2024年04月18日

「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2023年】(1)~東京23区の新築マンション価格は前年比9%上昇。資産性を重視する傾向が強まり、都心は+13%上昇、タワーマンションは+12%上昇

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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1.はじめに

不動産経済研究所によれば、2023年に東京23区で販売された新築分譲マンションの平均価格は1億1,483万円(前年比+39%上昇)と初めて1億円の大台を上回った(図表-1)。実需層による購入に加えて、その資産性に着目した海外の投資資金が東京のマンション市場に流入している1。マンション価格高騰に関する話題がメディア等で多く取り上げられるなか2、マンション価格に関する人々の関心は引き続き高いと言える。

そこで、本稿では、昨年3に続いて、新築マンションの販売データを用いて、品質調整をした「新築マンション価格指数」を作成し、2回に分けて、東京23区の新築マンション市場の動向を概観する。今回のレポートでは、東京23区全体の市場動向のほか、サブインデックスである「エリア別価格指数」と「タワーマンション価格指数」を用いて、各サブセクターの動向について解説する。また、次回のレポートでは、新築マンション価格の決定構造がコロナ禍を経て、どのように変化したかについて確認した上、新築マンション市場の今後の方向性について考察したい。
図表-1 新築分譲マンションの平均価格<東京23区> 
 
1 日経クロストレンド「億単位の物件を現金で 人口減でも外国人に人気の日本不動産」2023/2/16
2 日本経済新聞「東京23区の新築マンション価格、初の1億円超 23年平均」2024/1/25
3 吉田資『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向(1)』、『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向(2)』、『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向(3)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート2023年4月11日、2023 年4月21日、2023年5月26日)

2.「新築マンション価格指数」でみる東京23区の新築マンション価格

2.「新築マンション価格指数」でみる東京23区の新築マンション価格

本章では、東京23区の新築マンションの販売データ(2005年~2023年)を用いて、品質調整をした「新築マンション価格指数」を作成し4、その動向を把握する。
 
4 推計式は、『「新築マンション価格指数」でみる東京23区の市場動向(1)』の「3. 「新築マンション価格指数」の作成」を参照されたい。
2-1.東京23区「新築マンション価格指数」の算出
(1) 算出結果
図表-2に、東京23区の「新築マンション価格指数」(年次)の算出結果を示した。2023年の価格指数(2005年=100)は、前年比+9%上昇の「210.2」となり、過去最高を更新した。「新築マンション価格指数」でみる東京23区の新築マンション価格は、大きく3つのフェーズ5に分類できるが、2013年からスタートした上昇フェーズIII「アベノミクス以降の価格上昇局面」が継続している。
図表-2  「新築マンション価格指数」 (東京23区)(2005年=100、年次)
 
5 上昇フェーズI:「2005年~2008年:リーマンショック前までの価格上昇局面(不動産ファンドバブル期)」、
下落フェーズII:「2009年~2012年:リーマンショック後の価格下落局面(東日本大震災を含む)」、
上昇フェーズIII:「2013年~:アベノミクス以降の価格上昇局面」。
(2)「新築マンション価格指数」と「平均価格・m2単価」(不動産経済研究所公表)の比較
「新築マンション価格指数」と不動産経済研究所が公表する「平均価格」(図表-3)および「m2単価」(図表-4)を比較すると、「平均価格」が前年比+39%、「m2単価」が同+34%と大幅に上昇したのに対して、「新築マンション価格指数」は同+9%の上昇に留まり、大きなかい離を示す結果となった。2023年は、総戸数が約1000戸と大規模かつ全住戸1億円以上とされる「三田ガーデンヒルズ」6等の高価格物件が供給された影響で、「平均価格」・「m2単価」が大幅に上昇したと考えられる。一方、高額物件の影響を取り除いて品質調整を行った「新築マンション価格指数」をみると、2023年の価格上昇率(前年比+9%)は前年(同+8%)並みであったと言えそうだ。
図表-3 「新築マンション価格指数」vs.「平均価格」
図表-4 「新築マンション価格指数」vs「㎡単価」
 
6 日本経済新聞「最高額45億円の三田ガーデンヒルズ、11月に2期目販売」2023/9/12
(3) 新築マンション市場を取り巻く需給環境
次に、東京23区の新築マンション市場を取り巻く需給環境を確認し、2023年の価格上昇要因について考える。不動産経済研究所によれば、東京23区の新築分譲マンションの新規供給は、2013年をピークに減少傾向で推移している。2023年の新規供給戸数は1万1,909戸(前年比+10%)と、2005年以降で最も少なかった前年から増加したものの、2013年(約2.8万戸)対比でみて約4割の水準に留まっている(図表-5)。
図表-5 新築分譲マンションの新規供給戸数<東京23区> 
建設物価調査会「建築費指数」によれば、東京の「集合住宅(RC造)」の建築費は、構造的な人手不足を背景に、2010年を底に上昇基調で推移している。2023年は「143」(前年比+7%)となり2010年対比で+45%上昇した(図表-6)。また、土地総合研究所「不動産業業況等調査」によれば、「住宅・宅地分譲業」の「用地取得件数」の動向指数は、2013年以降、マイナス(取得件数減少)基調にあり、2022年10月以降、マイナス幅が拡大している。デベロッパーの開発用地の取得は低調な状況にあるようだ(図表-7)。

人手不足等に伴う建築コスト上昇や開発用地の不足を背景に、マンションデベロッパーは慎重な供給姿勢を維持しており、新築マンションの供給は減少傾向に変化は見られない。
図表-6 「集合住宅(RC造)」建築コスト(東京)/図表-7 「住宅・宅地分譲業」の「用地取得件数」の動向指数
続いて、マンション需要に影響を及ぼす人口移動(日本人)を確認する。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2023年の東京23 区の「転入者数」は35.8万人(前年比+3.0%増加)、「転出者数」は31.1万人(同▲5.3%減少)、「転入超過数」は+4.8万人(前年比+39.3%)となった(図表-8)。東京23区への人口流入はコロナ禍で一時的に弱まったが、着実に回復に向かっている。

東京23区の新築マンションは良好な需給環境を背景に価格上昇が続いていると考えられる。
図表-8 転入者数および転出者数(日本人・東京23区)
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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