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- マレーシア:11年連続で海外ロングステイ希望者の人気度トップ-その観光立国戦略からの示唆-
- 生活費(物価)の水準:高齢の退職者などが多いロングステイヤーにとっては、年金収入や自らの貯えで余裕をもって暮らせることが必要であるため、生活費の水準は非常に重要である。その一例として、2015年3月2日公表の英Economist Intelligence Unit(EIU)が「Worldwide Cost of Living 2015」(世界の131主要都市の生活費(生活コスト)のランキング)によれば、マレーシアの首都クアルンプールは90位であり、一方、首位シンガポール、5位シドニー、6位東京、61位バンコク等となっている。
- 長期滞在査証:上述のMM2Hビザは、配偶者と21歳未満の未婚の子供、60歳以上の両親を同行させる事が可能などとなっており、高齢者のみならず、子女教育を目的とする家族も含めた長期滞在希望者にとって魅力のある制度と考えられる。
- 気候の安定と自然災害の少なさ:マレーシアの年間の平均気温は30度前後で変化の幅が少なく、台風、洪水、地震などの自然災害が少ない。
- 治安・衛生面:マレーシアは、一人当たりGDP(国内総生産)が約1万ドルと中進国の水準に達しており、新興諸国の中では相対的に優れたレベルにある。
以上のように、短期間の観光であれば、世界的に著名な名所旧跡・見どころを見学・鑑賞し、アクティビティを経験し、普段食べたことがない料理を食べるなどといった大きな異国情緒が旅の経験や楽しみとなるが、ロングステイでの毎日の生活となると重視する要因も変わってくるわけであり、その中で、マレーシアが、各種のポイントで総合的に高く評価されていると言えよう。
3――観光立国としての戦略的な取り組み
マレーシアにおける観光業は、早くから国の発展に必要な重要産業としての位置づけを与えられ、成長産業・重点分野として推進体制の整備と施策の実行が進められてきた。米CNNテレビや英BBCなどのテレビ等各種の媒体で長期間コマーシャルメッセージとして放映されている「Malaysia Truly Asia」のキャッチコピーと音楽は知らず知らずのうちに親しみを覚えやすいものになっている。
このような取り組みの成果として、同国への外国人観光客数は、1998年の556万人が、2015年には2,572万人へと大きく増加しており、国別比較でも、図表-2(2015年実績)のとおり、世界で第14位、アジアでは中国、タイ、香港に次いで第4位の外国人観光客を受け入れている。この数字について、人口対比での観光客数をみると、マレーシアの外国人観光客数/人口の比は0.85(日本は0.16)となっており、人口3千万人のマレーシアの観光業が、同国の経済において重要なポジションを占めていることが分かる。
(本レポート中の写真はクアラルンプール:2017年5月筆者撮影)
平賀 富一
研究・専門分野
(2017年05月30日「基礎研レター」)
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