- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- タイ経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比3.2%増~純輸出と政府支出が拡大、2期連続で+3%台の成長に
2025年02月17日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2024年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比3.2%増1(前期:同3.0%増)と上昇したが、市場予想2(同3.8%増)には届かなかった(図表1)。なお前期比(季節調整後)の成長率は0.4%増だった。
10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に投資と輸出の拡大が成長率上昇に繋がったことが分かる。
まず民間消費は前年同期比3.4%増(前期:同3.3%増)と若干上昇した。費目別に見ると、レストラン・ホテル(同28.6%増)の大幅な増加が続いたほか、衣類・靴(同6.5%増)、娯楽・文化(同4.5%増)、食料・飲料(同3.6%増)が順調に増加した。一方、輸送(同1.3%減)は自動車の購入が落ち込み低迷したほか、保健衛生(同2.7%増)、家具、備品、メンテナンス(同2.5%増)、住宅・水道・電気・燃料(同1.9%増)が緩やかな増加にとどまった。
政府消費は同5.4%増(前期:同6.1%増)と堅調な伸びを維持した。現物社会給付(同13.1%増)と財・サービスの購入(同10.6%増)がそれぞれ二桁増だった。雇用者報酬(同2.8%増)については小幅な増加にとどまった。
総固定資本形成は同5.1%増(前期:同5.0%増)と堅調に拡大した。投資の内訳を見ると、公共投資は同39.4%増(前期:同25.2%増)と大幅な伸びが続いた一方、民間投資が同2.1%減(前期:同2.5%減)と低迷した。
純輸出は成率寄与度が+2.4%ポイントとなり、前期の+0.2%ポイントから拡大した。まず財・サービス輸出は同11.5%増(前期:同9.9%増)と二桁成長だった。財貨輸出が同8.9%増(同7.5%増)と加速したほか、サービス輸出が同22.9%増(前期:同22.3%増)と二桁成長が続いた。一方、財・サービス輸入は同8.2%増(前期:同10.3%増)となり増勢が鈍化した。
供給項目別に見ると、主に三次産業と第一次産業の改善が成長率上昇に繋がった(図表2)。
全体の6割を占めるサービス業は同4.7%増(前期:同4.1%増)と堅調に拡大した。サービス業の内訳を見ると、建設業(同18.3%増)が公共事業の加速により大幅に増加したほか、宿泊・飲食業(同10.2%増)と運輸・倉庫業(同9.0%増)、保健衛生・社会事業(同7.4%増)、情報・通信業(同5.7%増)、小売・卸売業(同3.9%増)も順調だった。他方、金融・保険業(同1.5%増)や教育(同1.1%増)、不動産業(同1.8%増)、国防・社会保障(同2.7%増)は相対的に緩やかな伸びにとどまった。
農林水産業は前年同期比1.2%増となり、前期の同1.0%減から改善して5四半期ぶりのプラス成長だった。7-9月期はラニーニャ現象によりいくつかの地域で大雨が降り作物被害が生じたが、10-12月期は影響が緩和して主にコメやキャッサバ、果物などの作物の収量が増加したほか、畜産や漁業・養殖業も増加した。
一方、鉱工業は同1.0%増(前期:同1.3%増)と小幅に低下した。主力の製造業は同0.2%増(前期:同0.3%増)と低調だった。製造業の内訳を見ると、食料・飲料および繊維、家具などの軽工業(同3.5%増)は外需の拡大により回復したが、自動車およびコンピュータ・部品などの資本・技術関連産業(同5.4%減)は自動車生産の減少が続いて低迷、石油化学製品およびゴム・プラスチック製品などの素材関連(同1.2%増)は小幅な増加にとどまった。また鉱業が同9.6%増(前期:同11.1%増)となり、主要油田の採掘量が改善して好調を維持したほか、電気・ガス業が同3.1%増(前期:同2.5%増)と上昇した。
1 2月17日、タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)が2024年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
