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予想インフレ率の上昇と運用資産への影響
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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図表1は、日本、米国、欧州、英国における5年先5年間の予想インフレ率1の推移を示したものである。日本では、2013年4月に「2%の物価安定」の目標を掲げて異次元金融緩和が始まったことで、2015年末まで他とは異なる動きをしていたことが分かる。2012年末まで0%前後を推移していた予想インフレ率は、2013年初めから2015年末まで1%前後を推移するように変化しており、この期間において日本のインフレ率の上昇が予想されていたことが分かる。一方で、2016年1月より予想インフレ率が下落し、0%前後を推移するようになっている。これは、「2%の物価安定の目標」が実現できていないとして、日本銀行がマイナス金利政策を導入した時期と一致する。日本における予想インフレ率は、「2%の物価安定」の実現可能性について、市場参加者の予想を表現する指標として推移してきたと言える。
世界的な予想インフレ率の上昇は国内投資家の運用資産にどのような影響を与えるであろうか。図表2は異次元金融緩和政策が始まった2013年4月を境に、その前後の期間について日本における予想インフレ率と各金融指標の相関係数を計測した結果である。
この結果から、今後も世界的に予想インフレ率の上昇が継続するのであれば、国内の株価は上昇し、為替は円安になり、国債利回りは上昇することになる。よって、予想インフレ率上昇への備えとして、国内株式や外国資産を増やし、日本国債を減らすという運用戦略が考えられることになる。国債利回りについては、予想インフレ率が上昇することで、名目利回りが上昇するということであり、理論的な整合性もある。しかし、日本銀行によるマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールによって短期金利や長期金利の水準が一定範囲内に収まる状況が継続するのであれば、これらのゾーンにおける国債利回りと予想インフレ率の相関関係が弱まっていく可能性に留意しておく必要がある。
年金運用においてこのようなインフレリスクをとるような戦略を採用すべきかどうかは議論の余地があるだろう。一般的には退職給付債務のキャッシュフローはインフレ率と連動しない場合が多く2、イールドカーブ・コントロールにより割引率もそれほど変化しない可能性もある。年金資産サイドでインフレリスクをとるような運用戦略を採用すれば、負債サイドとのリスク特性の違いが大きくなることに繋がってしまう。よって、インフレリスクをとる戦略はリスクプレミアムを得る手段の一つとして捉えることになるものと思われる。また、高インフレ下では、債券だけではなく株式等のリターンに対しても、インフレ率がマイナスに作用すると指摘されることもあるため、これらの相関関係が崩れるというリスクシナリオも想定しうる。予想インフレ率の水準にも注意を払っておきたい。
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(2017年04月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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