2017年04月20日

貿易統計17年3月~1-3月期の外需寄与度は前期比0.1%程度のプラスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易黒字(季節調整値)が急減

財務省が4月20日に公表した貿易統計によると、17年3月の貿易収支は6,147億円と2ヵ月連続の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:5,758億円、当社予想は6,123億円)を若干上回る結果となった。輸出は前年比12.0%(1月:同11.3%)と前月とほぼ同じ伸びとなったが、輸入が1月の前年比1.2%から同15.8%へと伸びを大きく高めたため、貿易収支は前年に比べ▲1,302億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比6.6%(2月:同8.3%)、輸出価格が前年比5.0%(2月:同2.8%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比4.1%(2月:同▲4.3%)、輸入価格が前年比11.2%(2月:同5.7%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は1,722億円の黒字となり、2月の6,090億円から黒字幅が大きく縮小した。輸出が前月比▲3.5%(2月:同6.3%)と8ヵ月ぶりの減少となる一方、輸入が前月比3.4%(2月:同▲1.6%)と2ヵ月ぶりに増加した。

貿易黒字(季節調整値)は1月に急減、2月に急増、3月に急減と振れが大きくなっているが、これは中華圏における春節の時期が昨年とずれたことが大きく影響しているとみられる。1-3月期の貿易黒字は3.6兆円(季節調整済・年率換算値)となり、10-12月期の4.3兆円から若干縮小したものの、基調としては明確な黒字を維持していると判断される。

2.アジア向け、IT関連輸出が好調

3月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比4.5%(2月:同2.2%)、EU向けが前年比▲0.0%(2月:同4.9%)、アジア向けが前年比7.6%(2月:同16.0%)となった。

1-3月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲1.7%(10-12月期:同2.8%)、EU向けが前期比0.4%(10-12月期:同0.5%)、アジア向けが前期比3.1%(10-12月期:同5.2%)、全体では前期比1.7%(10-12月期:同3.0%)となった。

世界経済の回復を受けて、輸出数量全体は4四半期連続の上昇と堅調を維持しているが、地域別には、1-3月期は米国向けが弱め、アジア向けが強めとばらつきが見られた。アジア向けはIT関連財を中心に好調を維持しているが、米国向けは米国内の販売低迷を反映し自動車輸出が減少したことから弱めの動きとなった。

一方、1-3月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比0.8%(10-12月期:同1.5%)と3四半期連続で上昇した。輸出に比べれば伸びは低いが、国内需要の持ち直しを背景に輸入も上向いている。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移

3.1-3月期の外需寄与度は前期比0.1%程度のプラスに

3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、17年1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比1%台半ばの増加、輸入が前期比1%程度の増加となることが見込まれる。この結果、1-3月期の外需寄与度は前期比0.1%(10-12月期:前期比0.2%)と3四半期連続のプラスとなることが予想される。

当研究所では鉱工業生産、家計調査、建築着工統計等の結果を受けて、4/28のweeklyエコノミストレターで1-3月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率を押し上げることに加え、民間消費を中心に国内需要も底堅い動きが見込まれることから、前期比年率1%台半ばのプラス成長を予想している。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2017年04月20日「経済・金融フラッシュ」)

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