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- 増え行く単身世帯と消費市場への影響(1)-家計消費は2020年頃をピークに減少、2040年には現在の1割減、うち単身世帯3割弱、高齢世帯が半数へ
増え行く単身世帯と消費市場への影響(1)-家計消費は2020年頃をピークに減少、2040年には現在の1割減、うち単身世帯3割弱、高齢世帯が半数へ

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに
これから何回かに渡り、「増え行く単身世帯と消費市場への影響」を考察したい。第一弾の本稿では、単身世帯数の推移をはじめ日本の世帯構造の変化を丁寧に捉えるとともに、世帯構造の変化を踏まえて家計消費の内訳や支出額の推計を行う。なお、次稿から単身世帯の具体的な消費内容を捉えていく。
2――世帯数および世帯構造の変化

世帯数において存在感を増している単身世帯だが、単身世帯の内訳は変化している。
性年齢区分別に単身世帯の内訳を見ると、1980年では35歳未満の若年男性世帯(41.1%)が圧倒的に多く、次いで若年女性世帯(17.8%)であり、若年男女が単身世帯の約6割を占めていた(図表3)。しかし、若年世帯が減り、60歳以上の高齢世帯が増え、男性では35~59歳の壮年世帯も増えることで、2015年で最も多いのは高齢女性世帯(26.1%)、次いで壮年男性世帯(20.5%)、若年男性世帯(16.1%)の順となっている。今後は壮年男性世帯の増加に歯止めがかかる一方、高齢世帯はさらに増えるために、2040年では単身世帯の半数以上が高齢世帯となる。
3――世帯構造の変化が家計消費へ与える影響
世帯数において存在感を増す単身世帯だが、家計消費ではどうか。
それぞれの世帯の家計消費に占める割合は、それぞれの世帯数に対して世帯当たりの月平均消費支出額を乗じて得た合計額に占める各世帯の消費支出額の割合として推計した(図表4)。その結果、家計消費額に占める割合においても、単身世帯の存在感が増す様子が見える。2000年では、二人以上世帯が占める割合は合計で81.7%、単身世帯は18.3%だが、2015年では二人以上世帯77.9%、単身世帯22.1%、2040年では二人以上世帯73.2%、単身世帯26.8%となり、家計消費全体の3割弱となる。また、二人以上世帯でも単身世帯でも、60歳以上の高齢世帯の占める割合が増えており、二人以上世帯と単身世帯を合わせた高齢世帯全体の割合は、2000年では28.9%、2015年では41.8%、2040年では49.4%となる。なお、高齢単身世帯は2000年では4.4%、2015年では8.3%、2040年では13.2%である。
(1)については、二人以上世帯の1世帯当たり人員数は平均3.02人であり、消費支出額は月平均287,373円だが、単身世帯では146,979円である(2015年)。
(2)については、図表5・6より、二人以上世帯では1世帯当たりの人員数の増加に伴い140~50歳代で、単身世帯では35~59歳で消費支出額が膨らむ傾向があるが、35~59歳の壮年世帯が占める割合は二人以上世帯では39.5%、単身世帯では30.0%である(2015年)。なお、二人以上世帯でも単身世帯でも2000年以降、消費支出額は減少傾向にある。背景には、2000年以降の長らく続いた景気低迷で労働者の賃金が減少し、世帯収入が減少していることがあり、既出レポート2等でも解説している。
1 2015年の二人以上世帯の1世帯あたり人員数は、世帯主の年齢が29歳以下で3.24人、30歳代で3.70人、40歳代で3.72人、50歳代で3.24人、60歳代で2.69人、70歳以上で2.44人(総務省「家計調査」)。
2 久我尚子「共働き・子育て世帯の消費実態(1)~(3)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート等(2017/3/15~2018/3/12)。
(2018年05月09日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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