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- Appleに対する再差止命令と刑事立件の可能性-アンチステアリング条項
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2025年05月28日
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■要旨
2024年1月17日、AppleはEpicとの訴訟の結果、自社のアプリストアにおけるステアリング(=外部サイトでのアイテム購入へ誘導すること)を制限する契約上の取扱い(=アンチステアリング条項)を禁止する差止命令が、裁判所によって出された。
これにともない、Appleはリンクアウト購入(=外部サイトでアイテムを購入すること)を容認するにあたって、(1)27%の手数料をアプリ事業者に課すこと、および (2)ボタン設置など誘導を容易にすることを禁止し、かつ誘導にあたって、脅迫的な警告文言を利用者に表示することなどを定めた。
本訴はEpicが、上記Appleのリンクアウト購入の取扱いは差止命令違反であるとし、差止命令を執行すべきこと、及び民事侮辱制裁(civil contempt)の適用を求めて訴えた訴訟の判決である。
2025年4月30日に下された連邦地裁の判決ではEpicの訴えを概ね認め、Appleに対して(1)購入手数料を徴収してはならないこと、(2)ボタン設置等についての制限や脅迫的な警告文言を用いてはならないことを命じた。
他方、民事侮辱制裁に関してはEpicが実損を主張していないとして認めなかった。ただ、Appleの差止命令違反および裁判における偽証が、刑事手続きとしての法廷侮辱罪に該当するおそれがあるとして検察に案件を送致することした。
アンチステアリング条項については日(スマホ競争促進法)・EU(Digital Market Act)が法令によってペナルティをもって禁止している。米国は判例であるが、日・EU同様に、アンチステアリングの禁止に従わない場合はペナルティを受ける可能性があることなったため、日・EU・米で規制が揃ったと言える。
■目次
1――はじめに
2――当初の差止命令とAppleの対応
1|差止命令のもととなる判示(差止命令に係る判決)
2|差止命令の内容
3|Appleの遵守通知
4|Epicによる差止命令の執行と証拠尋問の申立
5|コメント
3――Appleの対応の詳細
1|リンクアウト購入に対する27%の手数料
2|リンクの配置とデザイン等
4――Apple申立てに関する判断
1|Appleによる判決破棄申立て
2|Epicによる差止執行申立て
3|弁護士特権に関する紛争
4|コメント
5――救済と制裁
1|差止命令
2|制裁
3|コメント
6――おわりに
2024年1月17日、AppleはEpicとの訴訟の結果、自社のアプリストアにおけるステアリング(=外部サイトでのアイテム購入へ誘導すること)を制限する契約上の取扱い(=アンチステアリング条項)を禁止する差止命令が、裁判所によって出された。
これにともない、Appleはリンクアウト購入(=外部サイトでアイテムを購入すること)を容認するにあたって、(1)27%の手数料をアプリ事業者に課すこと、および (2)ボタン設置など誘導を容易にすることを禁止し、かつ誘導にあたって、脅迫的な警告文言を利用者に表示することなどを定めた。
本訴はEpicが、上記Appleのリンクアウト購入の取扱いは差止命令違反であるとし、差止命令を執行すべきこと、及び民事侮辱制裁(civil contempt)の適用を求めて訴えた訴訟の判決である。
2025年4月30日に下された連邦地裁の判決ではEpicの訴えを概ね認め、Appleに対して(1)購入手数料を徴収してはならないこと、(2)ボタン設置等についての制限や脅迫的な警告文言を用いてはならないことを命じた。
他方、民事侮辱制裁に関してはEpicが実損を主張していないとして認めなかった。ただ、Appleの差止命令違反および裁判における偽証が、刑事手続きとしての法廷侮辱罪に該当するおそれがあるとして検察に案件を送致することした。
アンチステアリング条項については日(スマホ競争促進法)・EU(Digital Market Act)が法令によってペナルティをもって禁止している。米国は判例であるが、日・EU同様に、アンチステアリングの禁止に従わない場合はペナルティを受ける可能性があることなったため、日・EU・米で規制が揃ったと言える。
■目次
1――はじめに
2――当初の差止命令とAppleの対応
1|差止命令のもととなる判示(差止命令に係る判決)
2|差止命令の内容
3|Appleの遵守通知
4|Epicによる差止命令の執行と証拠尋問の申立
5|コメント
3――Appleの対応の詳細
1|リンクアウト購入に対する27%の手数料
2|リンクの配置とデザイン等
4――Apple申立てに関する判断
1|Appleによる判決破棄申立て
2|Epicによる差止執行申立て
3|弁護士特権に関する紛争
4|コメント
5――救済と制裁
1|差止命令
2|制裁
3|コメント
6――おわりに
(2025年05月28日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/28 | Appleに対する再差止命令と刑事立件の可能性-アンチステアリング条項 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/05/23 | 特定大規模乗合保険募集人制度導入等に係る保険業法改正 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/05/14 | 米でのGoogle広告訴訟判決-オープンウェブ・ディスプレイ広告における独占認定 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/05/09 | Google等を情プラ法で指定-SNS上の権利侵害投稿に関する削除要請への対応 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
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