2016年10月31日

2016年7-9月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.1%)を予測

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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・民間設備投資~企業収益の悪化を受けて3四半期連続の減少

民間設備投資は前期比▲0.1%と3四半期連続の減少を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2016年4-6月期に前期比2.3%と5四半期ぶりに増加した後、7-9月期は同0.3%とほぼ横ばいとなった。一方、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2016年4-6月期に前期比▲9.2%と3四半期ぶりの減少となった後、2016年7、8月の平均は4-6月期を8.9%上回っている。

また、日銀短観2016年9月調査では、2016年度の設備投資計画(含むソフトウェア、除く土地投資額)が前年度比4.6%(全規模・全産業)となり、前年同時期の8.1%(2015年9月調査の2015年度計画)を大きく下回る伸びとなった。

円高や海外経済の減速を受けて企業収益は大きく悪化しており、2016年度の経常利益は2011年度以来5年ぶりの減益となることが予想される(法人企業統計ベース)。企業収益の悪化を主因として、設備投資は当面低調に推移する可能性が高い。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
・公的固定資本形成~3四半期ぶりの減少
公共工事請負金額、出来高の推移 公的固定資本形成は前期比▲0.1%と3四半期ぶりの減少を予測する。

公共工事の進捗を反映する公共工事出来高は2015年10-12月期以降、前年比▲5%程度の減少が続いている。一方、公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2016年1-3月期に前年比1.2%と7四半期ぶりの増加となった後、4-6月期が同4.0%、7-9月期が同6.8%と伸びを高めている。

2015年度補正予算、2016年度当初予算の前倒し執行が押し上げ要因となっているものの、7-9月期は工事の進捗がやや遅れた模様である。
・外需~成長率を大きく押し上げ
 
外需寄与度は前期比0.4%と2四半期ぶりのプラスとなるだろう。財貨・サービスの輸出が前期比2.0%の増加となる一方、国内需要の低迷を反映し財貨・サービスの輸入が前期比▲0.3%と4四半期連続のマイナスになると予想する。

7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比1.1%(4-6月期:同▲1.8%)、EU向けが前期比1.6%(4-6月期:同▲3.0%)、アジア向けが前期比1.6%(4-6月期:同▲1.1%)、全体では前期比1.0%(4-6月期:同▲0.1%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 7-9月期の輸出数量指数は3四半期ぶりのプラスとなったが、1-3月期、4-6月期のマイナスの後としては高い伸びとはいえず、引き続き横ばい圏の推移となっている。

なお、7-9月期のGDPベースの輸出が高めの伸びとなるのは、4-6月期の落ち込み(前期比▲1.5%)が大きかったことも影響している。4-6月期、7-9月期と均してみれば輸出数量指数と同様に一進一退の動きが続いていると判断される。

 
日本・月次GDP 予測結果
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年10月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

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