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2025年06月02日

ブラジルGDP(2025年1-3月期)-農業が成長をけん引し前期比1.4%

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比1.4%に加速、前年比は2.9%

5月30日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2025年1-3月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は2.9%、市場予想1(3.1%)を下回り、前期(3.6%)から低下した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は1.4%、予想(1.5%)を下回ったが、前期(0.2%)から加速した。

(図表1)ブラジルの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ブラジルの実質GDP成長率(産業別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:農業が成長をけん引

25年1-3月期の実質GDP伸び率は前期比1.4%(季節調整値、年率換算5.7%)となり、前期(前期比0.1%、年率換算0.2%)から大幅に加速した。コロナ禍前(19年10-12月期)比では12.6%だった(図表4・5)。また、伸びのトレンドが掴みやすい前年比では2.9%と、前期(3.6%)から伸び率が低下した。ただし潜在成長率と見られる2%台半ばを依然として上回っている。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が1.0%(前期:▲0.9%)、政府消費が0.1%(前期:0.5%)、投資が3.1%(前期:0.7%)、輸出が2.9%(前期:▲1.2%)、輸入が5.9%(前期:0.7%)となった。個人消費がプラスに回復したほか、投資や輸出も大きく伸びた。

コロナ禍前との対比では、個人消費が11.2%、政府消費が9.4%、投資が25.6%、輸出が21.5%、輸入が29.7%だった(図表4)。
(図表3)業種別のGDP伸び率
(図表4)ブラジルの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ブラジルの実質GDPの動向(供給項目別)
産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3・5)、第一次産業は前期比12.2%(前期:▲4.4%)、第二次産業は同▲0.1%(前期:0.2%)、第三次産業は同0.3%(前期:0.2%)となり、特に第一次産業が大豆の豊作にけん引する形で大幅に伸びた。一方、第二次産業の低迷業種は利上げによって停滞感が強まったと見られる。

より細かい業種では、第二次産業の製造業(前期比▲1.0%)、建設業(同▲0.8%)のマイナスが目立つ一方、第二次産業の鉱業(同2.1%)、電気・ガス(同1.5%)、第三次産業の情報・通信(同3.0%)が高めの伸びを記録している(図表3)。
(図表6)ブラジルの輸出入物価と交易利得 1-3月期の名目成長率は前年同期比9.7%(前期:7.5%)に上昇した。その結果、名目と実質成長率の差(デフレータに相当)が6.8%(前期:3.9%)と大幅に加速した。なお、消費者物価指数(IPCA)の上昇率は1月(4.6%)を底に2月以降は再び5%台まで加速、中銀目標(3±1.5%)の上限は4月まで7か月連続で超過している。ブラジル中銀は直近5月会合まで6会合連続となる利上げを実施している(合計4.25%ポイント引き上げ)。

輸出デフレータと輸入デフレータはいずれも前年比で伸び率が拡大するなか、輸入物価の伸びが輸入物価を大きく上回ったため、交易利得は前期に比べて縮小した(図表6)。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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