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- 資本コストから見たPBR効果2~リーマン・ショック以降、なぜ効果が見られにくくなったのか~
2017年11月01日
1――はじめに
日本の株式市場では、低PBR銘柄への投資は高PBR銘柄へ投資するよりも、高い収益が得られる傾向があります(本稿では、この傾向を「PBR効果」と呼びます)。近年、PBR効果があまり見られなくなっていましたが、2016年は久々に見られました。
前回1は、アベノミクス相場が始まった2012年以降に絞って検証し、PBR効果が2016年に見られた要因を資本コストから探ると共に、今後の動向について考えました。続編となる本稿では、より長い期間で検証し、なぜ近年、PBR効果があまり見られなくなっているのかについて考えたいと思います。
1 詳しくは「資本コストから見たPBR効果~要因分析から今後の動向を考える~」をご覧ください。
前回1は、アベノミクス相場が始まった2012年以降に絞って検証し、PBR効果が2016年に見られた要因を資本コストから探ると共に、今後の動向について考えました。続編となる本稿では、より長い期間で検証し、なぜ近年、PBR効果があまり見られなくなっているのかについて考えたいと思います。
1 詳しくは「資本コストから見たPBR効果~要因分析から今後の動向を考える~」をご覧ください。
2――リーマン・ショックまでほど顕著に見られなくなったPBR効果
はじめに、実際のPBR効果の動向について確認します。本稿では、東証33業種の金融、不動産セクター(銀行、証券、商品先物取引、保険、その他金融、不動産)を除くTOPIX500採用銘柄を対象に、毎年6月初時点のPBRを用いて低PBR銘柄と高PBR銘柄に分けて分析していきます(詳しくは【図表1】)。
低PBR銘柄と高PBR銘柄の過去20年の累計リターンの推移(【図表2】左)をみると、低PBR銘柄(青線)が高PBR銘柄(赤線)よりも高パフォーマンスでした。低PBR銘柄と高PBR銘柄の累計リターンの差(黄線)をみても、2000年から2006年にかけて一本調子で上昇し、パフォーマンス差が拡大していたことが確認できます。ただ、2008年(点線)以降は横ばいで推移し、パフォーマンスの差がほとんどありませんでした。年次リターンの平均(【図表2】右)をみても、2008年までは低PBR銘柄と高PBR銘柄の年次リターンの差が5%程度ありました。それが、リーマン・ショックの2008年以降は1%程度まで低下しており、PBR効果があまり見られなくなったことが分かります。
低PBR銘柄と高PBR銘柄の過去20年の累計リターンの推移(【図表2】左)をみると、低PBR銘柄(青線)が高PBR銘柄(赤線)よりも高パフォーマンスでした。低PBR銘柄と高PBR銘柄の累計リターンの差(黄線)をみても、2000年から2006年にかけて一本調子で上昇し、パフォーマンス差が拡大していたことが確認できます。ただ、2008年(点線)以降は横ばいで推移し、パフォーマンスの差がほとんどありませんでした。年次リターンの平均(【図表2】右)をみても、2008年までは低PBR銘柄と高PBR銘柄の年次リターンの差が5%程度ありました。それが、リーマン・ショックの2008年以降は1%程度まで低下しており、PBR効果があまり見られなくなったことが分かります。
ここで、「①業績の寄与」は1年間で実際に得た利益(正確には包括利益)による株価上昇(赤字の場合は下落)であるのに対して、「②成長の寄与」は業績予想の変化に対する株価変動です。たとえば予想残余利益が一年後に拡大し、残余利益が成長していれば、「②成長の寄与」はプラスになります。「成長」といっても実際の利益成長ではなく、株価に織り込まれている予想利益の変化の影響という点にご留意ください。
リターンの寄与分析を低PBR銘柄、高PBR銘柄ごとに行い、「①業績寄与」、「②成長寄与」、「③バリュエーションの変化」に分けて考察していきます。
リターンの寄与分析を低PBR銘柄、高PBR銘柄ごとに行い、「①業績寄与」、「②成長寄与」、「③バリュエーションの変化」に分けて考察していきます。
なお、サンプルに異常値がある場合に切片や回帰係数は異常値の影響を大きく受けます。そのため、回帰分析前に異常値処理を行います。本稿では異常値処理として、今期予想ROE、PBR共に「平均値±3・標準偏差」から外れる銘柄は回帰分析のサンプルから除外しました。
推計した資本コストの推移をみると、一貫して高PBR銘柄が低PBR銘柄と比べて資本コストが高くなっていました(【図表3】右上)。低PBR銘柄と比べて高PBR銘柄の方が高リスクのため、リスクが高い分、資本コストも高くなっていると考えられます(【図表3】右下)。また、高PBR銘柄の方が低PBR銘柄より成長率も高く、高PBR銘柄は高い成長が株価に織り込まれていることも分かります(【図表3】左下)。ただ、資本コストや成長率(つまりPBRとROEの分布)は、PBR効果のターニングポイントとなっている2008年前後で、その傾向に大きな変化は見られませんでした。
推計した資本コストの推移をみると、一貫して高PBR銘柄が低PBR銘柄と比べて資本コストが高くなっていました(【図表3】右上)。低PBR銘柄と比べて高PBR銘柄の方が高リスクのため、リスクが高い分、資本コストも高くなっていると考えられます(【図表3】右下)。また、高PBR銘柄の方が低PBR銘柄より成長率も高く、高PBR銘柄は高い成長が株価に織り込まれていることも分かります(【図表3】左下)。ただ、資本コストや成長率(つまりPBRとROEの分布)は、PBR効果のターニングポイントとなっている2008年前後で、その傾向に大きな変化は見られませんでした。
03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
公式SNSアカウント
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