2016年09月07日

やっぱり返礼品が一番-ふるさと納税に関する現況調査結果より

基礎研REPORT(冊子版) 2016年9月号

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子

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1――はじめに

ふるさと納税に注目が集まり始めた2年前、ふるさと納税の実態把握に十分なほど、情報は公開されていなかった。しかし、2016年6月に、ふるさと納税の現状に関する詳細な情報(「ふるさと納税に関する現況調査結果」総務省)が公開された。今回はその中から、筆者が注目した点を紹介したい。

2――受入額が増えた理由は返礼品の充実が第一位

ふるさと納税枠の引き上げや、ふるさと納税ワンストップ特例制度が創設された平成27年度、ふるさと納税受入額は1,653億円となった。前年度389億円の4倍以上だ。ふるさと納税の受入額が増えた理由として、44.2%の自治体が「制度拡充」をあげている。しかし、「返礼品の充実」を理由にあげる自治体の方が56.9%と、はるかに多い。

与えられた効果(制度の拡充)よりも、自ら勝ち取った効果(返礼品の充実)を高く評価するといったバイアスがあるかもしれない。しかし、ほとんどの寄附者が返礼品目当てであることを、自治体の担当者は実感しているのだろう。

3――返礼品を送付する自治体は9割以上

返礼品を送付している自治体は全体の90.5%に及ぶ。2年前は、返礼品を送付している自治体は全体の50%程度だったので、この急増には驚きだ。

総務省のふるさと納税ポータルサイトでは、ふるさと納税の意義の1つとして、以下(抜粋)を掲げている。

自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。
それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。

こうした自治体間の競争に打ち勝つには、牛肉・海産物などの返礼品が必要不可欠というのが実態なのだろう。

4――返礼品の平均還元率は40%強

では、競争に打ち勝つ為に、自治体はどれくらいの経費をかけているのだろうか。そこで、ふるさと納税の募集や受け入れ等に伴う経費が、同年度のふるさと納税の受入額に占める割合を計算した。結果、返礼品の調達、送付に係る費用が40%を超えていた。つまり、ふるさと納税の還元率は平均40%ということだ。

2年前の平均還元率はわからないが、半分の自治体は返礼品を送付していなかったこと等から、平均還元率は30%に満たなかったはずだ。つまり、少なく見積もっても、この2年間で還元率が10%も上昇したことになる。
ふるさと納税受入額に占める経費率

5――ふるさと納税制度の実質予算は年間764億円

平成27年度におけるふるさと納税制度運営に係る実質予算は764億円だ(筆者試算)。ふるさと納税の受入額1,653億円のうち寄附者の負担は29億円程度に過ぎない。

ちなみに、一億総活躍推進室が公表する「平成28年度予算の概要」によると、「第一の矢:希望を生み出す強い経済」の為の主な予算合計が2,452億円、同じく「第二の矢:夢をつむぐ子育て支援」は8,864億円、「第三の矢:安心につながる社会保障」は1,240億円である。764億円は、決して瑣末な額ではない。

もちろん、プロジェクトは経費の大きさではなく、それによって生み出される便益との比較で評価されるべきだ。平成27年単年度で、少なくとも764億円の便益があったことを願いたい。
ふるさと納税の費用と負担

 
   第一の矢と第三の矢にまたがる年金生活者等支援臨時福祉給付金に係る予算は案分した。
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

経歴
  • 【職歴】
     1999年 日本生命保険相互会社入社
     2006年 ニッセイ基礎研究所へ
     2017年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2016年09月07日「基礎研マンスリー」)

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