2025年01月22日

日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか

金融研究部 熊 紫云

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2|TOPIX
TOPIXの1989年12月末から2024年12月末までの推移を見ると、1989年末日本バブル崩壊後から2012年頃まで長期にわたって低迷していた一方、2013年頃から上昇が顕著になっている(図表4)。
【図表4】TOPIXとEPSの推移
図表4では、図表2と同様に、PERが10倍~20倍の範囲に該当する株価分布を黄色の帯で示している。1989年のバブル崩壊後から2000年のITバブル崩壊まで、TOPIX(青色線)は黄色の帯を大きく超えていた。これは、予想EPSが低い水準にありながらPERが極めて高く、最近の水準である13倍~15倍程度を大きく上回っていたことから、企業利益では説明しきれないほど株価は高かったと言える。

1990年代半ばには、企業利益の低迷で予想EPSが大きく下落したが、株価があまり下がらなかったため、実際の株価は最近の水準である13倍から15倍程度を大幅に上回り、実にその4倍以上も高かったことが分かる。その後、企業業績の回復が進まず予想EPSの低迷が続いたため、1998年頃には株価も下落したと考えられる。

さらに、1999年頃からITバブルが始まり、企業業績や予想EPSの回復とともに株価も上昇し始めたが、PERが50倍を超えるなど、株価の過熱感が強かった。

2003年頃にはPERが18倍程度まで低下し、株価は正常化に向けた調整の最終局面に達した。この頃から、TOPIX(青色線)は概ね予想EPS(ピンク色線)との連動し始めたことが図表4のグラフから分かる。

なお、2008年のリーマン・ショック時に株価は暴落したものの、予想EPSの急速な低下ほど下落しなかったため、一時的にPERは急上昇した。これはショック時の一時的現象だったと言える。その後、予想EPSの回復とともにPERが15倍を中心に10倍から20倍程度で安定的に推移し、TOPIXは企業利益(予想EPS)の向上に連動して上昇するようになっている。

TOPIXとEPSおよびPERとの関係を、1989年12月末~2002年12月末と2003年1月末~2024年12月末の2つの期間に分けて散布図に示した(図表5・6)。
【図表5】TOPIXとPERの散布図
PERを横軸、TOPIXを縦軸に取ると、1989年12月末から2002年12月末までの期間では、PERが主に20倍から70倍の間に幅広く分布していた(図表5:右側)。一方、2003年1月末から2024年12月末までの期間では、先述したリーマン・ショックにおける外れ値(紫点)を除くと、PERは15倍を中心に10倍から20倍に分布する(図表5:左側)。いずれの期間においても、TOPIXとPERの間に一貫した関係が見られない。

予想EPSを横軸、TOPIXを縦軸に取ると、1989年12月末から2002年12月末よりも、2003年1月末から2024年12月末までの期間で、予想EPSの増加に伴いTOPIXが上昇する傾向が明確に確認できる(図表6:右側)。
【図表6】TOPIXとEPSの散布図
2024年12月末(図表5・6の黒点)の株価は1989年末の株価水準に回復したが、PERとEPSに分解すると、その内訳が大きく異なる。1989年12月末(図表5・6の黄点)のPERが49.0倍、予想EPSが58.8円だったのに対して、直近のPERは14.1倍、予想EPSは196.9円である。バブル崩壊直前と同水準の株価であっても、現在は企業業績に裏付けられた説明可能な水準だと考えられる。
 
以上をまとめると、S&P500は長期的に企業利益(予想EPS)の向上と連動し、企業利益の成長によって株価が牽引されてきたと言える。米国企業はOfficeアプリやiPhone、Android、アマゾンでの買い物、AIの活用など、日常に欠かせない商品やサービスを提供している。さらに、技術革新とイノベーションを通じて新しいサービスを提供することで収益の成長を実現し、投資家の高い期待に応えられていると考えられる2
 
一方、TOPIXがバブル崩壊後に長期間低迷していたのは企業利益の低迷と当時の投資家の過度な期待(高PER)が原因である。その後、2003年頃まで株価の調整が進み、2013年アベノミクス以降は企業利益(予想EPS)の向上と歩調を合わせて、海外の主要な株式インデックスと同じように上昇していることが確認できる。

(2025年01月22日「基礎研レポート」)

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