全体の6割を占めるサービス業は同4.7%増(前期:同4.1%増)と堅調に拡大した。サービス業の内訳を見ると、建設業(同18.3%増)が公共事業の加速により大幅に増加したほか、宿泊・飲食業(同10.2%増)と運輸・倉庫業(同9.0%増)、保健衛生・社会事業(同7.4%増)、情報・通信業(同5.7%増)、小売・卸売業(同3.9%増)も順調だった。他方、金融・保険業(同1.5%増)や教育(同1.1%増)、不動産業(同1.8%増)、国防・社会保障(同2.7%増)は相対的に緩やかな伸びにとどまった。
農林水産業は前年同期比1.2%増となり、前期の同1.0%減から改善して5四半期ぶりのプラス成長だった。7-9月期はラニーニャ現象によりいくつかの地域で大雨が降り作物被害が生じたが、10-12月期は影響が緩和して主にコメやキャッサバ、果物などの作物の収量が増加したほか、畜産や漁業・養殖業も増加した。
一方、鉱工業は同1.0%増(前期:同1.3%増)と小幅に低下した。主力の製造業は同0.2%増(前期:同0.3%増)と低調だった。製造業の内訳を見ると、食料・飲料および繊維、家具などの軽工業(同3.5%増)は外需の拡大により回復したが、自動車およびコンピュータ・部品などの資本・技術関連産業(同5.4%減)は自動車生産の減少が続いて低迷、石油化学製品およびゴム・プラスチック製品などの素材関連(同1.2%増)は小幅な増加にとどまった。また鉱業が同9.6%増(前期:同11.1%増)となり、主要油田の採掘量が改善して好調を維持したほか、電気・ガス業が同3.1%増(前期:同2.5%増)と上昇した。
1 2月17日、タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)が2024年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
10-12月期GDPの評価と先行きのポイント
タイ経済は、2024年は年前半が+2.0%成長と伸び悩んでいたが、年後半は輸出の回復と政府支出の加速により+3.1%成長に加速した。結果として2024年通年では+2.5%成長となり、前年の+2.0%成長から改善することとなった。また今回発表された10-12月期の成長率は前年同期比+3.2%となり、前期の同+3.0%から小幅に上昇し、景気回復の動きが続いていることが明らかとなった。
10-12月期の成長率上昇は投資と輸出の拡大による影響が大きい。まず財貨輸出(同+8.9%)は製造業と農産物の出荷増により3四半期連続で加速した。品目別にみると、コンピュータ(同+118.9%)やゴム製品(同+52.6%)、コンピュータ部品・付属品(同+45.7%)、機械設備(同+23.9%)、ゴム(同+30.8%)などの輸出が好調だった。またサービス輸出(前年同期比+22.9%)は大幅な伸びが続いた。10-12月期の外国人観光客数は前年同期比+10.1%の945万人(コロナ禍前の9割強の水準)となり回復傾向が続いた結果、国際観光収入は前年同期比36.8%増の4,100億バーツと大きく増加した。一方、財・サービス輸入(同+8.2%)も原材料・中間財の需要増により伸びているが、増勢は前期(同+10.2%)から鈍化したため、純輸出は大幅なプラス寄与(+2.0%ポイント)だった。
また10-12月期は政府支出の大幅な増加により公共投資(同+39.4%)が加速、政府消費(同+5.4%)は増勢こそ鈍化したが、高めの伸びを維持している。タイでは執行が遅れていた24年度(23年10月~24年9月)国家予算が昨年4月に成立して以来、年金や公務員の医療費などの経常支出やインフラ開発などの資本支出が大幅に増加している(図表3)。10-12月期の予算執行率は資本支出が13.4%(前年同期が1.2%)、経常支出が36.7%(前年同期が30.7%)とそれぞれ上昇した。
民間消費(同+3.4%)は継続的に拡大した。7-9月期はラニーニャ現象の影響でタイ北部を中心大雨による洪水被害が起きて消費者心理は冷え込んでいたが、10-12月期は洪水被害が落ち着いて国内外の旅行者が回復すると共に政府の景気刺激策が奏功して再び改善している(図表4)。一方、民間投資(同▲2.1%)は金融機関による与信基準の厳格化に伴う自動車販売の不振等により低迷した。
