2017年10月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの17年8月の輸出額は前年同月比22.8%増と、前月の同19.0%増からやや上昇し、7ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は昨年後半に主力の電気・電子製品が勢いを取り戻して以降、政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額は前年同月比16.9%増(前月:同20.8%増)と低下した結果、貿易収支は15.9億ドルの黒字となり、前月から13.2億ドル増加した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同39.5%増(前月:同14.6%増)と一段と上昇し、5カ月連続の二桁増を記録した(図表10)。電話・部品の好調はサムスン電子の新型スマートフォン発売の影響で高い伸びが続いているが、年末には落ち着いていくものと見られる。またコンピュータ・電子部品も同34.4%増(前月:同33.1%増)と高水準が続き、15カ月連続の二桁増となった。アパレル関連では織物・衣類が同9.1%増(前月:同7.1%増)、履物が同15.5%増(前月:同12.7%増)と、総じて高い伸びを維持している。農産品ではコーヒー(同23.9%減)が落ち込む一方、好天に恵まれてコメ(同54.0%増)や野菜(同44.7%増)、ゴム(同38.8%増)などが好調に推移している。

輸出を資本別に見ると、地場企業が同18.7%増(前月:同21.0%増)と低下した一方、全体の7割を占める外資系企業が同24.5%増(前月:同18.2%増)と上昇した。
(図表9)ベトナム 貿易収支の推移/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの17年8月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比15.8%増(前月:同6.1%増)と上昇し、5ヵ月ぶりの二桁増となった。輸出は医薬品の不振が続いているものの、主力の電子製品と石油化学製品を中心に勢いが増してきている。なお、総輸出額は前年同月比14.1%増(前月:同10.1%増)、総輸入額も同14.8%増(前月:同14.0%増)と、それぞれ上昇した結果、貿易収支は41.4億ドルの黒字と、前月から0.3億ドル黒字が縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同20.5%増と、前月の同3.1%増から大きく上昇した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同0.2%増)とダイオード・トランジスタ(同2.0%増)が伸び悩む一方、IC(同35.4%増)やPC(同17.1%増)、PC部品(同10.0%増)がそれぞれ上昇した。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品は同14.8%増と、前月の同10.9%減からプラスに転じた。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品が同30.6%増(前月:同36.3%増)と高水準を維持する一方、医薬品が同10.0%減(前月:同54.3%減)とマイナス幅が縮小した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年8月の輸出額は前年同月比9.3%増と、前月の同11.0%増からやや低下した。輸出は海外経済の回復を受けて電子製品を中心に概ね二桁増で推移してきたが、足元ではベース効果が剥落して輸出の勢いは弱まりつつある。一方、輸入額は前年同月比10.5%増(前月:同3.2%減)と3ヵ月ぶりのプラスとなった。結果、貿易収支は24.1億ドルの赤字と、前月から7.9億ドル赤字が拡大した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同3.5%増と、前月の同11.8%増から低下した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、遠距離通信機器(同43.8%減)と電子データ処理機(同0.4%減)が落ち込んだほか、半導体デバイス(同3.6%増)や計測制御機器(同2.6%増)が伸び悩んだ。その他9品目については金(同186.7%増)や機械・輸送用機器(同75.0%増)、電子機械・部品(71.2%増)、ココナッツオイル(同61.2%増)、金属部品(同22.6%増)、その他製造品(同13.8%増)が増加した一方、その他鉱業品(同19.0%減)、化学(同6.6%減)、イグニッション・ワイヤーセット(同2.7%減)が減少するなど、総じて増加した品目が多かった。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年10月10日「経済・金融フラッシュ」)

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