- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 労働市場 >
- 労働力人口の減少と長時間労働の解消による労働投入量の減少に対応するためには-コブ=ダグラス型生産関数から考える-
労働力人口の減少と長時間労働の解消による労働投入量の減少に対応するためには-コブ=ダグラス型生産関数から考える-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――はじめに
2――労働力人口の減少と労働時間の短縮が生産性や付加価値に与える影響
コブ=ダグラス型生産関数(Cobb-Douglas production)とは、生産要素の投入量と産出量の関係を示す一次同次2関数であり、式2)のように書くことができる。ここでは、Yは生産量、Aは技術進歩や業務への集中度などを表す係数、Kは資本量、Lは労働量を意味する。また、αは分配率であり、αが大きいほど資本量(K)が生産量(Y)にもたらす影響が大きく、小さいほどL(労働量)がY(生産量)にもたらす影響が大きくなる。
例:生産量=(ITなどの技術水準)×(機械などの資本量) α ×(一人当たり労働時間×労働力人口)1- α
上記の計算式によると、生産量を増やすためには、他の項目が同じである条件の下で、(1)IT技術の革新、(2)資本の拡大、(3)労働時間の延長や労働者の増加の中で、少なくとも一つの項目を達成する必要があるだろう。つまり、現在政府が推進している働き方改革により、残業時間などの労働時間が減った場合、現在の生産量を維持するためには、資本量を増やすか、IT技術をより発展させなければならない。
1 http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh04-01/sh04-01-fuchu.htmlから引用。
2 一次同次関数とは、すべての独立変数が同じ割合で増加すると、従属変数も同じ割合で増加する関数を意味する。例えば、コブ=ダグラス型生産関数で、投入する資本と労働を2倍増やすと生産量も2倍増加することになる。
3――結びに代えて
また、6月29日に働き方改革関連法が成立することにより、今後時間外労働の上限は「月45時間かつ年360時間」を原則とし、大幅な業務量の増加など特別な事情がある場合にも、年720時間までに制限(繁忙月の上限も100時間未満に制限)されることになった3。
労働投入量の増加による生産性の向上や付加価値の拡大を期待することは難しくなったのが現状である。従って、今後は働き方改革による労働時間の効率的活用と資本量の拡大、そして技術力の向上による生産性向上や付加価値の拡大を図る必要があるだろう。このような点に着目して今後の働き方改革が進められることを望むところである。
3 制度の適用は、大企業の場合は2019年4月から、中小企業の場合は2020年4月からである。新商品などの研究開発職は適用除外であり、自動車の運転業務や建設業従事者、医師には2024年4月から適用される。
(2018年07月12日「基礎研レター」)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/15 | 韓国は少子化とどう闘うのか-自治体と企業の挑戦- | 金 明中 | 研究員の眼 |
2025/03/31 | 日本における在職老齢年金に関する考察-在職老齢年金制度の制度変化と今後のあり方- | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/28 | 韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | グリーン車から考える日本の格差-より多くの人が快適さを享受できる社会へ- | 金 明中 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【労働力人口の減少と長時間労働の解消による労働投入量の減少に対応するためには-コブ=ダグラス型生産関数から考える-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
労働力人口の減少と長時間労働の解消による労働投入量の減少に対応するためには-コブ=ダグラス型生産関数から考える-のレポート Topへ