2021年09月10日

欧州経済見通し-コロナ禍のなか経済活動正常化を進める欧州

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
 
  1. 昨年春以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けてきた欧州経済だが、最近は経済活動の正常化が進展している。EUのワクチン接種は8月に「夏の終わりまでに成人の7割が接種を完了する」という目標を達成した。
     
  2. 4-6月期の経済成長率は行動制限の緩和により2四半期連続でのマイナス成長から急反発し実質GDPの水準はコロナ禍後のピーク(20年7-9月期)を上回った。コロナ禍からの回復ではスペインが遅れている。また、ドイツでは半導体などの部品や原材料不足による供給制約も生産活動の重しになっている。
     
  3. 7月以降、ワクチン普及やワクチン接種証明書の活用により、経済正常化の動きは本格化している。ただし、回復はまだ道半ばであり、コロナ禍前の状況と比べれば対面サービス産業の活動水準は以前として低い水準にあると見られる。
     
  4. 先行きについては、景況感が良好でワクチン普及で経済の感染症への耐性も増していることから、消費を中心にさらに経済回復が進むだろう。ワクチン接種証明書の活用も正常化への動きを後押しする材料となる。一方で、製造業では供給制約による生産活動の伸び悩みが当面の間続くとみられる。
     
  5. ユーロ圏の経済成長率は21年4.6%、22年4.0%を予想している(図表1・2)。
     
  6. 先行きの不確実性は依然として高く、変異株を含む感染拡大で経済活動をせざるを得ないリスクは残る。また、域外での感染拡大や行動制限の強化、財需要の拡大などにより部品・原材料不足が長期化、悪化する可能性もある。さらに、ペントアップ需要の大きさが不透明であることも経済の回復力の不確実性となるだろう。
(図表1)ユーロ圏の実質GDP/(図表2)ユーロ圏の物価・金利・失業率見通し
■目次

1.欧州経済概況
  ・振り返り:コロナ禍とワクチン普及
  ・振り返り:4-6月の期成長率は前期比+2.2%、2四半期連続のマイナスから急反発
  ・現状:7月以降の状況
  ・財政:復興基金は初回資金配分が開始
2.欧州経済の見通し
  ・見通し:短期的にはペントアップ需要と供給制約が焦点
  ・見通し:ポイント
3.物価・金融政策・長期金利の見通し
  ・見通し:インフレ率急上昇は一時的
  ・見通し:金融政策正常化は段階的に行われると予想
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伊藤 さゆり (いとう さゆり)

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