- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- 年金制度 >
- 米国401(k) 加入者の2006年改革後の資産構成
米国401(k) 加入者の2006年改革後の資産構成

金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 梅内 俊樹
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
この401(k)の2014年時点の実質的な株式構成比率を、年代別に比較したのが図表1である。実質的とは、自社株や株式特化型ファンドの時価残高だけでなく、複数の資産に投資するファンドにおける株式時価残高も加えた株式へのエクスポージャーであることを指す。株式構成比率が全般的に高いことも然ることながら、若年層ほど実質的な株式構成比率が高く、高齢層になるほどこの比率が低くなる傾向にあることが特徴的だ。
こうした実質株式構成比率の年代別の傾向は、従来から認められるものではなく、ここ数年で顕著となっている。20代の加入者のうち、株式に一切投資しない加入者の割合は、2007年の19%から、2014年には8%に低下している。反対に、実質的な株式構成比率が80%超の20代の加入者は、2007年時点の49%から、2014年には75%まで増大している。株式に80%超投資する60代の加入者の割合はむしろ低下し、全世代の平均でも、ほぼ変わらずとなっていることと比較して、20代の株式投資比率の上昇は極めて顕著である。
こうした20代の加入者の株式構成比率の変化は、2006年年金保護法の制定が背景と考えられる。401(k)への加入はもともと被用者の任意とされ、その結果として、未加入者が少なからず存在していた。また、MMF等の安全性の高い商品での運用では、老後の資産形成が十分とならず、故に、老後の所得格差が拡大することが危惧されていた。こうした課題への対応として、制定されたのが2006年の年金保護法である。法改定により、非加入の意思を明確に表示しない被用者を、401(k)プランに自動加入させることができるようになった。また、運用指図しない加入者向けのデフォルト商品についても、長期的な資産形成として相応しいとされるターゲット・デート・ファンドやバランスファンドなどが適格デフォルト商品としてされ、これらをデフォルト商品とする場合には、事業主に運用責任が及ばないような措置がとられたのである。
2014年の年代別の資産構成を示す図表2を見ると、20代の株式ファンドの資産構成割合は、他の年代に比べ決して高いわけではない。それにも関わらず、実質的な株式投資比率が78%と高いのは、若年期に株式比率を高めるターゲット・デート・ファンドへの高い投資比率が大きく寄与しているためである。401(k)プランへの加入を躊躇したり、悩んだりした結果、加入しなかった若年層の加入が増大し、かつ、こうした加入者の資産がデフォルト商品として指定されることの多いターゲット・デート・ファンドで運用されるようになったことが、具体的な数値として現れていると解釈できる。
2001年にDCが導入されて15年が経過する日本でも、個人型DCの加入率の低迷やDC資産の大半を元本確保型商品が占めるといった課題に対応する改正法が昨年5月に成立した。これにより、個人型DCでは1月より加入範囲が拡大され、20歳以上60歳未満の全ての人が原則として個人型DCに加入できるようになった。企業型DCでは、DC運用の改善に向けて、デフォルト商品規定が整備され、分散投資効果が期待できる商品をデフォルト商品として指定することを促す措置が予定されている。しかし、日米間には、例えば、セーフハーバールールの有無など、DC制度に関わる規定や環境に違いがある。今後の動向を見極めつつも、米国の事例を参考にしつつ、引き続き、改善策を検討していく必要はあるように思われる。
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1849
- 【職歴】
1988年 日本生命保険相互会社入社
1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
2009年 ニッセイ基礎研究所
2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
2013年7月より現職
2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
2021年 ESG推進室 兼務
梅内 俊樹のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/03 | 資産配分の見直しで検討したいプライベートアセット | 梅内 俊樹 | ニッセイ年金ストラテジー |
2025/02/28 | 日本版サステナビリティ開示基準を巡る議論について-開示基準開発の経過と有価証券報告書への適用の方向性 | 梅内 俊樹 | 基礎研レター |
2024/09/06 | 持続的な発展に向けて-SDGsの先を見据えた継続的な取組が必要か? | 梅内 俊樹 | 基礎研マンスリー |
2024/09/05 | 持続的な発展に向けて-SDGsの先を見据えた継続的な取組が必要か? | 梅内 俊樹 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【米国401(k) 加入者の2006年改革後の資産構成】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
米国401(k) 加入者の2006年改革後の資産構成のレポート Topへ