コラム
2015年05月15日

人類滅亡、12のシナリオ-オックスフォード大学等の公表したレポートより

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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長いゴールデンウィークも終わってしまい、会社や学校が再開して約1週間。そろそろエンジンがかかってきたという方も多いと思う。ところで、長い休みが終わり頃になると、また仕事(勉強)かと憂鬱となり、
   「明日会社(学校)が、いや、いっそのこと地球が滅んでしまえばいいのに!」
と一瞬思ったりしなかっただろうか。というわけで、今回は人類滅亡のリスクの話である。

今年2月中旬、「12Risks That Threaten Human Civilization」というレポートが公開された。直訳すると「文明を脅かす12のリスク」となり、報道などでは、「人類滅亡、12のシナリオ」などと紹介されているようだ。滅亡とまで言っていいのか気になる項目もあるが。

このレポート作成に携わったのは、英国のオックスフォード大学やその傘下のフューチャーヒューマニティ研究所の科学者、スウェーデンにあるグローバルチャレンジ財団、そしてその他金融・経済の専門家(ちなみに再保険会社のアクチュアリーもメンバーに名を連ねている)、などの錚々たるメンバーである。われわれが、時々酒場で酔っ払ってする話とは少し、いや大きく違うのである。

早速、その12のリスクとは…。

【現在進行中のリスク】
 1.極端な気候変化
    地球温暖化など極端な気候の変化が、飢餓を生み、社会崩壊による移民の増加をもたらすなど。
 2.核戦争
    20世紀における米国対ソ連のような全面核戦争の可能性は低くなっているが、その他の突発的なものも含め、可能性は無視できない。
 3.世界規模のパンデミック
    衛生状態の改善や個々の研究は進歩している反面、人の往来の激しさ、速さは増しており、可能性が高まっている。
 4.生態系の崩壊
    環境汚染による生態系の破壊により、生物種が絶滅する速さが増す。
 5.国際的なシステムの崩壊
    世界経済がグローバル化して、経済危機や貧富の拡大が起こりやすくなり、大きな社会混乱や無法状態をもたらす可能性がある。

【外因的なリスク】
 6.巨大隕石の衝突
    隕石の衝突地域が全滅しうることに加え、生じる塵が地球を覆い、寒冷化や生態系の破壊をもたらす。
 7.大規模な火山噴火
    隕石や核戦争と同様、塵による日光遮断と寒冷化、それが飢餓や政治的混乱を引き起こす。

【新たなリスク】
 8.合成生物学
    人工的な病原体の生成など。ゲームや映画で目にする「バイオハザード」の世界。
 9.ナノテクノロジー
    ナノテクが小型核兵器などの開発に転用される可能性がある。
10.人工知能
    人間による制御が不可能になった、人工知能独裁者や膨大なロボットの出現。映画「ターミネーター」などの世界。
11.その他の全く未知の可能性

【国際政治のリスク】
12.政治の失敗による国際的影響
    何か上記のような問題が発生した際、まずはその国の政治が適切に対処しないと、問題を世界全体に拡げ、さらに悪化させることになる。

ほかにもあるだろう、と思ってみていると、上記11.未知の可能性、の一例として
「人類を不妊にする超汚染物質の開発」
「人工ブラックホールが開発され、地球を飲み込むこと」
「動物実験により人類を超える知能をもつ生物が出現」
「誰かが地球外生命(ET)にコンタクトし、危険な異星人(エイリアン)の注意を呼び寄せること」
が、挙げてあった。過去には「ばかげている」と考えられていたことが現実の脅威となっているケースもあるので、どんな可能性も否定できないとのことである。

機会あれば、上記ひとつひとつについて、レポートの内容を紹介したいところではあるが、どこかで一度は耳にしたような話と思われるので、これだけでもおおよその見当はつくのではないか。

このあとレポートは、それぞれのリスクの関連性や、リスクを軽減できる可能性などについて述べている。例えば12.政治の失敗 については、人間のやることであって、防いだり、各国が協力したりすることも比較的易しいと評価している。また、隕石、噴火などは防ぎようがないが、被害を少なくすることはできるかもしれない。もっとも厄介なのが、少し意外ではあるが、10.人工知能で、いったん暴れだしたら、もう生身の人間には止められないからということになっている。

このレポートの本質的な狙いは、行動と対話を促すことにあるとのこと。さらに具体的に言えば、(1)各種リスクの知識を得ること、(2)対応策に向けた奮起を促すこと、(3)国どうしや企業どうしなどの異なるグループをつなぎ協力を促すこと、(4)できれば実際の対策を伝えること、とされている。

最後にこれらのリスクに対峙するために、以下の10項目が示されている。
       1.世界規模のリーダーシップ・ネットワークを構築すること
       2.より良いリスク査定能力を育てること
       3.危機探知システムを構築すること
       4.極度に複雑な社会システムを視覚化すること
       5.リスクを減らす正しい方策を強調して伝えること
       6.あらゆる可能性に注意を向けること
       7.大きなリスクに対する関心を高めること
       8.大きなリスクに対しては、適切な言語で説明を明記すること
       9.地球規模のリスクに対する指標を政府が確立すること
      10.世界リスク機構といったものの設立の可能性を探ること

12項目のリスクのほうは、個人や企業ではどうにもならないものもあろう。一方、対応の考え方10項目については、少しスケールを小さくして、自分あるいは会社などの通常のリスク管理(特にエマージングリスク)にあてはめて考えれば、何かヒントにもなることがあるのではないかと思う。


 

(2015年05月15日「研究員の眼」)

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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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