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2017年04月07日
1―4四半期連続のプラス成長
2016年10-12月期の実質GDP(2次速報)は、前期比0.3%(前期比年率1.2%)と4四半期連続のプラス成長となった。輸出が前期比2.6%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比年率1.0%と7-9月期の同1.6%に続き成長率を大きく押し上げたことがプラス成長の主因である。一方、国内需要は設備投資が前期比2.0%の高い伸びとなったものの、民間消費(前期比0.0%)、住宅投資(同0.1%)の家計部門は低調だった。2016年後半は経済成長のほとんどが外需によるものとなり、国内需要は横ばいにとどまった。その一方で、成長率が1年にわたってゼロ%台半ばから後半とされる潜在成長率を上回り続けたことは景気の安定感を示すものとして一定の評価ができる。
2―横ばい圏から脱する輸出
2016年後半に日本の輸出は世界貿易の伸びを上回ったが、その背景には日本は世界的に需要が強い自動車、情報関連分野の輸出ウェイトが高いことがある。日本銀行の実質輸出の動きを財別に見ると、このところ自動車関連、情報関連が全体の伸びを上回っている。
ただし、先行きは欧米の自動車販売が頭打ちとなっていること、中国で小型車に係る自動車取得税が2017年1月から引き上げられたことなどから、自動車関連の輸出は減速する可能性が高い。また、情報関連分野の需要拡大は裾野の広がりを伴いつつあるが、夏場以降の情報関連輸出を大きく押し上げた新型スマートフォン関連の需要は一巡しつつある。
長い目でみれば、日本の輸出は海外経済の成長率と概ね連動している。日本の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率は2012年以降、過去平均の4%程度(1980年~)を下回り続けており、2016年は3%程度になったとみられる。当研究所の海外経済の予測(米国、欧州、中国以外はIMFの予測)に基づけば、海外経済の成長率は2017年が3.3%、2017年が3.5%と徐々に持ち直すが、引き続き過去平均の伸びは下回る。円安による下支えはあるもののリーマン・ショック前のように輸出の伸びが大きく加速することは期待できないだろう。
ただし、先行きは欧米の自動車販売が頭打ちとなっていること、中国で小型車に係る自動車取得税が2017年1月から引き上げられたことなどから、自動車関連の輸出は減速する可能性が高い。また、情報関連分野の需要拡大は裾野の広がりを伴いつつあるが、夏場以降の情報関連輸出を大きく押し上げた新型スマートフォン関連の需要は一巡しつつある。
長い目でみれば、日本の輸出は海外経済の成長率と概ね連動している。日本の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率は2012年以降、過去平均の4%程度(1980年~)を下回り続けており、2016年は3%程度になったとみられる。当研究所の海外経済の予測(米国、欧州、中国以外はIMFの予測)に基づけば、海外経済の成長率は2017年が3.3%、2017年が3.5%と徐々に持ち直すが、引き続き過去平均の伸びは下回る。円安による下支えはあるもののリーマン・ショック前のように輸出の伸びが大きく加速することは期待できないだろう。
3―厳しさを増す家計部門
2016年末にかけて家計の実質購買力を大きく下押しした生鮮野菜の価格高騰は一段落したが、今後は大幅な下落が続いていたエネルギー価格の上昇が物価の押し上げ要因となる。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は2017年1-3月期にはプラスに転じ、2017年度にはエネルギー価格の上昇を主因として0%台後半まで伸びを高めるだろう。こうした中、名目賃金の伸び悩みが続けば実質賃金は大きく低下してしまう。
労務行政研究所の「賃上げに関するアンケート調査」によれば、2017年度の賃上げ見通し(対象は労・使の当事者および労働経済分野の専門家約500人)は平均で2.00%となり前年度を0.12ポイント下回った。厚生労働省が集計している主要企業の賃上げ実績は同調査の見通しを若干上回る傾向があるが、前年度からの変化の方向は概ね一致しているため、2017年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る可能性が高くなった。失業率、有効求人倍率がともにバブル期並みの水準まで改善するなど労働需給は逼迫した状態が続いているが、2016年初からの円高を主因とした企業業績の悪化、消費者物価の下落が賃上げ交渉にマイナスに働いた模様だ。今回の見通しでは2017、2018年度の春闘賃上げ率の想定をそれぞれ2.05%、2.30%(2016年度実績は2.14%)とした。
2017年度は物価が上昇に転じる中で、春闘賃上げ率の低下を反映し名目賃金が伸び悩むため実質賃金の伸びは大きく低下することが予想される。企業の人手不足感が依然として強いことから雇用者数は増加を続けるものの、2017年度の実質雇用者報酬は2016年度の前年比2.4%から同1.1%へと伸びが大きく低下するだろう。2018年度は物価上昇率がさらに高まるが、円安や海外経済の回復を追い風とした企業業績の改善、2017年度の物価上昇を受けて所定内給与、特別給与(ボーナス)ともに増加幅が拡大し、実質雇用者報酬は前年比1.5%へと伸びが高まると予想する[図表2]。
