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- アジアの二都物語:「北京・上海」「デリー・ムンバイ」「ハノイ・ホーチミン」-各国の発展を牽引するライバル都市-
第一に、各都市の一人当たりGDP(国内総生産)1は、各国の平均よりも高水準であり、消費市場としての重要度も大きい点が共通点といえる。
第二に、北京・デリー・ハノイは各国の首都で政治・行政の中心地であり、上海・ムンバイ・ホーチミンは大規模な商業都市である。その点から、前者は、町や建物の雰囲気も重厚で落ち着きが感じられ、後者は、高層ビルも多く、町により活気があり喧騒も感じられる。さらに後者には、各国のファッションやトレンドをリードする場所との印象もある。
第三に、上記の各都市ペアは、気候の面での違いに加え、いずれも長い歴史のある都市でもあり、言語・料理など文化面や住民の意識・気質等の違い、二大都市相互間のライバル意識がみられる。
次に、ジェトロの資料などを参考にして、各国別に各都市の特徴点等をみることとする。
一人当たりGDP(2015年)は、北京17,101ドル、上海16,667ドルと、国の平均値である8,113ドルの二倍を超える高水準となっており2、巨大な消費市場としても知られている。
歴代王朝の首都であった北京の住民は、首都のプライドを持ち、社会的地位・名声・権力への興味や政治・教育への関心が大きいといわれる。一方、国際都市としての歴史が長い上海の人々は、個人主義が強く商才に長け、流行・ファッションに敏感といわれる。北京では重厚で落ち着いた建物が多いのに対して、上海(特に浦東新区)には斬新なデザインの超高層ビルが立ち並び好対照の印象がある。
インドというと、常夏との印象があるが、北部に位置するデリーでは年間における寒暖の幅が非常に大きい。筆者が始めて同地を訪問した際にコートやセーターを持参せず困った経験もある。これに対して、ムンバイは通年高温多湿な日が多い。また産業も、デリー周辺では大企業の本社や工場などが多い。ムンバイには、商業・金融・貿易・海運等サービス業が多く、中央銀行(インド準備銀行:Reserve Bank of India)の本店が、首都ではなく同地に所在しているのは珍しいケースである。映画製作の拠点「ボリウッド」も有名である。デリーを中心とするインド北部の気質は、保守的でプライドが高く、見栄っ張り、家族重視の価値観が強いとされる。一方、ムンバイは、経済観念が発達しており、個人主義が強く、海外の文化に開放的といわれる。
かつての南ベトナムの首都でサイゴンと呼ばれていたホーチミンが、人口や産業・企業活動の面では、政治・行政の中心地であるハノイに対して優位にある。気候もハノイは四季があり、寒暖の差が大きいが、ホーチミンは年間を通じて暑い日が多い。ハノイでは集団主義の傾向が強く、家族・周囲・メディアの意見・提案を重視する。プレミアム商品志向で、熟考して購入するし、貯蓄意欲も高い。ホーチミンは、個人主義の傾向が強く、新しいもの・サービスに敏感で、目立ちたがり、見栄っ張り、衝動買いの傾向があるとされる。
1 都市については、より正確な用語として、域内総生産(Gross Regional Product: GRP)があるが、ここでは、慣用的にGDPの用語を用いている。
2 中国では、一人当たりGDP が1万ドル以上の省市は、北京市・上海市に加えて、天津市、江蘇省、浙江省、福建省、広東省、遼寧省などがある。
外務省 (2016) 『海外在留邦人数調査統計:平成28年詳細版』
経済産業省(2016)『通商白書2016』
日本貿易振興機構(ジェトロ)による下記資料
北京スタイル(2011年3月)
ハノイスタイル(2016年10月)
ホーチミンスタイル(2016年10月)
デリー・ムンバイスタイル(2011年3月)
United Nations (2014), World Urbanization Prospects
United Nations (2016), The World’s Cities in 2016
The Brookings Institution (2016), Redefining Global Cities: The Seven Types of Global Metro Economies (Metropolitan Policy Program| 2016)
平賀 富一
研究・専門分野
(2017年08月15日「研究員の眼」)
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