コラム
2018年01月10日

国内中小型株のアクティブ・ファンドが好調~2017年12月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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内外株式に大規模な資金流入

2017年12月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入を見ると、内外REIT以外は概ね資金流入傾向であった【図表1】。その中でも、特に内外株式へ大規模な資金流入していた。外国株式への資金流入は4,000億円を超え、国内株式への流入も2,000億円に迫った。その一方で、外国REITは純資産が大きい毎月分配型ファンドの解約が膨らんだため、外国REIT全体で2,000億円近い資金流出となった。
【図表1】 2017年12月の国内公募追加型投信の推計資金流出入
外国株式の大規模資金流入は、新設ファンドの影響が大きかったようだ。主に新興国株式に投資している12月11日設定の「新興国ハイクオリティ成長株式ファンド」が1,500億円近くの資金を集めていた【図表2】。新設ファンドだけでなく、AIやロボットといったテクノロジー系のテーマ型の外国株式株ファンドへの資金流入も引き続き目立った。
【図表2】 2017年12月の推計純流入ランキング
【図表3】 2017年の純流入ランキング
テーマ型の2ファンド「ロボット・テクノロジー関連株ファンド -ロボテック-」と「グローバル・ロボティクス株式ファンド(年2回決算型)」は、12月だけでなく2017年通じて見ても人気が高かったことが分かる【図表2、3/赤字】。この2ファンドはともに2015年の設定であるが、新設ファンドでもないのに2017年1年間で2,000億円近い資金を新たに集めていた。まさにロボットなどのテーマは、2017年を代表する投資テーマだったといえよう。IoTやAI、ロボット自体は2017年に身近になったというより、これから社会に浸透していくことが期待されているテクノロジーである。それゆえに、息の長い投資テーマとなるだろう。

低リスクのバランス型ファンドも人気

また内外株式ほどではなかったものの、12月のバランス型への資金流入も1,500億円に迫っており、人気であった。バランス型の中では低リスク運用しているファンド、債券中心に運用しているファンドやリスクを一定以内に収めるようにコントロールしているファンドが特に人気であった。「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド」はリスクをコントロールしているファンドの代表格で、2017年7月の設定以来、毎月200億円以上の資金を集め、流入金額は約半年で1,800億円以上に達した。
 
低リスクのファンドが投資家の資金を集めている背景には、預金や国内債券などの運用難がある。日銀がマイナス金利政策を実施してから1年以上経ち、普通預金はおろか定期預金や個人向け国債、国内債券ファンドでも厳しい運用環境が続いている。そのため、株式などと比べて元本割れするリスクが小さいファンドのニーズが、預金代替や国内債券代替として高まっていると考えられる。2017年に最も資金流入が大きかった「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド Aコース(為替ヘッジあり 年2回決算)」も預金代替や国内債券代替として投資家に受け入れられていた可能性が高い。現行の金融政策が続く限り、預金代替や国内債券代替となるファンドのニーズも続くであろう。

好調な国内中小型株アクティブ・ファンドの人気が続くのでは

12月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、南アフリカ・ランドの通貨選択型のファンドが好調であった【図表4】。11月末時点で1南アフリカ・ランド8.2円だったのが12月末9.1円と11%程度対円で上昇したためである。南アフリカでは12月に財政赤字縮小や汚職一掃に積極的な改革派が与党トップに選出され、汚職問題を抱える現大統領の早期退陣期待が高まったことを好感し、通貨高が大きく進んだ。また、トルコ株ファンドも好調であった。トルコでは、11月に対米関係の悪化懸念などから通貨安、株安が進んでいた。12月は投資家のリスク選好が強まり世界的に株高となる中で、トルコ・リラ、トルコ株ともに急反発したため、トルコ株式ファンドはその恩恵を受けた。
【図表4】 2017年12月の高パフォーマンス・ランキング
【図表5】 2017年の高パフォーマンス・ランキング
加えて、国内中小型株のアクティブ・ファンドも引き続き好調なファンドが多かった。12月に特に好調であった国内中小型株のアクティブ・ファンドの4ファンドについては、2017年通じて高パフォーマンスであった【図表4、5/赤字】。2017年の高パフォーマンスであった4ファンド以外のファンドを見ても、中国株(特にA株)ファンド以外は全て国内中小型株のアクティブ・ファンドとなっていた。1年を通じて好調だった国内中小型株のアクティブ・ファンドが多かったことが分かる。その一方で、2017年は「つみたてNISA」の対象商品から多くのアクティブ・ファンドが外れる方針が金融庁から打ち出された。ゆえに、アクティブ・ファンドへ冷ややかな目が向けられることがあったが、結果的にはアクティブ・ファンドの投資意義を再認識させられる年になったと考えている。
なお、国内中小型株のアクティブ・ファンドはパフォーマンスだけでなく、投資家の人気も11月に続き12月も高かった。12月の国内株式への約1,800億円の資金流入のうち、1,200億円以上が中小型株のアクティブ・ファンドへの資金流入であった。2018年は2017年のように高パフォーマンスを上げられるかは分からないが、2017年の高パフォーマンスに投資家が注目しているのであれば、国内中小型株のアクティブ・ファンド人気も当面続くかもしれない。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2018年01月10日「研究員の眼」)

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