コラム
2022年03月22日

昔に比べて暑くなった、のか?-気温等の「平年値」10年に1度の改定を理科年表で確かめる。

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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2022年版の理科年表が昨年12月に発行された。今回は気温などの「平年値」が最新のものに改められる10年に一度の年柄である。平年値とは、その時々の気温、降水量、日照時間など、あるいは冷夏、暖冬などの天候を評価する基準として利用されるものであり、他にも、梅雨入り、台風の発生・上陸数、生物季節観測(桜の開花日など)など、さまざまな種類がある。

こうした平年値は、過去30年の平均値とされており、10年毎に更新されている。前回(理科年表2021年度版)までは「1981年から2010年までの30年の平均値」が採用されていたが、今回の2022年版から「1991年から2020年までの平均値」に更新されている。

(なお、既に2021年5月19日から、気象庁においては新平年値の使用を開始しており、年1回12月発行の理科年表では、2022年版から新平年値が記載されたものである。その意味では少々古い話題ではあるが、なにせ10年毎の更新なので、ご容赦頂きたい。)

近年は「異常気象」という言葉が使われたり、自然災害が頻発したり、あるいは夏が異常に(昔に比べて)暑いことを実感したりすることが多い気がするが、実際どうなっているのか。ほんの一部ではあるが、変化を取り上げてみよう。
【表1 気温の月別平年値】
【表1】にあるように、東京では、月毎の気温の平均値が、各月上昇しており年平均で0.4℃、月別では3月、7月の+0.7℃ など平均気温はあきらかに上昇している。東京だけでなく、国内主要都市など80地点のデータがあるが、ざっとみたところでは同様の傾向のようだ。
【表2 日最高気温の月別平年値】
【表3 日最低気温の月別平年値】
【表2】で最高気温、【表3】で最低気温を見てみても、同様の傾向である。
 
しかし、実感としては「今日も最高気温は35℃だった!」と言うように、その時々の猛烈な暑さの印象が強いわけであり、そうでもない日も含む月平均値では、一瞬の猛暑のイメージがハッキリしないかもしれない。

では次のようなデータはどうだろう。
【表4 日最高気温・日最低気温の階級別年間日数の平年値】
東京のほかに、西日本から京都も並べてみた。「日最高気温が30℃以上の日数」が、東京で+5.7日、京都では+4.5日増えている。

日最高気温が25.0℃以上の日を夏日、30.0℃以上の日を真夏日と言うが、さらに2007年4月からは35℃以上を「猛暑日」として分離したので、2022年度版からそういう表示になっている。いずれまた(平均値で見るなら10年後?)35℃以上の日の増え方もわかるだろう。

ちなみに寒いほうも見てみると、日最低気温が0℃未満である「冬日」が逆に5日程度減っているので、冬も全体としては、昔ほど寒くなくなったのかもしれない。
 
「本当に、昔に比べて暑くなったといいきれるのか」といった評価にあたっては、厳密には統計学的な手法による評価が必要なのだろうが、上記のように素朴に比較してみた段階でも、徐々に暑くなって来ているのではなかろうか、と感じさせる。理科年表の中でも、「環境部」において、地球温暖化についてページを割いており、平均気温の上昇は間違いないところと思われる。
 
ちなみに、今はまさに桜の開花日が気になるところだが、上に挙げた平年値(東京)としては、3月26日から3月24日に2日早まっている。実際の開花日については、2021年は3月14日、2022年は3月20日との発表があったところである。今後さらに早まっていくのだろうか。

 
(表4につき、当初、理科年表中の記載事項に対する、筆者の理解が間違っておりましたので、修正したものを記載し直しております。)
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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年03月22日「研究員の眼」)

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