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雇用の不安定化が続く日韓-非正規職の問題をどう解決すればいいだろうか-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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では、非正規職保護法の施行により状況はどのように変わっただろうか。まず、雇用者に占める非正規労働者の割合の変化からみて見よう。2004年8月に37.0%であった非正規労働者の割合は、非正規職保護法の施行直後である2007年8月には35.8%まで減少した。しかしながら、2004年8月以降非正規労働者の割合は減少傾向にあったので、非正規職保護法の施行により非正規労働者の割合が減少したとは断言できない。非正規労働者の割合は2007年8月以降も減少し続け2015年3月には31.9%で、本格的に調査を始めた2004年以降最も低い水準となった。しかしながら、その後は再び増加し、2017年8月には32.9%で、2012年8月の33.2%以降5年ぶりに高い水準になった(図表8)。
また、同期間における年齢階層別の非正規労働者の割合の変化を見ると、30~39歳が9.1ポイント減少し、減少幅が最も大きく、その次は50~59歳(8.2ポイント減少)、40~49歳(7.9ポイント減少)、60歳以上(1.7ポイント減少)の順であった。一方、15~19歳と20~29歳の場合は同期間にそれぞれ2.3%と1.9%、非正規労働者の割合が増加した。最近韓国における若者の就職難が影響を与えた可能性が高い(図表9)。
一方、年齢階層別の分析の結果からは、30~39歳、40~49歳、15~19歳の方で、制度施行前後の非正規労働者の割合に差があり、統計的に有意であった(50~59歳と20~29歳はLevene(ルビーン)検定の結果、等分散性がなかったので、等分散を仮定しない結果を示している)。
- 事業の完了あるいは特定業務の完成に必要な期間を定めた場合。
- 休職・派遣などにより欠員が発生し、当該年に労働者が復帰するまで代わってその業務を担当する必要がある場合。
- 労働者が学業、職業訓練などを履修しており、その履修に必要な期間を定めた場合。
- 「高齢者雇用促進法」第2条1号による高齢者と労働契約を締結した場合。
- 専門的知識・技術の活用が必要な場合と政府の福祉政策・失業対策などによる仕事を提供する場合で大統領令により定めた場合。
- その他に合理的な理由がある場合で大統領令により定めた場合。
6 期間制労働者とは、期間の定めがある労働契約を締結した労働者として定義される。
7 韓国では、非正規雇用労働者を大きく「限時的労働者」、「時間制労働者」、「非典型労働者」の3つに分類している。「限時的労働者」とは、雇用期間が限定されている非正規職で、その中でも労働契約期間を定めている「期間制労働者」と労働契約期間を定めていないものの、契約を繰り返して継続的に働ける(一定の契約期間があってそれの更新を繰り返す)あるいは非自発的な理由により継続勤務が期待できない「非期間制労働者」に区分している。また、「時間制労働者」とは、労働時間を基準に分類した非正規職で、労働時間が短い労働者がこの基準が適用される(日本のパート・アルバイト)。最後に「非典型労働者」とは労働の供給方式を基準に分類した非正規職で、派遣労働者、用役労働者、特殊職労働者、日雇労働者、家庭内労働者に分けられる」金明中(2015)「日韓比較(6):非正規雇用-その2 非正規雇用労働者の内訳―短時間労働者の待遇のあり方や子育てをしている女性の働き方の改善を進めるべき!―」ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2015年8月11日から引用。
(2018年03月29日「基礎研レポート」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
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