10-12月期の成長率上昇は投資と輸出の拡大による影響が大きい。まず財貨輸出(同+8.9%)は製造業と農産物の出荷増により3四半期連続で加速した。品目別にみると、コンピュータ(同+118.9%)やゴム製品(同+52.6%)、コンピュータ部品・付属品(同+45.7%)、機械設備(同+23.9%)、ゴム(同+30.8%)などの輸出が好調だった。またサービス輸出(前年同期比+22.9%)は大幅な伸びが続いた。10-12月期の外国人観光客数は前年同期比+10.1%の945万人(コロナ禍前の9割強の水準)となり回復傾向が続いた結果、国際観光収入は前年同期比36.8%増の4,100億バーツと大きく増加した。一方、財・サービス輸入(同+8.2%)も原材料・中間財の需要増により伸びているが、増勢は前期(同+10.2%)から鈍化したため、純輸出は大幅なプラス寄与(+2.0%ポイント)だった。
また10-12月期は政府支出の大幅な増加により公共投資(同+39.4%)が加速、政府消費(同+5.4%)は増勢こそ鈍化したが、高めの伸びを維持している。タイでは執行が遅れていた24年度(23年10月~24年9月)国家予算が昨年4月に成立して以来、年金や公務員の医療費などの経常支出やインフラ開発などの資本支出が大幅に増加している(図表3)。10-12月期の予算執行率は資本支出が13.4%(前年同期が1.2%)、経常支出が36.7%(前年同期が30.7%)とそれぞれ上昇した。
民間消費(同+3.4%)は継続的に拡大した。7-9月期はラニーニャ現象の影響でタイ北部を中心大雨による洪水被害が起きて消費者心理は冷え込んでいたが、10-12月期は洪水被害が落ち着いて国内外の旅行者が回復すると共に政府の景気刺激策が奏功して再び改善している(図表4)。一方、民間投資(同▲2.1%)は金融機関による与信基準の厳格化に伴う自動車販売の不振等により低迷した。
上述のとおりタイ経済は遅れていた政府支出の執行や観光・輸出の増加により+3%成長を達成しているが、先行きは成長ペースが徐々にダウンしていくこととなりそうだ。これまでの観光関連産業の持続的な回復により国内の雇用環境は安定しており失業率は1%弱の低水準にあり、また政府の看板政策の国民向け給付策は今年1月に第二弾、4月に第三弾を予定しており、民間消費は堅調な伸びを維持するほか、現在低迷する民間投資は政府支出の正常化に伴い持ち直していくだろう。しかしながら、景気をけん引する観光セクターは今年コロナ禍前の水準を回復して増勢が鈍化するとみられ、また予算執行の加速による景気の押し上げ効果は年後半から薄れていくだろう。さらに今年は世界的な貿易戦争のリスクが懸念され、米国や中国など主要貿易相手国からの需要が弱まるため財輸出の伸びは鈍化すると予想される。経済の貿易依存度の高いタイ経済が現在の高めの成長ペースを維持すること容易ではないだろう。なおタイ政府は今年の成長率予測について前回予測(+2.3~3.3%)を維持している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2025年02月17日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/16 | インド消費者物価(25年3月)~3月のCPI上昇率は+3.3%、約6年ぶりの低水準に | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/04/08 | ベトナム経済:25年1-3月期の成長率は前年同期比6.93%増~順調なスタート切るも、トランプ関税ショックに直面 | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/03/21 | 東南アジア経済の見通し~景気は堅調維持、米通商政策が下振れリスクに | 斉藤 誠 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/13 | インド消費者物価(25年2月)~2月のCPI上昇率は半年ぶりの4%割れ | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【タイ経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比3.2%増~純輸出と政府支出が拡大、2期連続で+3%台の成長に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
タイ経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比3.2%増~純輸出と政府支出が拡大、2期連続で+3%台の成長にのレポート Topへ