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- Appleのデジタル市場法違反-欧州委員会による暫定的見解
コラム
2024年07月04日
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2024年6月24日、欧州委員会はAppleとアプリ事業者との間で締結される契約条項がデジタル市場法(Digital Markets Act)違反であるとの暫定的見解を、同日付でAppleに送付したとのプレスリリースを出した。
問題とされているのは、いわゆるアンチステアリング条項と呼ばれるものである。これはたとえばアプリ事業者の音楽ストリーミングアプリをAppleのアプリストア(App Store)でダウンロードした場合における問題である。この場合において、アプリ事業者の運営するApple外のサイトで楽曲をより安価にダウンロードできるにもかかわらず、当該外部サイトにアプリ内で誘導(ステア)することを禁止するといった契約条項を指す。このような条項はデジタル市場法5条4項に違反することとされている1。
ちなみにAppleは以前、ステアリングを全く認めていなかったが、デジタル市場法施行にあわせて一部ステアリングができるように契約条項を修正した。しかし、欧州委員会はAppleの修正では規則違反は十分解消されていないと判断したということである。
具体的に問題視されたAppleの契約条項は以下の3点である。
(1) 外部サイトへ誘導することは一部例外を除き禁止されている。特に、アプリ内で外部サイトでの購入価格表示ができないことが挙げられる。
(2) 外部サイトへ誘導することが可能になるのは、リンクアウト(link-outs)というAppleの用意した制度に従わなければならない。しかし、この制度にはいくつかの制約があり、実質的に外部サイトへ誘導することが困難である。
(3) さらにリンクアウトを利用した顧客が7日以内に楽曲等を購入した場合には、アプリ事業者はAppleに手数料を払わなければならないが、この手数料は課すことの合理性を欠く。
Appleはこの暫定的見解に反論することができるが、暫定的見解が正しいと確認されれば、欧州委員会は調査開始日である2024年3月25日から12カ月以内に不遵守決定を行う。不遵守決定がなされると原則として世界の売上高の10%の制裁金が課されることとなる。
また、本プレスリリースでは、欧州委員会はAppleが新たに導入した以下の3つの項目について調査を開始するとした。
1) アプリ事業者のアプリそのものがダウンロードされるたびに、アプリ事業者は€0.5をApple Core Technology Fee としてAppleに支払うこととされていること、
2) 外部サイトからユーザーがダウンロードする際に、ユーザーが取らなければならない手順、
3) 外部サイトに誘導できるアプリ事業者の資格を限定していること、である。
ところで、先ごろ成立した日本のスマートフォン競争促進法8条2号では以下の定めがある。これはアンチステアリング条項を違法とする規定である。
1 デジタル市場法については、基礎研レポート「EUのデジタル市場法の公布・施行」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72386?site=nli 参照。
問題とされているのは、いわゆるアンチステアリング条項と呼ばれるものである。これはたとえばアプリ事業者の音楽ストリーミングアプリをAppleのアプリストア(App Store)でダウンロードした場合における問題である。この場合において、アプリ事業者の運営するApple外のサイトで楽曲をより安価にダウンロードできるにもかかわらず、当該外部サイトにアプリ内で誘導(ステア)することを禁止するといった契約条項を指す。このような条項はデジタル市場法5条4項に違反することとされている1。
ちなみにAppleは以前、ステアリングを全く認めていなかったが、デジタル市場法施行にあわせて一部ステアリングができるように契約条項を修正した。しかし、欧州委員会はAppleの修正では規則違反は十分解消されていないと判断したということである。
具体的に問題視されたAppleの契約条項は以下の3点である。
(1) 外部サイトへ誘導することは一部例外を除き禁止されている。特に、アプリ内で外部サイトでの購入価格表示ができないことが挙げられる。
(2) 外部サイトへ誘導することが可能になるのは、リンクアウト(link-outs)というAppleの用意した制度に従わなければならない。しかし、この制度にはいくつかの制約があり、実質的に外部サイトへ誘導することが困難である。
(3) さらにリンクアウトを利用した顧客が7日以内に楽曲等を購入した場合には、アプリ事業者はAppleに手数料を払わなければならないが、この手数料は課すことの合理性を欠く。
Appleはこの暫定的見解に反論することができるが、暫定的見解が正しいと確認されれば、欧州委員会は調査開始日である2024年3月25日から12カ月以内に不遵守決定を行う。不遵守決定がなされると原則として世界の売上高の10%の制裁金が課されることとなる。
また、本プレスリリースでは、欧州委員会はAppleが新たに導入した以下の3つの項目について調査を開始するとした。
1) アプリ事業者のアプリそのものがダウンロードされるたびに、アプリ事業者は€0.5をApple Core Technology Fee としてAppleに支払うこととされていること、
2) 外部サイトからユーザーがダウンロードする際に、ユーザーが取らなければならない手順、
3) 外部サイトに誘導できるアプリ事業者の資格を限定していること、である。
ところで、先ごろ成立した日本のスマートフォン競争促進法8条2号では以下の定めがある。これはアンチステアリング条項を違法とする規定である。
個別アプリ事業者がその提供するアプリ内で商品・役務を提供するとともに、同一の商品・役務をアプリ外(個別アプリ事業者のウェブページなど。関連ウェブページ等という)で提供する場合に、指定業者に対して以下の行為が禁止される。
・関連ウェブページ等を通じて提供される商品・役務の価格等の情報についてアプリ内で表示しないことを契約条件とすること、ならびにスマートフォン利用者に対して関連ウェブページを通じて商品・役務を提供することを妨げること
1 デジタル市場法については、基礎研レポート「EUのデジタル市場法の公布・施行」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72386?site=nli 参照。
(2024年07月04日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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