2025年04月25日

若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(2)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方

生活研究部   准主任研究員

小口 裕 (おぐち ゆたか)

研究・専門分野
消費者行動(特に、エシカル消費、サステナブル・マーケティング)、地方創生(地方創生SDGsと持続可能な地域づくり)

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■要旨

「若手人材の確保・定着が人的資本経営の重要テーマとなる今、企業のパーパス(存在意義)と社員の主体的行動をどう結びつけるのか」

・本稿は、制度や取り組みがあるにもかかわらず社員の参加が進まないという現場の悩みに対し、「行動科学」の視点からその原因と処方箋を提示するものである。

・ニッセイ基礎研究所による分析によれば、社員の「社会課題に共感する意識(=自分ごと意識)」が、責任感を生み、日々の行動に変化を起こし、やがて職場内に波及していくという構造が明らかになった。これは、CSRを越えて、企業文化を変えるきっかけとしての社会貢献活動の力を示しているとも言える。

・また、社員が社会貢献活動に関与することは、エンゲージメントや組織コミットメントの向上、さらには離職リスクの低減にもつながるとされ、人的資本経営の観点からも見逃せない実務課題とも言えるだろう。

・前稿では、社員の行動の背後にある心理的な連鎖とハードルを理解することで、はじめて本質的な自発行動が生まれる点を、行動科学のアプローチから指摘した。

・本稿では、こうした背景を踏まえ、従業員の行動を“やりたい”から“やる”に変えるために、「なぜ人は動かないのか」「どうすれば動くのか」を可視化するための心理的メカニズムの分析に踏み込む。さらに、「やるべきだと思っているが行動できない」というギャップの正体に迫り、その接点を明らかにしていく。

・その要点の1つは、「使命感」が高まることで、「批判的な立場から距離を置いていた社員」が「建設的に関与する当事者」へと変化する可能性がある点であろう。これは、単なる制度導入では得られない、社員の内側からの行動変容~多少大げさに言えば「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」の兆しと言い換えることもできるかもしれない。

・本稿は、3回連載の第2回として、「社会貢献活動をどうすれば若手に響く形で“自分ごと”にできるか」に焦点を当てている。次回第3回では、5つの実務論点((1)使命感の設計 (2)障壁の除去 (3)参加導線の設計 (4)形骸化の抑止 (5)価値創造との接続)を踏まえ、施策デザインの実践フレームを提示する。


■目次

1――はじめに
  1|はじめに~社員の「自発的な社会貢献行動」はどのように引き出せるのか
  2|社員の「自発的な社会貢献行動」は「組織コミットメント」にも繋がる
  3|従業員の持続可能な行動を生み出す“心理の連鎖”をどう読み解くか
2――分析結果(1):従業員の「意識構造」は行動につながっているのか
  1|「自分ごと意識」が出発点となるサステナ意識の連鎖
  2|「意識と行動のギャップ」はどこに生じるのか?
  3|従業員による「時間がない」「どうすればいいか分からない」が参加のブレーキに
  4|従業員向けの施策は「自分ごと意識~共感の喚起」だけでは不十分
3――分析結果(2):行動を阻む「心のハードル」の正体とは
 ~明らかになるメカニズムと因果構造
  1|多くの因果関係が“マイナス方向”
   ~持続可能な行動に至るまでの心理的な「逆風」や「ハードル」
  2|従業員の責任意識と習慣行動
   ~行動は習慣化する。ただし「使命感」の維持こそ課題
  3|問題は、従業員の「制約感」
   ~制約感を意識すると従業員の「使命感」と参加意欲を削ぐ
  4|ポイントは、従業員の「使命感」
   ~使命感の高まりは、従業員の「批評者的行動」を減らす
4――従業員のサステナ行動を引き出すには何が必要か
 ~SHIFTの視点から考えるインプリケーション

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(2025年04月25日「基礎研レター」)

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生活研究部   准主任研究員

小口 裕 (おぐち ゆたか)

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