲観シナリオの比較

 
 

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(2018年10月12日「Weekly エコノミスト・レター」)

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