2025年01月31日

2024年10-12月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.0%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

● 10-12月期は年率1.0%のプラス成長を予測

2024年10-12月期の実質GDPは、前期比0.3%(前期比年率1.0%)と3四半期連続のプラス成長になったと推計される1

物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡したことから、民間消費が前期比▲0.4%と3四半期ぶりに減少したが、高水準の企業収益を背景に設備投資が前期比1.8%の高い伸びとなったこと、外需が前期比・寄与度0.3%のプラスとなったことが成長率を押し上げた。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.0%(うち民需▲0.1%、公需0.1%)、外需が0.3%と予測する。
 
名目GDPは前期比1.3%(前期比年率5.5%)と3四半期連続で増加し、実質の伸びを大きく上回るだろう。GDPデフレーターは前期比1.1%(7-9月期:同0.1%)、前年比3.1%(7-9月期:同2.4%)と予測する。国内需要デフレーターが前期比0.5%(7-9月期:同0.2%)と前期から伸びを高めたことに加え、輸出デフレーターが前期比1.5%となり、輸入デフレーターの伸び(同▲1.0%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
 
なお、2/17に内閣府から2024年10-12月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2024年7-9月期の実質GDP成長率は設備投資の上方修正などから、前期比年率1.2%から同1.7%へ上方修正されると予想している。
 
この結果、2024年(暦年)の実質GDPは前年比▲0.1%(2023年は1.5%)と4年ぶりのマイナス成長となると予想する。社会経済活動の正常化を受けて2021年から増加を続けてきた民間消費が前年比▲0.4%と4年ぶりに減少した。一方、名目GDPは前年比2.8%(2023年は5.6%)と4年連続のプラス成長となることが見込まれる。GDPデフレーターは前年比2.9%(2023年は4.1%)と3年連続のプラスとなるだろう。
 
2024年10-12月期は3四半期連続のプラス成長となったが、民間消費は3四半期ぶりの減少となり、依然としてコロナ禍前(2019年平均)の水準を▲1%程度下回っている。消費活動の正常化にはまだ距離がある。現時点では、2025年1-3月期の実質GDPは前期比年率1%程度のプラス成長を予想しているが、物価の上振れなどを要因として、引き続き民間消費を中心に下振れリスクは高い。
 
1 1/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。

● 主な需要項目の動向

● 主な需要項目の動向

・民間消費~物価高、減税効果の一巡で3四半期ぶりの減少~
民間消費は前期比▲0.4%と3四半期ぶりの減少を予測する。

物価高による下押し圧力の強い状態が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡し、家計の可処分所得が前期から減少したことが消費の下押し要因になったとみられる。
消費関連指標の推移 2024年10-12月期の消費関連指標を確認すると、外食産業売上高が前期比1.9%(7-9月期:同1.8%)、延べ宿泊者数(うち日本人)が前期比1.5%(7-9月期:同0.4%)と増加したが、自動車販売台数が前期比▲2.4%(7-9月期:同4.3%)、小売業販売額指数が前期比▲1.4%(7-9月期:同▲0.3%)と減少した(いずれもニッセイ基礎研究所による季節調整値、外食産業売上高、小売販売額指数は消費者物価指数で実質化)。
・住宅投資~住宅価格上昇の影響から弱い動きが続く~
住宅投資は前期比0.1%と3四半期連続の増加を予測する。
新設住宅着工戸数の推移 新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2024年4-6月期の81.9万戸から7-9月期が78.3万戸、10-12月期が78.0万戸と水準を切り下げている。

住宅価格上昇の影響などから住宅投資は弱い動きが続いている。GDP統計の住宅投資は3四半期連続で増加するとみられるが、コロナ禍前(2019年平均)の水準を大きく下回り、停滞が続いている。
・民間設備投資~高水準の企業収益を背景に高い伸び~
民間設備投資は前期比1.8%の増加を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)は2024年7-9月期の前期比▲3.2%の後、10-12月期は同5.6%となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2024年7-9月期に前期比▲1.3%となった後、10、11月の平均は7-9月期を2.7%上回っている。

日銀短観2024年12月調査では、2024年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が9月調査から▲0.1%下方修正されたが、前年度比10.0%と前年比二桁の高い伸びとなっている。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に、人手不足対応の省力化投資、デジタル化に向けた情報関連投資、Eコマース拡大に伴う建設投資などを中心に回復基調が続いている。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
・公的固定資本形成~横ばい圏で推移~
公的固定資本形成は前期比0.2%と2四半期ぶりの増加を予測する。
公共工事請負金額、出来高の推移 公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2024年10-12月期に前年比1.2%と8四半期連続で増加したが、伸び率は4-6月期の同8.8%をピークに鈍化している。一方、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2024年7-9月期に前年比3.2%と2四半期連続で増加した後、10、11月の平均は同3.6%となっている。

 
・外需~4四半期ぶりに成長率を押し上げ~
外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.2%)と4四半期ぶりのプラスを予測する。財貨・サービスの輸出が前期比1.1%の増加となり、財貨・サービスの輸入の伸び(同▲0.4%)を上回ったことから、外需は成長率の押し上げ要因となった。財輸出は低迷したが、インバウンド需要の拡大などからサービス輸出が高い伸びとなり輸出を押し上げた。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 2024年10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲2.9%(7-9月期:同0.0%)、EU向けが前期比0.6%(7-9月期:同2.5%)、アジア向けが前期比2.6%(7-9月期:同0.4%)、うち中国向けが前期比0.1%(7-9月期:同▲4.6%)、全体では前期比1.3%(7-9月期:同0.2%)となった。アジア向け、EU向けは持ち直しているが、米国向けが自動車を中心に弱い動きとなっている。

 
日本・月次GDP 予測結果
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年01月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【2024年10-12月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.0%)を予測~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

2024年10-12月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.0%)を予測~のレポート Topへ