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- 福岡オフィス市場の現況と見通し(2017年)
4. 福岡の新規供給計画・人口見通し
福岡市は主要都市の中で最も築古ビルの多い都市であり(図表-14)、これまでは航空法の高さ規制と容積率規制等の問題から都心部での建て替えが進まなかったが、天神ビッグバンの規制緩和により、2020年以降には天神地区の大規模ビルの建替えが進むことで、街並みの大幅な更新が実現すると期待されている。
住民基本台帳人口移動報告によると、2016年の福岡市への転入超過数は7,287人で、20年にわたって高い転入超過数を維持している(図表-15)。転入超過数(日本人)を男女年齢別にみると、女性の20~24歳層の純流入の多さと、転入超過がほぼ全年齢にわたってみられるところに福岡市の特徴がある6(図表-16)。
人口の着実な純流入もあり、2015年の福岡市の人口は153万9千人で、国立社会保障・人口問題研究所の予測(149万9千人)の予測を上回った(図表-17)。今後、福岡市の人口の減少が本格化するのは2025年以降と予測されている。なお、2016年(10月1日)の推計人口は155万4千人で増加が続いている。
6 若年層での女性の転入超過数の突出とほぼ全年齢における転入超過は、他の主要都市では札幌市でもみられる特徴である。
5. 福岡のオフィス賃料見通し
福岡では、全国の主要都市でも有数の旺盛な需要の増加8と需要に比べて少ない新規供給のため、今後も成約賃料の上昇が見込まれる9(図表-18)。標準シナリオによると、オフィス賃料は2016年(下期、以下同じ)から2019年に+12.0%上昇(2016年下期比)した後に下落に転じ、2023年には同▲4.6%になるという結果が得られた。
当面の賃料のピークまでの上昇率は、楽観シナリオで+24.2%(2016年下期比)、悲観シナリオで同+3.8%で、2023年の賃料水準は楽観シナリオで同+7.8%、悲観シナリオで同▲16.9%だった。
7 ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2016~2026年度)」2016.10.14、斎藤太郎「2016~2018年度経済見通し~16年7-9月期GDP2次速報後改定」2016.12.8などを基に、今後の実質GDP成長率見通しを設定した。
8 三鬼商事によると2016年のビジネス地区における賃貸面積の増加は、大阪市で+4万2千坪、名古屋市で+1万9千坪、福岡市で+2万1千坪だった。
9 2015年下期から2016年下期までの過去一年間に成約賃料は+17.7%という大幅な上昇だったこともあり、今後の上昇率は次第に縮小すると予測された。
6. おわりに
現在、大規模ビルでは空室率が2.10%まで低下し、ほぼ満室状態にあることから、天神ビッグバン開発に伴うテナントの仮移転先の確保さえ確保が困難な状況にある。2017年から2019年までの三年間に竣工が予定されている大規模ビルは紙与博多中央ビル(2018年)のみのため、オフィス市況は当面、逼迫する状況が続く見通しである10。
その一方で、2020年以降になると、天神ビッグバンプロジェクトが本格化し、天神地区を中心に、新規の大規模ビルの供給が次々に始まると思われる。天神地区のオフィス機能の更新と新たな成長が期待されると同時に、オフィス市場での供給過剰の問題も出てくる恐れがある。その時期におけるオフィス需要の拡大のためにも、滑走路の増設計画が進む福岡空港11や博多港12との近接性を活用した国内外企業の誘致、既存産業の振興、IT・コンテンツ産業の創業・成長支援、インバウンド産業の取り込みの強化などとともに、都心部のさらなる賑わいづくりなどを通じた、都市全体の魅力作りに期待したい。また、福岡のオフィス市況の安定した成長のためには、築古ビルの建替えも含め、安定したオフィス供給が続くことが重要ではないかと思われる。
10 現在のオフィスビル需給の逼迫状況は、新規進出やオフィス拡張の機会を喪失させることで、福岡でのオフィス機能の高度化と成長のチャンスを毀損しはじめている可能性がある。とはいえ、過去を振り返ると、福岡のオフィス地区では、天神地区を中心にオフィスビルの建替えが困難(建替えると航空法の高さ規制と現行の容積率規制から延床面積を縮小せざるをえない)だったことが、築古大規模ビルの建替えとそれに伴う供給過剰を生じさせず、オフィス市況の安定した推移に寄与してきたというメリットもあったと考えられる。
11 滑走路の増設は2024年度の運行開始を予定している。九州地方整備局福岡空港整備推進室「福岡空港プロジェクト」等を参照のこと。
12 博多港ではクルーズ船受け入れ拡大のために中央埠頭整備計画を進めている。福岡市「博多港港湾計画書-改定-」(平成28年3月)等を参照のこと。
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竹内 一雅
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(2017年02月27日「不動産投資レポート」)
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