2025年04月18日

資金決済法の改正案-デジタルマネーの流通促進と規制強化

保険研究部 取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

資金決済法はフィンテックに関する法律である。資金決済法に定める支払手段は大まかに言えば以下の通りである。

(1) 前払式支払手段:前払した資金を支払いに用いるもの。いわゆるプリペイドカード。スマホでもSuicaなどが利用できる。

(2) 資金移動業:二当事者間の資金決済をデータで行う事業。銀行でいう為替取引の例外として定められている。PayPayなどがある。

(3) 電子決済手段:暗号資産の性格を持ち、かつ通貨価値と連動する、いわゆるデジタルマネー型のステーブルコインをいう。米ドルに連動するテザーなどがある。

(4) 暗号資産:ブロックチェーン技術を使った移転できる財産的価値。代表例としてビットコインがある。
 
今回の改正は、以下の5点である。

ア)電子決済手段等取引業者および暗号資産交換業者に対して、資産国内保有命令の発出を可能にする。海外親会社の破綻などに際し、国内利用者を保護するためのものである。

イ)ステーブルコインの一種である特定信託受益権の裏付け資産は、これまで預貯金のみしか認められていなかったが、50%まで3か月以内満期の国債等も認めることとした。

ウ)電子決済手段等取扱事業者及び暗号資産交換業者に対して利用者を媒介する事業者を、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者として登録制させ、情報提供義務などを課すこととした。

エ)国内外をまたがる収納代行を為替取引として位置づけ、取扱い事業者には電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者の登録等を求めることとした。

オ)資金移動業者破綻時において、資金の返金に日数を要していたものを履行保証人債務引受契約等の締結等を認め、数日で返金できるようにした。

■目次

1――はじめに
  1|為替取引とは
  2|為替取引に関連する事業(資金決済法以外)
2――資金決済法の概要
  1|前払式支払手段
  2|資金移動業
  3|電子決済手段
  4|暗号資産
3――資金決済法改正の概要
  1|暗号資産交換業者に対する資産の国内保有命令の導入
  2|特定信託受益権の裏付け資産の管理・運用の柔軟化
  3|電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の導入
  4|クロスボーダー収納代行に関する規制の導入
  5|資金移動業者破綻時の利用者資金返還の多様化
4――おわりに

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月18日「基礎研レポート」)

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保険研究部   取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2025年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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