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- インド経済の見通し~農村部の回復と所得減税により民間消費が景気をけん引、当面は+6%台後半の成長持続
2025年03月06日
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財政政策:25年度予算案は所得税減税と財政再建を両立

インフラ投資が中心の資本支出は同+10.2%の11.2兆ルピーとなった。コロナ禍からの4年間は年率+30%近く増加していたことを踏まえると増勢は鈍化している印象が強い。しかしながら2024年度は資本支出が前年度比+11.0%の伸びを当初計画していながら、実際には同+7.3%の伸びに失速するため、2025年度は公共投資の勢いが回復することとなりそうだ。また予算の重点分野としては農業、中小零細企業(MSME)、投資、輸出の4点が挙げられ、なかでも農業・農村関連の支出は3.9兆ルピー(同+24.8%)と大きく積み増しており、生産性の向上や雇用機会創出に向けたプログラムを実施する計画となっている。
また予算案の発表に合わせて税制改正案が示され、個人所得税の減税が発表された。課税区分の見直しを行い、非課税対象の枠をこれまでの年収70万ルピー(約120万円)から120万ルピー(約206万円)に引き上げられることとなった。
昨年のインド総選挙では経済成長の実感が得られない国民の不満がたまり苦戦を強いられたため、モディ政権は農村部や低所得者など成長から取り残されている層の支持拡大に舵を切っている。今回の予算案では資本支出の予算拡充を抑えることで、所得税減税の財源を捻出したのも、そうした政策転換のひとつであろう。公共投資の増勢の鈍化は中長期的な成長力の低下が懸念されるが、所得税減税は可処分所得が増えることで個人消費が拡大すると共に、貯蓄率の上昇を通じて投資が増加する。そして新たな需要が生まれることにより雇用創出にも繋がるため、短期的な景気浮揚策としては過度に悲観する必要はないだろう。投資牽引型から消費主導型の成長へのシフトにより景気の腰折れを回避できるか注目したい。
経済見通し:農業の回復や所得減税、公共投資により+6%台半ばの成長が持続
先行きのインド経済は回復の動きが続きそうだ。特に2025年1-3月期は政府支出の加速や農村経済の回復に加え、大規模な巡礼イベント(マハ・クンブメーラ)の開催や結婚式シーズンの需要が実質GDPを押し上げ、成長率が加速するとみられる。
4-6月期以降も農村部の回復や食品インフレの緩和による消費拡大の動きが続きそうだ。また所得税減税や公共投資の継続的な拡大に支えられるほか、RBIが金融緩和に舵を切っていることも内需の追い風となるだろう。コロナ禍からの回復局面と比べると力強さに欠けるものの、インド経済は概ね+6%台後半の成長ペースが続くと予想する。
景気の牽引役となる民間消費の拡大は農村部の回復が大きく影響しそうだ。昨年の豊作となったカリフ作物に続き、4~5月に収穫が始まるラビ作物も貯水池や地下水位の回復により播種が順調で生産の拡大が予想される。足元では気温上昇や雨不足など天候不順により農業生産の下振れリスクが浮上している点には注意が必要だが、メインシナリオでは食品インフレの緩和や農家の収入アップを通じて農村部を中心に消費需要が回復すると予想している。また都市部も10-12月期の失業率が6.4%と低水準で推移するなど雇用環境は安定しているほか、25年度予算における所得減税に支えられて民間消費は堅調な拡大が続くだろう(図表8)。
外需は、ITサービス輸出が高い伸びを続けるだろうが、米国経済の減速を受けて増勢は鈍化しよう。財輸出も海外経済の低成長や貿易政策を巡る不確実性の高まりから世界貿易が伸び悩むものとみられ、財・サービス輸出全体では緩やかな増加にとどまるだろう。しかし輸入は消費の回復により輸出を上回る伸びが続くとみられるため、外需の成長率寄与度は再びマイナス寄与となりそうだ。
民間投資は消費関連業種を中心に改善するとみられるが、全面的な回復は時期尚早だろう。輸出の鈍化や高金利環境の継続により民間投資は勢いに欠ける状況が続くと予想する。足元でもインド製造業のビジネス環境の見通しは前年を下回っている(図表9)。
4-6月期以降も農村部の回復や食品インフレの緩和による消費拡大の動きが続きそうだ。また所得税減税や公共投資の継続的な拡大に支えられるほか、RBIが金融緩和に舵を切っていることも内需の追い風となるだろう。コロナ禍からの回復局面と比べると力強さに欠けるものの、インド経済は概ね+6%台後半の成長ペースが続くと予想する。
景気の牽引役となる民間消費の拡大は農村部の回復が大きく影響しそうだ。昨年の豊作となったカリフ作物に続き、4~5月に収穫が始まるラビ作物も貯水池や地下水位の回復により播種が順調で生産の拡大が予想される。足元では気温上昇や雨不足など天候不順により農業生産の下振れリスクが浮上している点には注意が必要だが、メインシナリオでは食品インフレの緩和や農家の収入アップを通じて農村部を中心に消費需要が回復すると予想している。また都市部も10-12月期の失業率が6.4%と低水準で推移するなど雇用環境は安定しているほか、25年度予算における所得減税に支えられて民間消費は堅調な拡大が続くだろう(図表8)。
外需は、ITサービス輸出が高い伸びを続けるだろうが、米国経済の減速を受けて増勢は鈍化しよう。財輸出も海外経済の低成長や貿易政策を巡る不確実性の高まりから世界貿易が伸び悩むものとみられ、財・サービス輸出全体では緩やかな増加にとどまるだろう。しかし輸入は消費の回復により輸出を上回る伸びが続くとみられるため、外需の成長率寄与度は再びマイナス寄与となりそうだ。
民間投資は消費関連業種を中心に改善するとみられるが、全面的な回復は時期尚早だろう。輸出の鈍化や高金利環境の継続により民間投資は勢いに欠ける状況が続くと予想する。足元でもインド製造業のビジネス環境の見通しは前年を下回っている(図表9)。
(2025年03月06日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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