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2025年07月14日

ロシアの物価状況(25年6月)-6月は総合指数・コア指数のいずれも低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比で総合指数、コア指数のいずれも低下、前月比でも減速

7月11日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(25年6月)】
前年同月比は9.40%、市場予想1(9.40%)よりと一致、前月(9.88%)から低下した(図表1)
前月比は0.20%、市場予想(0.23%)よりやや下振れ、前月(0.43%)から減速した

【コア指数2(25年6月)】
前年同月比は8.70%、前月(8.94%)から低下した(図表2)
前月比は0.36%、前月(0.60%)から減速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:7月は公共料金の引き上げでサービスインフレが急上昇

6月のロシアのインフレ率は前年比で9.40%となり、5月(9.88%)から低下、3月(10.34%)をピークに3か月連続で低下した。

インフレ率を大分類別に見ると、6月の前年比伸び率は食料品が11.91%(前月:12.49%)、財(非食料品)が4.47%(前月:4.81%)、サービスが12.02%(前月:12.55%)となり、いずれの大分類でも低下した。

前年比寄与度では食料品が4.6%ポイント程度、財(非食料品)が1.5%ポイント程度、サービスが3.3%ポイント程度と見られる(図表1)。

6月の前月比伸び率は、総合指数で0.20%、コア指数で0.36%といずれも大幅に低下、総合指数はコロナ禍前の標準的な上昇率を下回り、コア指数もコロナ禍前の標準的な上昇率程度となった(2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。

前月比伸び率を大分類で見ると食料品が0.11%(前月:0.26%)、財(非食料品)が▲0.03%(前月:▲0.13%)、サービスが0.59%(前月:1.34%)となった。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、最新の7月7日時点において、前週比で0.79%と急上昇している(図表4)。7月は公共料金の引き上げが実施されており、サービスインフレが加速したことが全体のインフレを押し上げた。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、6月は13.0%で、実際のインフレ率と同様に低下した。ただし、これまで過去の傾向(期待インフレ率≒前年比インフレ率+6%、図表5)と比較すると、期待インフレ率と実際のインフレ率との乖離が拡大している状況は続いている(期待インフレ率がやや低め)。
品目別の上昇率を見ると3(図表6)、6月は前年比でバター(26.29%)、魚・海鮮(21.16%)、乳製品(17.66%)、旅客サービス(17.34%)の伸び率が高い一方、卵(▲21.17%)、テレビ(▲7.43)、グラニュー糖(▲3.24%)は前年比でもマイナスとなった。また、前月比では、海外旅行サービス(3.20%)の上昇率が相対的に大きい一方、卵(▲8.64%)、テレビ(▲2.22%)、青果物(▲1.88%)、電化製品(▲1.42%)、グラニュー糖(▲1.40%)は下落幅が大きかった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.14%ポイント)、青果物(0.78%ポイント)、下落率への寄与が大きい品目は卵(▲0.13%ポイント)だった。

前月比上昇率の寄与では、その他サービス(約0.07%ポイント)、アルコール飲料(約0.04%ポイント)のプラス寄与が相対的に高い一方、青果物(約▲0.10%ポイント)、卵(約▲0.05%ポイント)はマイナス寄与が大きく、また下落品目も多かった。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む5月の上昇率寄与を見ると、前年比では概ね6月と同様の傾向が見て取れる(図表9・10)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。健康増進サービスおよび残差から算出されたその他サービスは前月比のみ。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月14日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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