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- ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは?
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2025年05月02日
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■要旨
SNSにおける誹謗中傷が社会問題となっている。誹謗中傷は法的用語ではないので、本稿では法的に「名誉毀損」がどのように判断されるのかを解説・検討する。名誉毀損には(1)公然と事実を適示することによる名誉毀損、(2)公然と適示された事実に基づく論評による名誉棄損がある。
まず、(1)が問題とされるのは、公然と事実を適示したことにより人の社会的評価を下落させる場合である。社会的評価が下落したかどうかは一般人の感覚を基準に判断される。社会的評価の低下があった場合は民法709条の不法行為に該当し、損害賠償責任が発生する。
ただし、この場合であっても、事実の適示について、公の利害に関する公共性があり、公益性を図る目的で行われた(公共性・公益性)ときであって、事実が真実であるか、適示をした者が真実であると信ずるに相当の理由がある(真実相当性)場合には、違法性が阻却される。
次に、(2)の損害賠償責任が問題とされるのは、公然と行われた論評(批評や批判)により人の社会的評価を下げる場合である。この場合、上記(1)同様に、公共性・公益性を満たすこと、論評の前提となる事実の重要な部分が真実であるか、その重要部分において真実と信ずるに相当の理由があること(真実相当性)に加え、個人攻撃など論評の範囲を超えないときには違法性が阻却される。
そのほか、事実を適示しなくとも公然と相手を罵倒する場合には、侮辱として不法行為に該当する。
法律では誹謗中傷について、このように取り扱っているが、いわゆる炎上がSNSで発生した場合に、誹謗中傷の被害者が実際に満足できるような対応を行うことは事実上難しい。
■目次
1――はじめに
2――誹謗中傷と法律との関係
1|誹謗中傷と民法との関係
2|誹謗中傷と刑法との関係
3――名誉毀損に該当する誹謗中傷
1|本稿で検討する投稿事例
2|名誉毀損の成立条件
4――事実適示による名誉毀損
1|判断フレーム
2|社会的評価を低下させる事実の適示がなされたこと
3|事実の適示が公然となされたこと
4|公共性・公益性および真実性・相当性の抗弁
5――意見・論評の表明による名誉毀損
1|意見・論評の表明による名誉毀損
2|社会的評価を低下させる論評が公然となされたこと
3|公共性・公益性および真実性・相当性の抗弁
6――名誉毀損に関連する諸問題
1|批判の対象となる者
2|論争がある場合
3|事実を適示しない場合
7――誹謗中傷投稿への対処
8――おわりに
SNSにおける誹謗中傷が社会問題となっている。誹謗中傷は法的用語ではないので、本稿では法的に「名誉毀損」がどのように判断されるのかを解説・検討する。名誉毀損には(1)公然と事実を適示することによる名誉毀損、(2)公然と適示された事実に基づく論評による名誉棄損がある。
まず、(1)が問題とされるのは、公然と事実を適示したことにより人の社会的評価を下落させる場合である。社会的評価が下落したかどうかは一般人の感覚を基準に判断される。社会的評価の低下があった場合は民法709条の不法行為に該当し、損害賠償責任が発生する。
ただし、この場合であっても、事実の適示について、公の利害に関する公共性があり、公益性を図る目的で行われた(公共性・公益性)ときであって、事実が真実であるか、適示をした者が真実であると信ずるに相当の理由がある(真実相当性)場合には、違法性が阻却される。
次に、(2)の損害賠償責任が問題とされるのは、公然と行われた論評(批評や批判)により人の社会的評価を下げる場合である。この場合、上記(1)同様に、公共性・公益性を満たすこと、論評の前提となる事実の重要な部分が真実であるか、その重要部分において真実と信ずるに相当の理由があること(真実相当性)に加え、個人攻撃など論評の範囲を超えないときには違法性が阻却される。
そのほか、事実を適示しなくとも公然と相手を罵倒する場合には、侮辱として不法行為に該当する。
法律では誹謗中傷について、このように取り扱っているが、いわゆる炎上がSNSで発生した場合に、誹謗中傷の被害者が実際に満足できるような対応を行うことは事実上難しい。
■目次
1――はじめに
2――誹謗中傷と法律との関係
1|誹謗中傷と民法との関係
2|誹謗中傷と刑法との関係
3――名誉毀損に該当する誹謗中傷
1|本稿で検討する投稿事例
2|名誉毀損の成立条件
4――事実適示による名誉毀損
1|判断フレーム
2|社会的評価を低下させる事実の適示がなされたこと
3|事実の適示が公然となされたこと
4|公共性・公益性および真実性・相当性の抗弁
5――意見・論評の表明による名誉毀損
1|意見・論評の表明による名誉毀損
2|社会的評価を低下させる論評が公然となされたこと
3|公共性・公益性および真実性・相当性の抗弁
6――名誉毀損に関連する諸問題
1|批判の対象となる者
2|論争がある場合
3|事実を適示しない場合
7――誹謗中傷投稿への対処
8――おわりに
(2025年05月02日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/02 | ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/04/28 | 欧州委、AppleとMetaに制裁金-Digital Market Act違反で | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/04/18 | 資金決済法の改正案-デジタルマネーの流通促進と規制強化 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/04/16 | 公取委、Googleに排除命令-その努力と限界 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
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【ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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