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- 家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年5月)-物価高でも、旅行・レジャー・デジタルなど楽しみへの消費は堅調
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2025年07月18日
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1――はじめに~実質賃金は5カ月連続減少だが、消費は底堅く推移、2025年5月はコロナ禍前の水準へ
個人消費は緩やかな改善傾向が続いており、2025年4月の水準はコロナ禍前の2020年2月とほぼ同程度まで回復している(図表1)。一方で、引続き、賃金の上昇を上回るペースで消費者物価が上昇していることから、実質賃金は減少傾向にある(図表2)。2025年5月の実質賃金(速報値)は、消費者物価指数のうち、持ち家の帰属家賃を除く総合指数で計算した従来値では前年同月比▲2.9%、総合指数で計算した値では同▲2.4%となり、いずれも5カ月連続で前年を下回っている。
昨年は、実質賃金がプラスに転じた時期もあったが、消費の回復は鈍く、消費者は慎重な姿勢を崩さなかった。すなわち、目先の収入増加に安易に反応するのではなく、支出を控える傾向が続いていた。こうした消費行動が土台にあることで、実質賃金の減少が続く中でも、個人消費は賃金と連動せずに底堅く推移していると考えられる。
こうした状況を踏まえ、本稿では、総務省「家計調査」を基に、コロナ禍以降2025年5月までの二人以上世帯(世帯の過半数)の消費動向について分析する。
昨年は、実質賃金がプラスに転じた時期もあったが、消費の回復は鈍く、消費者は慎重な姿勢を崩さなかった。すなわち、目先の収入増加に安易に反応するのではなく、支出を控える傾向が続いていた。こうした消費行動が土台にあることで、実質賃金の減少が続く中でも、個人消費は賃金と連動せずに底堅く推移していると考えられる。
こうした状況を踏まえ、本稿では、総務省「家計調査」を基に、コロナ禍以降2025年5月までの二人以上世帯(世帯の過半数)の消費動向について分析する。
2――二人以上世帯の消費支出の概観~生活必需品を抑え、娯楽は維持
まず、二人以上世帯の消費支出全体と、その内訳として大分類で示される費目の状況を確認する。
二人以上世帯の「世帯消費動向指数1(2020年の二人以上世帯の消費支出=100とした指数)」を見ると、世帯あたりの消費支出は2023年頃までは減少傾向にあったが、2024年以降は緩やかに持ち直している(図表3(a))。この動きは、図表1に示した総消費動向指数と比べると、回復の勢いに欠けるようだが、両者の集計範囲に違いがある点に留意が必要である。総消費動向指数は、二人以上世帯に加えて単身世帯なども含めた全世帯の消費支出総額(GDP統計の家計最終消費支出に相当)を対象としているが、図表2は二人以上世帯のみの動向を見たものである。
よって、二人以上世帯の(世帯当たりの)消費支出は、単身世帯と比べてやや抑制的ということになる。これは、前稿2で述べたように、二人以上世帯では家賃などの固定費の占める割合が相対的に低いため、物価高が続く中で節約可能な支出の余地が大きいことが影響していると考えられる。
二人以上世帯の「世帯消費動向指数1(2020年の二人以上世帯の消費支出=100とした指数)」を見ると、世帯あたりの消費支出は2023年頃までは減少傾向にあったが、2024年以降は緩やかに持ち直している(図表3(a))。この動きは、図表1に示した総消費動向指数と比べると、回復の勢いに欠けるようだが、両者の集計範囲に違いがある点に留意が必要である。総消費動向指数は、二人以上世帯に加えて単身世帯なども含めた全世帯の消費支出総額(GDP統計の家計最終消費支出に相当)を対象としているが、図表2は二人以上世帯のみの動向を見たものである。
よって、二人以上世帯の(世帯当たりの)消費支出は、単身世帯と比べてやや抑制的ということになる。これは、前稿2で述べたように、二人以上世帯では家賃などの固定費の占める割合が相対的に低いため、物価高が続く中で節約可能な支出の余地が大きいことが影響していると考えられる。
二人以上世帯の消費支出の内訳を見ると、2020年以降、減少傾向が続いているのは「食料」であり、「家具・家事用品」や「住居」もやや減少傾向にある。一方で、「交通・通信」は増加傾向が続いており、「教養娯楽」は2023年初頭までは増加が見られたが、その後はおおむね横ばいで推移している。
こうした動きには、コロナ禍が収束し消費行動が平常化する一方で、物価高で実質的な可処分所得が目減りしている中で、消費者が支出先を選択している様子が表れている。すなわち、食料や日用品といった日常的な支出を抑える一方で、旅行やレジャーなどの娯楽的な支出や、それに関連する支出は可能な限り維持しようとする様子がうかがえる。
次節では、大まかな分類では見えにくい変化を捉えるため、景気や消費動向に比較的影響を受けやすい主な個別費目に注目する。
1 「家計調査」「家計消費状況調査」「家計消費単身モニター調査」を合成して得られた消費支出を元に、基準年(2020年)を100とする指数。2020年1月以降の値が公表されている。
2 久我尚子「家計消費の動向(単身世帯の比較:~2025年3月)節約余地が小さく、二人以上世帯と比べて弱い消費抑制傾
向」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2025/6/6)など。
こうした動きには、コロナ禍が収束し消費行動が平常化する一方で、物価高で実質的な可処分所得が目減りしている中で、消費者が支出先を選択している様子が表れている。すなわち、食料や日用品といった日常的な支出を抑える一方で、旅行やレジャーなどの娯楽的な支出や、それに関連する支出は可能な限り維持しようとする様子がうかがえる。
次節では、大まかな分類では見えにくい変化を捉えるため、景気や消費動向に比較的影響を受けやすい主な個別費目に注目する。
1 「家計調査」「家計消費状況調査」「家計消費単身モニター調査」を合成して得られた消費支出を元に、基準年(2020年)を100とする指数。2020年1月以降の値が公表されている。
2 久我尚子「家計消費の動向(単身世帯の比較:~2025年3月)節約余地が小さく、二人以上世帯と比べて弱い消費抑制傾
向」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2025/6/6)など。
(2025年07月18日「基礎研レポート」)
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03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/07/18 | 家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年5月)-物価高でも、旅行・レジャー・デジタルなど楽しみへの消費は堅調 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/12 | 増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向(単身世帯の比較:~2025年3月)-節約余地が小さく、二人以上世帯と比べて弱い消費抑制傾向 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
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