コラム
2018年02月07日

引き続き好調だが、注意が必要な国内中小型株のアクティブ・ファンド~2018年1月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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内外株式に大規模な資金流入

2018年1月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入を見ると、内外株式への資金流入が顕著であった【図表1】。外国株式については7,000億円に迫り、国内株式への資金流入は3,000億円を超えた。
【図表1】 2018年1月の国内公募追加型投信の推計資金流出入
外国株式については、ロボット系のテーマ株ファンドに加えて新設ファンドへの資金流入が目立った【図表2】。1月設定されたEV(電気自動車)や自動運転といったテクノロジー系のテーマ株の2ファンド、「モビリティ・イノベーション・ファンド」「グローバルEV関連株ファンド」がそれぞれ1,800億円弱、900億円もの資金を集めた。さらに、米国株式で運用する「キャピタル・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ ICA」も300億円、資金を集めた。この新設3ファンドだけで3,000億円に達しており、外国株式の資金流入は大きかったが、その約半分は新設ファンドによるものだった。
【図表2】 2018年1月の推計純流入ランキング
国内株式については、3,000億円のうち1,300億円は中小型株アクティブ・ファンドへの資金流入であった。足元の良好なパフォーマンスが投資家の呼び水になっている可能性もあり、中小型株のアクティブ・ファンド人気が続いていた。特に「SBI小型成長株ファンド ジェイクール」に200億円以上の資金流入があったが、資金が急激に集まり過ぎたため、1月下旬に新規の募集を停止している。
 
その一方で、内外REITは資金流出が続いていた。外国REITは12月(2,000億円弱の資金流出)と比べると小さかったものの、それでも1,000億円を超える資金流出があった。主要な投資先である米国で金利上昇が続き、外国REITにとって厳しい運用環境が続くかもしれない。そのため、毎月分配型の外国REITの分配金引き下げ懸念が当面は払拭されず、資金流出もまだまだ続くと思われる。

「つみたてNISA」対象商品では外国株式インデックス・ファンドが人気

2018年から始まった「つみたてNISA」対象商品に限ってファンドの資金流入を見ると、レオス・キャピタルワークスが運用している2ファンド以外は、50億円以下の資金流入であった【図表3】。「つみたてNISA」は2017年末時点で約25万口座と少なく、「つみたてNISA」経由での資金流入は多く見積もっても80億円(≒25万口座×40万円÷12カ月)程度である。対象商品の資金流入も大部分は「つみたてNISA」外からと推察される。ゆえに、「つみたてNISA」の影響は軽微であったと思われる。
 
ただ、「つみたてNISA」対象商品内での人気ファンドの傾向は特徴的であった。1月に資金流入が大きかった10ファンドのうち、4ファンドが外国株式のインデックス・ファンドであった【図表3:赤太字】。4つのファンドは、どれも対象商品の条件にあるように購入手数料がかからず、しかも信託報酬が年率で対象商品の条件(0.75%以下)を大きく下回る0.25%以下のファンドである。低コストで外国株式に投資できることが、「つみたてNISA」と関係なく投資家に受けているのだろう。
【図表3】 2018年1月の推計純流入ランキング(つみたてNISA対象商品限定)

国内中小型株アクティブ・ファンドが引き続き好調だが、大規模な資金流入の影響も

1月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、MLPファンドが好調であった【図表4】。1月は原油価格の上昇に伴い、米国でシェールガスの増産期待が高まったことなどが、米国のシェールガスなどの川中事業に投資しているMLPファンドにとって追い風になった。また、為替が1月は円高ドル安が進行したため、為替ヘッジありのMLPファンドのパフォーマンスが特に高かった。
【図表4】 2018年1月の高パフォーマンス・ランキング
【図表5】 11-1月の国内中小型株3ファンドの収益率(上)と純資金出入(下)/【図表6】2017年12月末時点で3ファンドで保有していた主な銘柄
MLPファンドに加えて、国内中小型株のアクティブ・ファンドも引き続き好調なファンドが多かった【図表4:赤字】。上位10ファンドのうち5ファンドが国内中小型株のアクティブ・ファンドであり、1月の収益率はどれも10%を上回った。特に5ファンドのうち3ファンド、「小型株ファンド」「日興グローイング・ベンチャーファンド」「SBI小型成長株ファンド ジェイクール」は昨年11月から好調を維持しており、3ファンドとも3カ月累積で収益率は40%を上回った【図表5:上】。
 
この3ファンドには12月100億円、1月300億円以上の大規模な資金流入があった【図表5:下】。そのため12月と1月の高パフォーマンスは、この資金流入の影響もあったと考えている。実際に3ファンドが保有している銘柄の中には、12月と1月に1カ月で20%以上上昇している銘柄が複数あった【図表6:赤マーカー部分】。そのような銘柄は時価総額が100億円以下で流動性が低い銘柄であったため、資金流入に伴う買い増しで需給が逼迫し、株価が大きく上昇したとも考えられる。
 
3ファンドだけでなく、国内中小型株のアクティブ・ファンド全体で見ても12月、1月と1,000億円以上の資金流入が続いている。大規模な資金流入自体が中小型株市場全体の株価を押し上げている可能性がある。資金流入がいつまで続くか分からないが、ひとたび資金流出に転じると逆に、その資金流出自体がパフォーマンスの悪化要因になりえるため、注意が必要である。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2018年02月07日「研究員の眼」)

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