コラム
2015年01月15日

医療保険の「体験記」

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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誰の話かはさておき、病気による入院の話をしよう。主に費用面の話である。
   人間ドックで「年も年だから、痛くならないうちに胆石をとったほうがいい。」との指導を受けた。そこで20xx年9月、あらかじめ休暇をとって、とある大学病院の消化器外科に入院した。入院初日に手術の説明や予備検査などを受け、2日めに胆嚢摘出手術を受けた。その後3日で退院したので、入院期間は5日間という短期間ですんだ。

退院の前日、概算として提示された入院費用は約22万円だった(健康保険は3割負担だから、総費用は70万円近いのだなと認識。)。ところが「健康保険組合の高額療養費制度が適用になるでしょうから、申請して、次回通院のときにもって来てください。」ということになり、1円も支払うことなく一旦は退院した。約一週間後の通院時に、会社の健康保険組合から入手した「健康保険限度額認定証」を提示すると、病院窓口での支払いは約15万円であった。

 発見1 健康保険は3割負担で済むだけでなく、さらに高額療養費制度という負担軽減の仕組みがある。また、金額は未定でも、あらかじめ入院・手術等が決まっている場合には、事前に「健康保険限度額認定証」を健康保険組合から入手しておき、提示すると、(自己負担額は変わらないが、)窓口で用意する現金は少なくて済む。

さて一方、これに対する生命保険契約である。元気なときには見向きもしないので、保険証券のありかすら不明ではあったが、なんとか捜し出して確認すると、主たる終身保険に、入院特約が「たまたま」ついていた。入院日額5000円である。以前、入院特約は「5日以上入院のとき、入院日数-4日分」しか支払われないタイプだったと記憶していたが、あらためて確認すると、「いつのまにか」入院1日目から支払われるタイプになっていた。
   そういえば、数年前「保険料は少しだけ上がるけど、特約を変更しなさい。」と保険会社にしつこく勧められて、毎月の支払いが数十円上がるのをしぶりながら、結局は変更したことを思い出した。その時に変更されたに違いない。

 発見2 自分の入っている保険や共済のタイプを、たまにはチェックしよう。
しばらく必要がないと、保険証券がみつからないかもしれない。また、勧められるまま加入したりしていて、保障内容を忘れているかもしれない。(なお、保険証券は次に述べる給付金請求の場面で一度も登場しなかった。会社に登録されているデータで問題なければ通常は不要なのかもしれない。また再発行して貰えるものなので心配ない。もっとも、最近の契約では、最初から保険証券そのものは発行されず、電磁的媒体のみであるケースもあるので、加入時の説明資料などを確認しておく必要があるだろう。)

さて、これを生命保険会社に請求するわけであるが、これにはいろいろなやりかたがあるようだ。職場によっては、保険会社の営業職員が定期的に訪問していて世話してくれるところもあるだろう。保険会社のホームページ上で書類を入手して郵送してもいいらしい。
   とはいえ、必要書類が今ひとつ不安だったので、保険会社の窓口に行ってみた。病気の種類や入院日数など一定の条件を満たす簡単なケースでは、所定の「請求書」、「領収証のコピー」、「治療内容報告書」さえあれば、医師の診断書がなくても請求できるようになっている。会社所定の必要書類はその場で貰える。諸事情により、後日あらためて、郵送で請求書類を送ることにはなったが、郵送後数日で給付金が振り込まれた。
   その金額は、日額5,000円の5日分で25,000円(疾病入院給付金という。)、そして入院しただけで5日分の給付(入院療養給付金という。)がついていて25,000円、そして手術給付金が10万円。合計15万円受け取ったので、経済的には持ち出しがなく済んだ。

 発見3 最近は比較的簡単な入院であれば、請求書類が簡素化されていて、取得に手間と時間と費用のかかる医師の診断書は必要ないケースも多いので、確認したい。

 発見4 請求すべき金額をすべて自己申告しなければならないと思っている方もいるかもしれないが、現在では、保険会社から、支払い漏れのないよう教えてくれるので心配はいらない(と思う、たぶん)。

ところがなんとしたことか、その2週間後、今度は「突発性難聴」ということで、同じ病院の耳鼻科に緊急入院することになってしまったのだった。こちらは8日間の入院中、点滴と検査だけで、手術はなく、費用は9万円だった。
   こんなインターバルの短い入院でも健康保険、生命保険は機能してくれるのだろうか?健康保険のほうは問題ない。生命保険の入院特約でいくらもらえるのかとみてみると、前回とは違って入院しただけででる入院療養給付金5万円はない。5,000円の8日分で4万円の給付金を受け取った。今回は赤字?

 発見5 180日以内の複数回入院は、理由はどうあれ1回としかカウントされないので、2回目の時には入院療養給付金はない。(たとえそれが消化器外科と耳鼻科でも!)

その後、実は会社の団体保険のほうにも入院給付がついているのが判明したり、健康保険組合に独自の付加給付があったりして、かかった入院費用はすべてまかなうことができた。「発見2」であげたように、こういう機会にいろいろチェックしたいものだ。

というわけで、筆者も今まで商品開発の立場では勉強していたはずではあるが、いざ給付金を受取る立場で経験してみると、健康保険の給付金も、民間の生命保険の入院の給付金も、よくわからずにいた部分も多かった。上の例の場合、胆嚢除去で総額約70万円のところ、健康保険制度も3割のみ負担と高額療養費給付、それに民間の医療保障をあわせ、家計への影響がほとんどなく済ませることができた。それも何十年も生命保険料、健康保険料を払い続けている結果なので、一概に損得は言えないが、相当充実した仕組みの中にいるという感覚である。

今回は個人的な、しかも簡単な例で終わることにする。
   しかし、俗に医療費が高いといわれている米国で、同じ状況にあったら、どういうことになっていたのだろうか。費用は?あるいはそもそも同じような治療を受けられるのだろうか。保険会社は迅速に給付金を支払ってくれるのだろうか?あるいは他の国では?などと考えることも可能であろう。
   日本で、医療にかかる費用をどこまで手厚く面倒みていくか、その時、健康保険の財政は?民間保険会社の役割は?などと考えるとき、諸外国のやり方が参考になったり、反面教師になったりすることもあろう。もちろん費用の問題はほんの一部で、医療技術の提供や薬品の問題など様々な問題が総合的に関連するものであろう。そうしたことにも興味を広げて勉強していきたいと考えている。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

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