2017年03月31日

家計調査17年2月~プレミアムフライデーが押し上げも、月間の消費支出への影響は限定的

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.うるう年の反動で減少幅拡大

総務省が3月31日に公表した家計調査によると、17年2月の実質消費支出は前年比▲3.8%(1月:同▲1.2%)と12ヵ月連続で減少し、減少幅は前月から拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.1%、当社予想は同▲4.0%)を大きく下回る結果となった。前月比では2.5%(1月:同0.5%)と2ヵ月連続の増加となった。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲3.7%(1月:同0.3%)と2ヵ月ぶりの減少、前月比では0.2%(1月:同3.2%)となった。

実質消費支出は前年比では大幅な減少となったが、昨年がうるう年で今年の2月は昨年よりも日数が1日少ないことが大きく影響している。当研究所では16年2月の消費支出はうるう年の影響で2.7%押し上げられていたと試算しており、今年の2月は反動でその分押し下げられている。うるう年の影響を除けば前年比▲1%程度となり、1月とほぼ同じ減少幅となる。うるう年調整が行われている季節調整済の指数は前月比で高い伸びとなっており、むしろ良好な結果との見方が可能だ。

なお、2/24(金)には、毎月末の金曜日に早期帰宅を奨励し消費を喚起する「プレミアムフライデー」が実施された。2月の日別消費支出を確認すると、24日の消費支出は8,337円と通常の金曜日よりも高水準となった。ただし、もともと金曜日は他のウィークデー(月~木曜日)に比べ消費水準が高い。2/24(金)の消費支出は過去の平均的な金曜日を1,000円程度(1割強)上回っているに過ぎない。家計調査を見る限り、プレミアムフライデーに一定の押し上げはあったものの、2月の消費支出全体への影響は限定的だったと考えられる。
実質消費支出の推移/2月の日別消費支出(2016年、2017年)
実質消費支出、消費水準指数(除く住居等)の推移 実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比0.4%(1月:同1.5%)と2ヵ月連続で上昇し、17年1、2月の平均は16年10-12月期を0.8%上回った。同指数は16年7-9月期が前期比▲0.4%、10-12月期が同▲1.5%と2四半期連続で低下し、特に生鮮野菜高騰の悪影響もあり年末にかけて大きく落ち込んだが、年明け以降は持ち直しの動きが明確となっている。
 

2.年明け以降の個人消費は持ち直しの動きが明確に

家計調査以外の2月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の小売販売額は前年比0.1%(1月:同1.0%)と増加幅が前月から大きく縮小したが、うるう年の反動により押し下げられていること、季節調整済・前月比では0.2%(1月:同0.2%)と2ヵ月連続の増加となったことを踏まえれば、底堅い結果と評価できる。また、物価上昇分を割り引いた実質ベースの季節調整済・販売額指数(当研究所による試算値)は16年7-9月期の前期比0.7%、10-12月期の同0.8%の後、17年1、2月の平均は10-12月期を0.8%上回り、上昇傾向を維持している。

百貨店売上高(日本百貨店協会)は前年比▲1.7%(店舗調整後)と12ヵ月連続の減少となり、1月の同▲1.2%から減少幅が拡大した。外国人観光客向けの売上高は前年比9.6%と1月の同24.8%から伸びが低下したが、3ヵ月連続の増加となった。また、外食産業売上高は前年比1.8%となり、1月の同2.4%から伸びは縮小したが、6ヵ月連続で増加した。

17年2月の消費関連指標はうるう年の翌年で前年比の伸びが低めに出ていることを考慮すれば、実態として強めの結果が多かった。個人消費は生鮮野菜の高騰による物価上昇の悪影響もあり、年末にかけて弱めの動きとなったが、値上げが一服した年明け以降は、雇用所得環境の改善を背景に持ち直しの動きが明確となっている。

ただし、今後はエネルギー価格の上昇が消費者物価の押し上げ要因となることには注意が必要だ。17年の春闘賃上げ率は前年を若干下回ることが見込まれるため、物価上昇による実質所得の低下が個人消費を下押しすることが懸念される。
小売業販売額(名目・実質)の推移/外食産業売上高の推移
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年03月31日「経済・金融フラッシュ」)

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