2025年02月03日

宿泊旅行統計調査2024年12月~中国人延べ宿泊者数がコロナ禍前を回復~

経済研究部 安田 拓斗

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1.日本人延べ宿泊者数は8ヵ月ぶりに前年比プラス

観光庁が1月31日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2024年12月の延べ宿泊者数は5,582万人泊(11月:5,712万人泊)、前年比6.3%(11月:同4.9%)、2019年比18.4%(11月:同15.0%)と前年比、2019年比ともに伸びを高めた。

2024年12月の日本人延べ宿泊者数は4,053万人泊(11月:4,233万人泊)、2019年比6.8%(11月:同4.3%)となった。前年比では1.4%(11月:▲0.3%)と8ヵ月ぶりのプラスと、物価高の向かい風を受けながらも、冬季賞与の伸びもあり、持ち直した。2024年12月の外国人延べ宿泊者数は1,529万人泊(11月:1,479)万人泊)、2019年比は66.5%(11月:同63.2%)、前年比は21.9%(11月:同22.9%)と、円安の追い風を受けて、好調を続けており、延べ宿泊者数全体を押し上げている。

また、2024年の延べ宿泊者数は2019年比9.3%(2023年:同3.6%)と増加した。内訳をみると、日本人延べ宿泊者数は同1.6%(2023年:同4.1%)、外国人延べ宿泊者数は同41.3%(2023年:同1.8%)と、外国人延べ宿泊者数が大幅に伸びを高めた。日本人延べ宿泊者数は2019年比ではプラスとなったが、前年比では▲2.3%と新型コロナウイルス感染拡大によって大幅に落ち込んだ2020年以来4年ぶりのマイナスとなった。総じて2024年は、円安の進展や欧米等からの長期宿泊客が増加したことなどから外国人延べ宿泊者数が好調であった一方、日本人延べ宿泊者数はホテル価格の高騰や実質賃金がマイナスで推移したこともあり、弱い動きとなった
延べ宿泊者数の推移/日本人延べ宿泊者数の推移

2.客室稼働率は3ヵ月連続でコロナ禍前超え

客室稼働率の推移 2024年12月の客室稼働率は全体で59.9%(11月:同66.0%)、2019年同月差は1.2%(11月:同0.4%)と3ヵ月連続でコロナ禍前を上回った。宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は34.3%、2019年同月差▲0.7%(11月:同0.0%)、リゾートホテルは55.9%、2019年同月差3.3%(11月:同1.0%)、ビジネスホテルは73.3%、2019年同月差1.7%(11月:同0.7%)、シティホテルは73.3%、2019年同月差▲2.7%(11月:同▲3.7%)、簡易宿所は29.0%、2019年同月差▲1.4%(11月:同▲4.1%)であった。旅館、シティホテル、簡易宿所で2019年同月差がマイナスとなったが、リゾートホテル、ビジネスホテルではプラスとなった。前年比では旅館のみが▲0.4%と、人手不足の影響もあり稼働率の向上が難しい状況が続いている。

3.三大都市圏は地方より外国人宿泊者数の回復が速い

速報より1ヵ月遅れて公表される都道府県別の延べ宿泊者数をみると、11月は東京都が2019年比45.8%、栃木県が同40.0%、石川県が同39.7%、兵庫県が同27.2%、大阪府が同26.4%、長野県が同21.5%、北海道が同21.3%、福岡が同19.1%、広島県が同15.1%と回復している。一方、それ以外の地方は、全国の2019年比15.0%を下回り、マイナスや一桁の伸びにとどまる地域もあり、回復に差がみられる。
る都道府県別の延べ宿泊者(11月)
11月の外国人延べ宿泊者数は2019年比63.2%と、日本人延べ宿泊者数の同4.3%と比較して高く、全体を押し上げた。都道府県別には、東京都は2019年比113.0%、大阪府は同62.9%と大幅に増加し、三大都市圏1全体では同71.0%の高い伸びとなった。地方でも2019年比47.7%と三大都市圏には及ばないものも、着実に回復している。地方は外国人の旅行需要を獲得できているが、三大都市圏ではさらに大きな需要を得ている。今後も大都市へ外国人宿泊者が集中する傾向が続くとみられ、三大都市圏で増加幅が大きい傾向が続きそうだ。
 
1 三大都市圏とは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県をいう

4.中国人延べ宿泊者数が初めてコロナ禍前超え

外国人延べ宿泊者数の推移 外国人延べ宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2024年12月の中国人延べ宿泊者数は2019年比5.7%(11月:同▲13.2%)とコロナ禍以降初めてプラスとなった。中国人旅行者の宿泊日数が増加したことで、延べ宿泊者数は訪日外客数(12月:2019年比▲14.9%)を上回る速度で回復している。中国人の訪日数は、11月の2019年比▲27.3%から12月の同▲14.9%へと、大幅にマイナス幅が縮小した。円安の進行に加え、日中外相会談の開催やビザ緩和の発表など日中関係に改善の兆しが見られたことが旅行者の心理にプラスに働いた可能性が考えられる。

中国人延べ宿泊者数は引き続き緩やかな回復を続ける公算が大きい。春ごろに予定されるビザ緩和により回復速度の加速も期待される。ただし、中国の消費が弱い動きとなっていることや、トランプ米大統領の政策次第で景気が大きく落ち込む可能性があることなど、下振れリスクは残存している。

日本人の旅行需要は引き続き、物価高の向かい風を受けて力強い回復は見込めない。一方、外国人の旅行需要はコロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって、好調が続くだろう。インバウンド需要の回復が続くことで、全体の延べ宿泊者数は増加を続けると考えられる。
 
 

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(2025年02月03日「経済・金融フラッシュ」)

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安田 拓斗

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