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日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか

金融研究部 熊 紫云
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1990年代半ばには、企業利益の低迷で予想EPSが大きく下落したが、株価があまり下がらなかったため、実際の株価は最近の水準である13倍から15倍程度を大幅に上回り、実にその4倍以上も高かったことが分かる。その後、企業業績の回復が進まず予想EPSの低迷が続いたため、1998年頃には株価も下落したと考えられる。
さらに、1999年頃からITバブルが始まり、企業業績や予想EPSの回復とともに株価も上昇し始めたが、PERが50倍を超えるなど、株価の過熱感が強かった。
2003年頃にはPERが18倍程度まで低下し、株価は正常化に向けた調整の最終局面に達した。この頃から、TOPIX(青色線)は概ね予想EPS(ピンク色線)との連動し始めたことが図表4のグラフから分かる。
なお、2008年のリーマン・ショック時に株価は暴落したものの、予想EPSの急速な低下ほど下落しなかったため、一時的にPERは急上昇した。これはショック時の一時的現象だったと言える。その後、予想EPSの回復とともにPERが15倍を中心に10倍から20倍程度で安定的に推移し、TOPIXは企業利益(予想EPS)の向上に連動して上昇するようになっている。
TOPIXとEPSおよびPERとの関係を、1989年12月末~2002年12月末と2003年1月末~2024年12月末の2つの期間に分けて散布図に示した(図表5・6)。
予想EPSを横軸、TOPIXを縦軸に取ると、1989年12月末から2002年12月末よりも、2003年1月末から2024年12月末までの期間で、予想EPSの増加に伴いTOPIXが上昇する傾向が明確に確認できる(図表6:右側)。
以上をまとめると、S&P500は長期的に企業利益(予想EPS)の向上と連動し、企業利益の成長によって株価が牽引されてきたと言える。米国企業はOfficeアプリやiPhone、Android、アマゾンでの買い物、AIの活用など、日常に欠かせない商品やサービスを提供している。さらに、技術革新とイノベーションを通じて新しいサービスを提供することで収益の成長を実現し、投資家の高い期待に応えられていると考えられる2。
一方、TOPIXがバブル崩壊後に長期間低迷していたのは企業利益の低迷と当時の投資家の過度な期待(高PER)が原因である。その後、2003年頃まで株価の調整が進み、2013年アベノミクス以降は企業利益(予想EPS)の向上と歩調を合わせて、海外の主要な株式インデックスと同じように上昇していることが確認できる。
2 詳しくは2024年4月12日「新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか-なぜ米国株式型が強かったのか」をご参照ください。
(2025年01月22日「基礎研レポート」)
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