労務行政研究所の「賃上げに関するアンケート調査」によれば、2017年度の賃上げ見通し(対象は労・使の当事者および労働経済分野の専門家約500人)は平均で2.00%となり前年度を0.12ポイント下回った。厚生労働省が集計している主要企業の賃上げ実績は同調査の見通しを若干上回る傾向があるが、前年度からの変化の方向は概ね一致しているため、2017年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る可能性が高くなった。失業率、有効求人倍率がともにバブル期並みの水準まで改善するなど労働需給は逼迫した状態が続いているが、2016年初からの円高を主因とした企業業績の悪化、消費者物価の下落が賃上げ交渉にマイナスに働いた模様だ。今回の見通しでは2017、2018年度の春闘賃上げ率の想定をそれぞれ2.05%、2.30%(2016年度実績は2.14%)とした。
2017年度は物価が上昇に転じる中で、春闘賃上げ率の低下を反映し名目賃金が伸び悩むため実質賃金の伸びは大きく低下することが予想される。企業の人手不足感が依然として強いことから雇用者数は増加を続けるものの、2017年度の実質雇用者報酬は2016年度の前年比2.4%から同1.1%へと伸びが大きく低下するだろう。2018年度は物価上昇率がさらに高まるが、円安や海外経済の回復を追い風とした企業業績の改善、2017年度の物価上昇を受けて所定内給与、特別給与(ボーナス)ともに増加幅が拡大し、実質雇用者報酬は前年比1.5%へと伸びが高まると予想する[図表2]。
4―実質成長率は2016年度1.3%、2017年度1.0%、2018年度1.2%を予想
世界経済の回復を受けて輸出、生産の上昇ペースが加速するなどここにきて企業部門は大きく改善している。一方、家計部門は名目賃金が伸び悩む中で物価が上昇に転じることから一段と厳しさを増す可能性が高い。企業部門の改善が家計部門に波及するまでには時間がかかりそうだ。
2017年度中は円安、海外経済回復の追い風を受けて輸出、設備投資は増加を続けるが、物価上昇に伴う実質所得の低下を主因として民間消費が低迷するため、前期比年率1%前後の成長にとどまることが予想される。2018年度に入ると前年度の企業収益回復、物価上昇を受けて春闘賃上げ率が3年ぶりに前年を上回り民間消費の伸びが高まることなどから、前期比年率1%台半ばまで成長率が高まるだろう。実質GDP成長率は2016年度が1.3%、2017年度が1.0%、2018年度が1.2%と予想する[図表3]。
2017年度中は円安、海外経済回復の追い風を受けて輸出、設備投資は増加を続けるが、物価上昇に伴う実質所得の低下を主因として民間消費が低迷するため、前期比年率1%前後の成長にとどまることが予想される。2018年度に入ると前年度の企業収益回復、物価上昇を受けて春闘賃上げ率が3年ぶりに前年を上回り民間消費の伸びが高まることなどから、前期比年率1%台半ばまで成長率が高まるだろう。実質GDP成長率は2016年度が1.3%、2017年度が1.0%、2018年度が1.2%と予想する[図表3]。
5―消費者物価の見通し
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)上昇率は、原油価格の上昇に伴うガソリン、灯油の大幅上昇などから2017年1月に前年比0.1%と13ヵ月ぶりのプラスとなった。電気代、ガス代は前年比で下落が続いているが、原油価格の上昇が遅れて反映されることにより今後値上げのペースが加速する。また、既往の円高による物価下押し圧力は残っているものの、足もとのドル円レートはすでに前年とほぼ同水準となっており、夏頃からは円安が物価の押し上げ要因となる公算が大きい。
一方、当研究所では足もとの潜在成長率を0%台後半と推計しているが、2017年度中は年率1%前後の成長が続くため、需給バランスの改善はいったん足踏みとなる可能性が高い。需給バランスが改善に向かうのは成長率が年率1%台半ばまで高まる2018年度に入ってからとなろう。今回の見通しにおける実質GDP成長率の予測をもとにすれば、需給ギャップがプラスに転じるのは予測期間末の2019年1-3月期となるとなる。
コアCPI上昇率は2017年1-3月期に7四半期ぶりにプラスとなった後、原油高に円安による押し上げが加わることにより2017年度には0%台後半まで伸びが高まるだろう。ただし、需給バランスの改善による物価押し上げ圧力は当面限定的にとどまり、上昇率が1%台となるのは需給バランスの改善が明確となる2018年度半ば頃となるだろう。
コアCPI上昇率は2016年度が前年比▲0.2%、2017年度が同0.8%、2018年度が同1.0%と予想する[図表4]。上昇率は徐々に高まるが、2018年度中に日本銀行が目標としている2%に達することは難しいだろう。
一方、当研究所では足もとの潜在成長率を0%台後半と推計しているが、2017年度中は年率1%前後の成長が続くため、需給バランスの改善はいったん足踏みとなる可能性が高い。需給バランスが改善に向かうのは成長率が年率1%台半ばまで高まる2018年度に入ってからとなろう。今回の見通しにおける実質GDP成長率の予測をもとにすれば、需給ギャップがプラスに転じるのは予測期間末の2019年1-3月期となるとなる。
コアCPI上昇率は2017年1-3月期に7四半期ぶりにプラスとなった後、原油高に円安による押し上げが加わることにより2017年度には0%台後半まで伸びが高まるだろう。ただし、需給バランスの改善による物価押し上げ圧力は当面限定的にとどまり、上昇率が1%台となるのは需給バランスの改善が明確となる2018年度半ば頃となるだろう。
コアCPI上昇率は2016年度が前年比▲0.2%、2017年度が同0.8%、2018年度が同1.0%と予想する[図表4]。上昇率は徐々に高まるが、2018年度中に日本銀行が目標としている2%に達することは難しいだろう。
(2017年04月07日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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