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- ポーランド紀行(その1)-中世の街並みから聞こえる「声」
ワルシャワと言えばショパンが想起されるように、空港名は「フレデリック・ショパン国際空港」だ。空港には楽器を持った人の姿が目立つ。ロビーにはグランドピアノが置いてあり、いつでもだれでも弾いて構わないそうだ。ポーランドは2004年にEUに加盟、シェンゲン圏のために他のEU諸国へのトランジット客もここで入国審査が行われ、審査ゲートはとても混み合っていた。
今回はハンザ同盟の都市として栄えたバルト海に近いグダンスクから、コペルニクスの生地として有名なトルン、そしてポズナン、ヴロツワフなどを経て、古都クラクフからワルシャワへと向かった。どの都市も旧市街地の広場を囲む中世の面影を残す街並みが美しい。ポーランドは国民の9割近くがカトリック教徒だが、街のいたるところに教会があり、敬虔なクリスチャンの国の雰囲気が漂う。
第264代ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世は、ポーランド出身の455年ぶりの非イタリア人教皇で、在位は1978~2005年と四半世紀を超えている。多くの信者から敬愛され、民主化運動の精神的支柱にもなり、国内にはあちこちに教皇の銅像やモニュメントがある。グダンスクの造船所は、民主化運動を主導したワレサ議長率いる自主管理労働組合「連帯」が結成された場所としても有名だ。
ワルシャワには地下鉄があるが、他のどの都市にもしゃれたデザインのトラムが街中を走っている。トラムの車窓から美しい街並みを眺めるのは本当に楽しい。幹線道路には自転車専用道が設けられ、自転車用信号機も設置されている。ハンガリーが自転車大国としてよく知られるが、今のヨーロッパの多くの国では、自転車がひとつの交通機関として市民権を得ているようだ。
ポーランドはチェコやハンガリーと同様、現在ではEUの一員として西側諸国と同じようなライフスタイルが定着しているが、何か旧社会主義国としての共通した空気も漂う。それは第2次世界大戦後の独裁体制から、今日の民主主義を獲得した国民の強い意思の表出かもしれない。ナチス・ドイツに徹底的に破壊されたワルシャワの街は、今は市民たちの手により忠実にもとの姿に復元されている。そこからは、戦争や民主化運動で犠牲になった大勢の市民を悼む声が聞こえてくるようだ。(つづく)
(参考)研究員の眼『“自由”は、どこから来たのか~中欧の街角から(その3):プラハ』(2016年10月18日)
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2017年10月17日「研究員の眼」)
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