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2025年10月20日

家計消費の動向(単身世帯:~2025年8月)-外食抑制と娯楽維持、単身世帯でも「メリハリ消費」の傾向

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 単身世帯は全体の約4割を占めて消費全体への影響力が強まっている。総務省「消費動向指数」にて単身世帯と二人以上世帯の消費動向を見ると、2022年頃から推移パターンに差が表れており、物価上昇局面において単身世帯の方が二人以上世帯に比べて消費抑制の動きが弱かった。ただし、2025年に入って以降は、二人以上世帯が緩やかに改善傾向を示す一方、単身世帯ではやや弱含みで推移している。
     
  • 単身世帯で消費抑制傾向が弱い要因としては、(1)固定費が多く、節約の余地が限られていること、(2)物価上昇局面で可処分所得の減少幅が小さいことなどがあげられる。実際に勤労者世帯の可処分所得(対2020年の実質増減率)を見ると、単身世帯では2021~2022年に増加したが、2023年以降は減少に転じた。一方、二人以上世帯では2021年以降、減少傾向が続いている。ただし、2024年には両世帯とも減少率が縮小した。
     
  • 消費内訳を見ると、二人以上世帯では「食料」や「家具・家事用品」といった生活必需品の支出が減少傾向にあるのに対し、単身世帯ではおおむね横ばいで推移してきた。ただし、2025年に入って以降は単身世帯でも「食料」、特に外食の抑制が顕著となっている。一方、「教養娯楽」や「交通・通信」は両世帯とも横ばい傾向が続いており、単身世帯では教養娯楽費の比重が12%程度と、二人以上世帯(10%未満)より高い。
     
  • こうした動きは、二人以上世帯で見られる「メリハリ消費」と方向性は共通している。ただし、単身世帯では固定費比率の高さから生活必需品の節約余地が限られており、外食という調整しやすい項目での抑制が中心となっている点が特徴的である。単身世帯は今後も増加が見込まれ、固定費を抱えつつも外食や娯楽など調整しやすい支出を多く持つ家計構造が、消費市場全体の動向を左右する一因となる可能性がある。


■目次

1――はじめに~実質賃金の改善と消費の底堅さ、4割を占める単身世帯の動向は?
2――単身世帯の消費~抑制は緩やか、外食抑制と娯楽支出の維持が特徴
  1|全体の状況~単身世帯では抑制傾向が緩やか、固定費比率の高さが背景に
  2|消費内訳の状況~外食抑制による食費減少、娯楽支出は底堅く推移
3――まとめ~外食抑制と娯楽維持、単身世帯でも「メリハリ消費」の傾向

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月20日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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