2025年01月22日

日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか

金融研究部 研究員 熊 紫云

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老後資金等の資産形成には、新NISAやiDeCoなどを活用しながら、株式インデックスへの長期投資を行うことが有効と考えられる。たとえば、新NISAのつみたて投資枠の対象商品を見ると、TOPIXや日経平均株価といった日本の株式インデックス、S&P500やMSCIコクサイといった海外の株式インデックスなどがある。このレポートでは、これらの株式インデックスが長期投資に向いているのかを考える指針の一つとして、PERとEPSに着目した分析手法を紹介する。
【図表1】主要な株式インデックスの過去35年間の推移(1989年12月末~2024年12月末)

1――主要な株式インデックスの過去推移

1――主要な株式インデックスの過去推移

まずは、主要な株式インデックスのパフォーマンスを簡単に振り返る。図表1は、日本の株式インデックス(TOPIX・日経平均株価)、米国株式インデックス(S&P500)、先進国株式インデックス(MSCIコクサイ)、全世界株式インデックス(MSCI ACWI)の過去データを示したものである。1989年12月末から2024年12月末までの35年間には、ITバブル崩壊、リーマン・ショックともいわれる世界金融危機、コロナ・ショックなどの様々な危機があったものの、S&P500が16.64倍、MSCIコクサイが10.11倍、MSCI ACWIが6.03倍となっており、総じて長期的に上昇してきた。一方で、同期間でTOPIXが0.97倍、日経平均株価が1.03倍となっており、日本の株式インデックスは長期的にわたり低迷していたことが分かる。

過去データに基づく限り、海外の株式インデックスのほうが長期的に高いリターンを享受でき、長期投資に向いているように見受けられる。ただし、2013年1月末から日本の株式インデックスはTOPIXが2.96倍、日経平均株価が3.58倍となっており、海外の株式インデックス(S&P500:3.93倍、MSCI コクサイ:2.73倍、MSCI ACWI:2.37倍)と同程度の上昇倍率を示している。今後、日本の株式インデックスも長期投資の選択肢の一つとして考えてよいのか、次章で考察する。

2――株式インデックスをPERとEPSで説明する

2――株式インデックスをPERとEPSで説明する

株価の割安や割高を判断する指標であるPERから、株価は次のようにPERとEPSで説明することができる(式1)。
 
株価 = PER × EPS ----(式1)
 
EPSは一株当たりの純利益を表している。このレポートでは、分析にあたってEPSの予想値1を使用する。

PERは株価をEPSで割って算出される。現在の株価が将来の企業業績予想に見合うかどうか、投資家の期待や見方を判断する材料となり、PERが高いほど投資家が将来の企業業績を強気に見ている可能性がある。一方、PERが低いほど、将来の企業業績を弱気に見ている可能性がある。
 
このレポートでは、以上の考え方を用いて、海外の株式インデックスの1つであるS&P500と日本の株式インデックスの1つであるTOPIXをPERとEPSに分解して分析する。
 
1 I/B/E/S 12か月先予想データを使用する。
1|S&P500
図表2は、S&P500とEPSの過去の推移を示したものである。また、PERが10倍~20倍の範囲に該当する株価分布を黄色の帯で表している。S&P500はPERが12.1倍から21.7倍へと1.8倍程度の上昇にとどまる一方、予想EPSが29.3から270.8へと9.3倍に増えており、企業の利益成長がS&P500の上昇を牽引している。
【図表2】S&P500とEPSの推移
図表3はS&P500と予想EPSおよびPERとの関係を散布図で示したものである。PERを横軸、S&P500を縦軸に取ると(図表3:右側)、PERが主に10倍から24倍に分布しているが、PERとS&P500の間に一貫した関係は見られない。一方、予想EPSを横軸、S&P500を縦軸にとった散布図(図表3:左側)では、予想EPSが高くなるほどS&P500も高くなるという明確な関係が確認できる。 
【図表3】S&P500とEPS、PERの散布図

(2025年01月22日「基礎研レポート」)

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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     2020年   日本生命保険相互会社入社
     2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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