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- 海底資源探査がもたらす未来-メタンハイドレートと海底金属
2025年02月07日
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1―日本と海底資源の重要性
日本は世界第6位の広大な海域を有する海洋大国である。その海域には多様な生態系と地質的特徴が広がっており、未利用の資源が数多く存在する。特に注目されるのが、エネルギー資源であるメタンハイドレート(以下MH)と、ハイテク産業を支える海底金属資源である。これらの資源はエネルギー安全保障や産業基盤の強化において重要な役割を果たすと期待されている。
2―MHの現状と課題
MHは「燃える氷」と呼ばれる、水分子の中にメタン分子が入った物質で、低温・高圧の条件下で安定して存在する。南海トラフには砂層型MHが、日本海側には表層型MHが分布している。これらはエネルギー供給源として注目されており、原始資源量は日本の年間天然ガス消費量の約10年分に相当するとされている。この資源は、輸入依存度を低減し経済安全保障を強化する可能性を秘めている。
一方で、環境負荷や採掘技術の課題が存在する。砂層型は安定的な天然ガス供給が期待されるのに対して、表層型は海底面に近い場所に存在するため取り出しやすいが、地質的な不安定性が課題となり、採掘には異なる技術が必要される。採掘中に発生する濁水やメタン漏洩が海洋生態系に与える影響を軽減するための技術革新が求められる。
一方で、環境負荷や採掘技術の課題が存在する。砂層型は安定的な天然ガス供給が期待されるのに対して、表層型は海底面に近い場所に存在するため取り出しやすいが、地質的な不安定性が課題となり、採掘には異なる技術が必要される。採掘中に発生する濁水やメタン漏洩が海洋生態系に与える影響を軽減するための技術革新が求められる。
3―海底金属資源の可能性
4―国際連携と技術革新の役割
資源開発の推進には、国際連携や官民協力が欠かせない。国際海底機構は、深海底にある資源を「人類の共同財産」と位置づけ、その規制や探査契約を通じて持続可能な開発を目指している。具体的には、探査ライセンスを各国に付与し、環境保護基準を満たす開発活動を管理している。日本も国際海底機構の一員として、ルール策定や科学的調査に参加している。また、日本政府は排他的経済水域内の開発を進めるため、国内法整備や「海洋開発等重点戦略」を策定し、産業界や研究機関との連携を強化している。
技術革新の観点では、自律型無人探査機や人工知能の活用、衛星データを利用した効率的な探査手法の導入が進められている。これらの技術により、資源開発の安全性と効率性は大幅に向上している。
技術革新の観点では、自律型無人探査機や人工知能の活用、衛星データを利用した効率的な探査手法の導入が進められている。これらの技術により、資源開発の安全性と効率性は大幅に向上している。
5―海底資源と未来への展望
MHや海底金属資源の商業化には、技術的課題の克服や採算性の確保といった大きな壁存在し、それらの解決には相応の時間を要すると見込まれる。だが、エネルギー自給率の向上や、燃料輸入コストの削減などの効果が期待される。また、電気自動車や再生可能エネルギー関連技術に必要な希少金属の安定供給を通じ、供給リスク低減や輸入依存度の縮小といった経済安全保障上の効果も見込まれよう。さらに、新たな産業や雇用の創出を通じて、日本経済全体の成長を後押しする潜在力を秘めている。
持続可能な開発を実現するためには、技術革新、官民連携、国際連携が不可欠である。
深海に眠る「未来の資源」をどのように活用するか。その挑戦は、日本の未来を切り拓く鍵となるだろう。
持続可能な開発を実現するためには、技術革新、官民連携、国際連携が不可欠である。
深海に眠る「未来の資源」をどのように活用するか。その挑戦は、日本の未来を切り拓く鍵となるだろう。
(参考文献等は「海底資源探査がもたらす未来-メタンハイドレートと海底金属」(研究員の眼、2024年12月13日)を参照))
(2025年02月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1864
経歴
- 【職歴】
1996年 日本生命保険相互会社入社
主に資産運用部門にて融資関連部署を歴任
(海外プロジェクトファイナンス、国内企業向け貸付等)
2022年 株式会社ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・公益社団法人日本証券アナリスト協会
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