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テクノロジーの進化と超過収益獲得機会-関係先企業の株価収益率に基づく投資戦略に着目して

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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次に、5分位ポートフォリオの月次収益率を確認する。2003年4月~2008年3月は、G3の収益率が、G2の収益率を上回るが、総じて2013年4月~2018年3月同様、前月の関係企業の株価収益率が高い企業ほど株価収益率が高い傾向がある(図表4)。しかし、超過収益率の水準は、2003年4月~2008年3月は0.30%(年率3.6%)で、2013年4月~2018年3月の0.37%(年率4.5%)と大きな差はない。しかし、日次と同様に基準月別超過収益率を求め、その6か月累計を比較すると、2003年4月~2008年3月は1.34%(年率2.7%)で、2013年4月~2018年3月の0.63%(年率1.3%)の2倍以上であった。やはり、超過収益率の圧縮が進んだ様子が確認できる(図表5)。
5 月次の分析は、日次の分析と比較しデータ数が少ない。これを理由に、有意やそれなりに有意の判定に異なる基準を用いている。
3――効率的市場のパラドックスとテクノロジーの進化(まとめ)
では、テクノロジーの進化が市場の効率化に寄与するならば、超過収益獲得のために、人工知能などの最先端のテクノロジーを活用しても、市場の効率化が進むだけで超過収益獲得は期待できないのだろうか。販売先企業や関係企業の株価収益率がその後の超過収益獲得に役立つ根本的要因は、投資家の情報収集・集約能力の限界である。情報処理のスピードは、間違いなく人間よりもコンピュータの方が優れているし、コンピュータの更なる高性能化も期待できる。以前は、情報処理作業自体は単純だが作業量が膨大で、人間には処理できない、もしくは大多数の投資家が処理すること自体を諦めていたからこそ存在した超過収益獲得機会もあっただろう。このような超過収益獲得機会に限れば、早晩マンパワーだけでは太刀打ちできなくなるのではないだろうか。誰よりも高性能なコンピュータと迅速な売買体制を整えた一部の投資家が、情報処理能力の限界に起因する超過収益を獲得することになるからだ。超過収益獲得は、市場(他の投資家)に打ち勝つことと同義であるから、皆が恩恵を受けることはありえない。
しかし、超過収益獲得機会が完全に奪われるわけではないだろう。情報処理のスピードという点では、人間はコンピュータに劣るが、様々な分野に知見を活用することができるなど人間の方が優れている点もまだ多い。それに、劇的にテクノロジーが進化したとしても、市場が完全に効率的になるわけではない。というのも、市場の効率性を阻害する要因は、投資家の情報処理能力の限界だけではない。売買コストや税金の存在、流動性の問題もあるし、活用する情報の入手にも費用がかかる。これらに加え、投資家の非合理な行動も市場の効率性を阻害するからだ。とはいえ、超過収益獲得が市場(他の投資家)に打ち勝つことであり、基本的にはゼロサムゲームである以上、最先端のテクノロジーを駆使しても、勝利が確約されることはありえないし、参加者全員が恩恵を受けることもありえない。皆に恩恵をもたらす最先端のテクノロジーの活用方法は、特定の人間が利益を得ても、必ずしも他の人間の損失にはならない、つまり社会全体の利益の総量を増やすことを目的とした活用方法に限定されるのだから。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年06月29日「基礎研レポート」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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