2025年02月20日

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4.物流施設に求める立地条件

「物流施設に求める立地条件」について荷主企業に質問したところ(図表-10)、「重視」(「とても重視している」と「重視している」の合計)が6割を超えた立地条件は、「主要幹線道路へのアクセス」(79%)、「高速道路ICへのアクセス」(77%)、「消費地へのアクセス」(72%)、「広い用地・施設が確保できる」(67%)、「生産拠点へのアクセス」(63%)であった。

物流企業では、「重視」が6割を超えた立地条件は、「主要幹線道路へのアクセス」(85%)、「高速道路ICへのアクセス」(83%)、「広い用地・施設が確保できる」(83%)、「生産拠点へのアクセス」(69%)、「消費地へのアクセス」(63%)、「地方自治体から補助金が出る」(63%)であった。

物流業務において、ジャストインタイムでの対応が求められるなか、荷主企業、物流企業ともに、輸送の始点(生産拠点)および終点(消費地)へのアクセスや、高速道路ICおよび主要幹線道路へのアクセスを特に重視している。また、効率性や利便性を高めるため一定規模以上のスペースを求めている状況がうかがえる。
図表-10  物流施設に求める立地条件
また、物流施設の誘致を目的とした補助金を設置する地方自治体が増えている(図表-11)。物流企業は、物流施設の選定にあたり、こうした補助金の有無を重視している模様だ。
図表-11 物流施設立地に関する地方自治体の補助金の事例

5.おわりに

5.おわりに

本稿では、三菱地所リアルエステートサービス株式会社と共同で実施したアンケート調査の一部を紹介し、物流施設利用の現状と方向性について概観した。

物流施設の所有形態に関して、荷主企業、物流企業ともに賃貸施設の利用が広く定着している。今後も、環境変化への柔軟な対応や、建設コストの高騰等から自社で物流施設を新設することが難しいこと等から、賃貸施設利用を選択する企業が増加すると見込まれる。

物流施設利用の現状をみると、物流企業では、大規模物流施設の利用が特に進んでいる。また、荷主企業、物流企業ともに物流施設の拡張意欲が高い。特に、物流企業は、首都圏や関西圏以外の地域での拡張意欲の高さがうかがえる。共同配送等の物流効率化の取り組みやBCP・施設老朽化への対策等により、施設利用面積の見直しを検討する企業は引き続き増加すると考えられる。

物流施設に求める立地条件に関して、荷主企業、物流企業ともに、輸送の始点(生産拠点)および終点(消費地)へのアクセスや、高速道路ICおよび主要幹線道路へのアクセスを特に重視している。また、一定規模以上のスペースを求めているほか、物流企業は地方自治体による補助金の有無を重視している。
 
次回のレポートでは、物流施設に求める機能や施設仕様、施設設備の状況(災害対策設備、自動倉庫関連、環境配慮・省エネ型設備)を概観した上で、物流不動産市場への影響等について考察したい。

(2025年02月20日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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