2018年08月07日

変容する消費構造-モノからサービス、デパートからネット、BtoCからCtoCへ~消費者の今を知る

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 個人消費が盛り上がりに欠ける理由として、既出レポートにて、経済不安をはじめとした6つの理由を述べたが、自動車や百貨店業界など、かつて隆盛を極めた業界が低迷していることも消費が伸びない印象を強めているのではないだろうか。現代社会では、消費者がお金を使う対象や買い物をする場所は変わり、消費構造は変容している。
     
  • 消費支出の内訳を見ると「被服及び履物」が大きく減る一方、「保健医療」や「通信」が大きく伸びている。現代社会では、お金を使わずにファッションを楽しめる環境が整う一方、医療の高度化で治療の選択肢は増え、予防医療の意識も高まっている。高度情報通信社会ではスマホなどの通信手段は欠かせない。消費支出の構造は「被服及び履物」などのモノから、「保健医療」や「通信」などのサービスへシフトしている。
     
  • 消費者が買い物をする場所もシフトしている。百貨店の売上高は減少し、1990年代後半からスーパーが、2000年以降はコンビニが増え、近年ではEコマースが著しく伸びている。Eコマースが進む諸外国の状況やEコマースは国境を超えた取引がしやすいことを考え見れば、さらなる拡大が見込まれる。
     
  • さらに、BtoB市場からCtoC市場へのシフトも指摘できる。シェアリングサービスの登場で従来、事業者が提供していたモノやサービスが、消費者間で直接やりとりしやすい環境となった。シェアリングサービスはEコマースと重なる部分が大きいため、今後は国内市場だけでなく国外市場もという価値観のシフトも生じるだろう。

■目次

1――はじめに~なぜ消費が伸びないのか?変容する消費構造
2――消費支出の構造変化
  ~「被服及び履物」などのモノから「保健医療」や「通信」などのサービスへ
3――買い物をする場所の変化~デパートからスーパー、コンビニ、ネットへ
4――おわりに~BtoC市場からCtoC市場への構造変化も、
  シェア経済では国境を超えた取引の拡大も
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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レポート紹介

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