2017年03月29日

まちづくりレポート|みんなで創るマチ 問屋町(といやちょう)-若い店主とオーナーの連携によりさらなるブランド価値向上に挑む岡山市北区問屋町

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎

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1――問屋町というまちの個性

1|ナショナルチェーン店を持たない個性的な店舗
車を停め、降りてきた女性二人が向かう先に人だまりが見える。入店待ちする女性やカップルが5~6組ほどいるだろうか、女性二人もその列に並んだ。脇では、女性客数組が、テイクアウトしたアイスクリームをしゃがんで食べている。

特に休日、このエリアに10件ほどあるカフェはどこも若い客で賑わい、こうした光景が見られる。いずれもよく見かけるチェーン店ではない。どの店も個性的で洗練されており、メニューもそれぞれ特徴がある。

カフェだけでなく、アパレル、雑貨、家具、花屋など、このまちを構成するどの店も、店構えや内装、商品の陳列、セレクトされた商品に至るまで、店主のセンスやこだわりが隅々まで行き渡っている。食事や買い物をすることはもちろん、その空間を体験することに高揚感を覚える。そうした店が400m四方ほどの範囲に集積している。地元資本の店舗がほとんどで、ナショナルチェーン店はほぼ見当たらない。

人々から支持を集めるまちは、そこで時間を過ごすことができる、まち自体を楽しむことができるまちだ。歩ける範囲に多様な店舗があり、いずれも個性的でオシャレ。いくつか気になる店を見て回り、カフェで会話を楽しんで時間を過ごす。そういった楽しみ方ができる。問屋町にはそれがある。
(写真)問屋町の店舗の様子(筆者撮影他、カフェ・キネマ、ウーヌス提供)
2|中心部から3km立地、広い道路幅員
問屋町は、今では岡山というより中国・四国地方を代表するオシャレなまちとして知られている。しかし、もともとは卸売団地として形成された。岡山駅から南西約3kmに位置し、約14.5ヘクタールのエリアは、土地区画整理事業によって概ね100m四方のブロックで構成されており、その道路幅員は、最大で18mと非常に広く取られている。商品の配送に使用するトラックの通行や荷積み荷下ろしに必要な空間を確保するためのものだ。これが問屋町の何よりの特徴と言える。
図表1-1 問屋町位置、地図
3|倉庫を改装したテナントビル
店舗が入るビルは、多くが卸売業の倉庫やオフィスとして活用されていたものだ。そのためか、間口が広くて、天井が高い建物が多く1階当たりの床面積はそれなりに大きい。それを改装して複数の店舗が入居する形態としている。

建物は2~4階建てが主で、道路に面した各建物の壁面、軒高、スカイラインがほぼそろっており、シンプルな外観と相まって、街並みに統一感を与えている。まっすぐな広い道路に低層の建物が並び、そこからの空の広がりがまち全体を開放的な雰囲気にしている。これこそが問屋町というまちの個性であり、最大の魅力である。
(写真)問屋町の街並み(以上、株式会社レイデックス提供)

(2017年03月29日「基礎研レポート」)

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社会研究部   都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

経歴
  • 【職歴】
     1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
     2004年 ニッセイ基礎研究所
     2020年より現職
     ・技術士(建設部門、都市及び地方計画)

    【加入団体等】
     ・我孫子市都市計画審議会委員
     ・日本建築学会
     ・日本都市計画学会

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