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教育無償化と教育国債~憲法改正、財政再建議論も重なり複雑に~
総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
1月の施政方針演説の際、安倍首相は「誰もが希望すれば高校にも専修学校・大学にも進学できる環境を整えなければならない」と述べていた。憲法改正で「教育無償化」の実現を訴える日本維新の会を取り込む狙いもあり、安倍首相は無償化を拡充したい意向との観測もでている。
低成長打破のためには教育が必要、スティグリッツ教授も教育強化を主張
完全無償化には5兆円の財源確保が必要、教育国債が最有力
2017年度に部分的に始まる給付型奨学金制度の予算額は70億円に過ぎず、2018年度からの本格実施後でも予算規模は約220億円である。
2月15日に発足した自民党の特命チームは財源の議論を始めている。候補は(1)教育国債、(2)税制改正、(3)消費税率10%を含めた増税策、(4)こども保険(所得に応じて公的な保険料を徴収する新制度)などであるが、教育国債が最有力候補のようだ。
ただし、教育国債について麻生太郎財務相は「親の世代が子どもに借金をまわすものだ。極めて慎重にやらないといけない」と否定的である。
教育国債の是非は財政再建の枠を緩める議論に展開、憲法改正とも絡み複雑化
スティグリッツ教授は、政府債務を減じるために消費増税は逆効果で、炭素税の導入や日銀が保有する政府債務の無効化、債務の永久債あるいは長期債への組み替えなどを提言した。
日銀のイールドカーブコントロールにより、長期金利はゼロ%に釘付けされている。債務残高の名目GDP比が縮小しやすい経済金融環境が実現されており、財政拡大との流れが出やすい(図表3)。
教育無償化の議論は、長期の経済成長確保という論点のほか、憲法改正や消費税の再引き上げ、2020年度のPB黒字化目標をどうするかなど財政再建議論などが重なり始めておりその行方が注目される。
森川正之(2015)「経済成長政策の定量的効果について:既存研究に基づく概観」RIETI Policy Discussion Paper Series 15-P-001
(2017年03月17日「研究員の眼」)
03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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