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- ECBの緩和縮小とユーロ制度改革
2017年07月24日
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■要旨
- ECBの緩和縮小への注目度が高まったことで、ユーロ参加国の国債利回りとユーロ相場の動きが激しくなている。きっかけは6月27日のドラギ総裁の講演に盛り込まれた「デフレの力はリフレの力に置き換わった」という発言だが、ECBの政策スタンスが、ここで急変した訳ではない。講演では「賃金や物価の伸びは抑制」されており、「政策理事会はリフレのプロセスを支えるような環境を維持する必要がある」と強調した。
- 7月20日の政策理事会でも物価目標への回帰を支える基本姿勢と環境悪化に柔軟に対応する構えを示すフォワード・ガイダンスを維持し、国債など資産買い入れの18年以降の方針などについて、秋に協議する方針を表明した。次回9月7日は、ECBが政策変更を決める頻度が高い3カ月に1度のスタッフ経済見通しの公表月だが、情報の必要性や慎重さを強調したことから、10月26日にずれ込む可能性の方が高そうだ。
- ECBが、経済ファンダメンタルズの面からも正当化され難くなっている、ルールの変更がなければ継続できない副作用を伴う政策を打ち切る時期が近付いている。緩和の縮小を慎重に進めても、脆弱な国の財政や銀行システムが、資産買い入れに守られた現在よりも、ショックを受けやすくなる可能性はある。その場合には、ECBは金融安定メカニズム(ESM)と連携してOMTのプログラムを通じて対応することになるだろう。
- ECBの緩和縮小は、ユーロ制度改革を促す側面もある。18年以降、緩和縮小と並行して、ユーロ制度改革の推進を目指すことになる。
(2017年07月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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