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- 大阪オフィス市場の現況と見通し(2017年)
4. 大阪の新規供給・人口見通し
住民基本台帳人口移動報告によると、2016年の大阪市の転入超過数は+8,846人と、2005年から12年連続で5千人を上回り、近年で最高水準の大幅な転入超過が続いている6(図表-14)。
転入超過数(日本人)を男女年齢別に見ると、15~29歳で大幅な純流入があり、この年齢層が大阪市の転入超過を支えている(図表-15)。同時に、30歳代と10歳未満の純流出の多さは、ファミリー層が大阪市内に定着せず、市外へ転出していることを示していると思われる。
国勢調査によると、大阪市の2015年の人口は269万2千人で、2010年と比べ+2万6千人の増加となった(図表-16)。国立社会保障・人口問題研究所によると、2015年の人口は266万4千人と予測されており、東日本大震災以降の転入超過数の増加などが、予測を上回る人口増加を達成させたと考えられる。なお、2016年の大阪市の推計人口も270万2千人と増加が続いている。
5 その他、スケジュール等は未確定であるが、うめきた2期地区の再開発や、梅田3丁目計画(大阪中央郵便局跡地開発)などでオフィスが供給される見込みである。
6 なお、大阪府では東日本大震災後の2012年に+5,381人まで転入超過数が増加したが、2016年には+404人に縮小している。また、大阪圏(大阪府,兵庫県,京都府,奈良県)では▲9,335人の転出超過だった。大阪圏主要都市の2016年の転入超過数は、京都市▲121人、大阪市+8,846人、堺市▲2,004人、神戸市▲550人と、大阪市以外は全てで転出超過となった(2015年は京都市で+917人の転入超過だった)。このように、人口面でみると大阪圏では大阪市への一極集中傾向にある。
5. 大阪のオフィス賃料見通し
大阪のオフィス賃料は需要の強さと、需要に対する供給の少なさから、当面、上昇が続くという予測された(図表-17)。標準シナリオによると、オフィス賃料は、2016年(下期、以下同じ)から2020年にかけて+15.0%上昇(2016年下期比)した後に下落が始まり、2023年には同+7.5%になるという結果が得られた。
当面の賃料のピークまでの上昇率は、楽観シナリオで23.5%(2016年下期比)、悲観シナリオで+7.9%で、2023年の賃料水準は楽観シナリオで+16.7%、悲観シナリオで▲1.0%だった。
6. おわりに
このように、当面、大阪では地区別や築年別、規模別などに存在する市況の二極化が緩和することが期待される。ただし、中長期的には大阪市でも人口の減少が予測されており、短期的にも世界的な政治・経済・社会面での不透明性の高まりが、市況に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。
近年、大阪のオフィスストックの伸びが新規供給量を大きく下回る状況が続いているが、これは、新たな新築オフィスビル建設のための取り壊しとともに、築古オフィスビルを中心としたホテルや住宅への建替え・コンバージョン(用途変更)などのための賃貸募集を停止するビルが多かった結果と考えられる。こうしたストック調整もまた、大阪オフィス市況の好調の一面を支えてきたのは間違いない。
大阪のオフィス市場全体としては好立地のオフィスビルのさらなる供給による業務機能と都市間競争力の強化が求められる一方で、競争力の低いビルの建替え・コンバージョンなどが、オフィス市況の改善や機能更新にとって重要であることも変わらないだろう8。競争力に課題のある築古の中小ビルなどのオーナーにとっても、オフィスビルとしての中長期的な生き残りへの見通しを踏まえた、ビルの魅力と競争力向上への努力や、ビルの最善の運用方法に関する検討を進めることが重要になっているのではないだろうか。大阪市の人口が増加し、利回りが低く、売買市況が堅調であることから、検討を進めるのに好適な時期が続いていると考えられる 9。
8 本稿の推計では、オフィスストックに対する賃貸募集の停止や取り壊しのペースはこれまでと同等と想定しており、過去と比べて募集停止・取り壊しの規模が拡大すればオフィス市況は予測よりも改善し、募集停止・取り壊し規模が縮小すればオフィス市況は予測よりも悪化する。
9 梅田1丁目1番地計画(大阪神ビルディング、新阪急ビル建替計画)に加え、時期は未定だが、うめきた2期地区や梅田3丁目計画(大阪中央郵便局跡地開発)など、今後も梅田地区における大規模オフィスの新規供給と業務機能の集中が見込まれる。このため、将来的には大阪のオフィス需要は再び、梅田に加え淀屋橋・本町、新大阪などの一部のオフィス地区とそれ以外の地区の間で二極化傾向が拡大する可能性が高いと思われる。
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竹内 一雅
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(2017年02月24日「不動産投資レポート」)
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