コラム
2016年09月06日

「ポケモンGO」と共生社会 -“共助”の道具「ルアー」がつくるコミュニティ

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

53784_ext_03_0.jpg

文字サイズ

『ポケモンGO』を始めてひと月半になる。ゲーム初心者の私にとって面白く感じられることは、ポケモンという仮想世界が現実世界に発展することだ。『ポケモンGO』は、各所のポケストップを訪れ、モンスターボールなどを集めてポケモンを捕えるゲームだが、ポケモンを引き寄せるためには「ルアーモジュール」という道具がとても役立つ。この道具を使ったポケストップでは、30分間に限りポケモンの出現が活発になるのだ。

ある夜、私は家の近くの公園で「ルアー」を使ってみた。すると次々にポケモンが飛び出してきた。最初はポケモンを捕まえることに夢中だったが、気づくとポケストップ周辺には大勢の人が集まっていた。「ルアー」が使用されているポケストップには花びらが舞い、それを見た他のプレイヤーたちがポケモンを求めて集まるのだ。「ルアー」は仮想世界のポケモンだけでなく、現実世界の人間をも引き寄せる力があるようだ。ポケモンを集めながら犬の散歩をする人同士の会話が始まるのも面白い。

『ポケモンGO』は人の外出を促し、交流機会を増やし、新たなコミュニティ形成の可能性を持つ。『ポケモンGO』は引きこもりの若者や高齢者の社会的孤立を防止する上でも有効ではないかと書いたところ、高齢者や障がい者など移動制約者の支援を行うNPO法人の方からメールをいただいた。東京の日比谷公園で障がい者と健常者がチームを組み、双方が電動車いすを使って『ポケモンGO』に挑戦、互いに楽しみながら交流と理解を深めて共生社会の実現を目指すイベントを実施するという。

『ポケモンGO』は家のなかに閉じこもりがちな人たちの外出を誘発する強い動機づけになるが、コミュニティを活性化するためには、さらなる交流の仕掛けが必要だ。『ポケモンGO』には個人だけでなくチームとして楽しむ機能やプレイヤー同士が交流する機能もあるそうだが、もっと発展させてゲームを超えた現実世界のなかで新たなコミュニティを形成する方法はないものだろうか。

『ポケモンGO』にはポケモンを引き寄せる道具として「ルアー」の他にもうひとつ「おこう」がある。「おこう」の効果は使用するプレイヤーに限定されるが、「ルアー」はポケストップ周辺のすべての人に有効だ。「おこう」は“自助”の道具、「ルアー」は“共助”の道具なのだ。「ルアー」の入手は難しいが、他のプレイヤーが使用するポケストップで、だれもがその恩恵に与ることができる。『ポケモンGO』の“共助”の道具「ルアー」が、現実世界のコミュニティづくりに寄与することは、今後のWin-Winの共生社会を構築する上で重要なヒントになるように思う。
 
60_ext_01_0.jpg

社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2016年09月06日「研究員の眼」)

レポート

アクセスランキング

【「ポケモンGO」と共生社会 -“共助”の道具「ルアー」がつくるコミュニティ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

「ポケモンGO」と共生社会 -“共助”の道具「ルアー」がつくるコミュニティのレポート Topへ